第二話 私の
「楓おはよう。一緒に学校いかない?」
次の日、電車を待っていると突然話しかけられる。
神谷綾華だった。
綾華とは小学生からの幼馴染だ。
幼馴染ということで、最寄り駅も同じだ。
たまに、見かけることはあったが、高校に入ってから少し距離があったため、一緒に行くなんてことはあまりなかった。
だが、今年同じクラスになったからか、今こうして綾華が俺の元へ来る。
「綾華か、おはよう。一緒にいくか」
まだ眠気があり、頭が回らないが、会話くらいはできる。
「綾華。生徒会には気をつけろよ」
「ああ、柊君の件?」
「知ってるのか?」
「そりゃ、私生徒会なんだからわかるよ」
「それは知ってる。まさかお前が退学にさせたなんて言わないでくれよ」
「大丈夫だよ。そんなことない。残念ながら、私には何も分からないんだ」
「そうなのか」
と、なると、やはり生徒会長が怪しいな。
そんな会話をしながら学校に向かった。
朝からこんな暗い会話、気持ちよくはかったが、まあいいか。
***
「おはようございます。楓くん」
「おはよう。霜月」
教室に入り、隣の席の霜月有栖と挨拶を交わす。
霜月は1年の冬、年明けに転入してきた生徒で、まだこの学校には慣れて間もない。
そんな中、Bクラスに2ヶ月後で昇格した霜月が紛れもない実力者であることも確かだ。
去年たまたま隣の席だった俺が、学校を案内したことによって、霜月とはよく話す。
「霜月。今日って普通に授業か?」
「いや、今日は文化祭の決めるらしいですよ」
「そうなのか?それはいいな」
自己紹介などは恐らくないだろうと思っていたため、授業を覚悟していたのだが、なんと文化祭。
この学校の文化祭は結構早めに行われる。
例年通りなら、ちょうど5月の終わり頃なため、確かにもう準備に入ってもおかしくない。
「じゃあこの時間は二か月後の文化祭の話合いだ。二か月かけてよい文化祭にしよう。」
小田先生が言う。
クラスが変わって間もない中、早速イベントの準備だ。
「では、まず何をやるか決めましょう。案はありますか?」
黒板の前で仕切っているのは、学級委員長となった神谷綾華。
隣にいるのは副委員長の紅茜だ。
この紅というのが、昨日退学になった柊の彼女だ。
意見はどんどん出て、黒板にまとめられる。
・お化け屋敷
・メイド喫茶
・レストラン
・カードゲーム
・麻雀
麻雀を除いて文化祭ではありふれたものだ。
麻雀とふざけて言ったのは、俺と同じネトマ中毒者の猿田紫耀
俺はそんな面白くないことは言わないがな。
この5つだったら、何がいいだろう。
正直なんでもいいため周りに合わせるか。
「霜月はなにがいいんだ?」
「私は、うーん」
「霜月がメイドやったら売れるんじゃないか?」
霜月をおちょくってみる。
「ふざけないでください。はずかしいですよ」
そういう霜月は本当に恥ずかしそうな顔をしていた。
結局、多数決でメイド喫茶に決まる。
悪くないが、一部男子も女装をするという案が出ていたのが少し心配だ。
「じゃあ男女一人づつ責任者を決めたいのですが、だれかやりたい人はいますか?」
クラスは沈黙に包まれる。
沈黙の中、水無月蒼空が発言する。
「はーい楓がやりまーす」
「楓くんがやってくれるのですね。では女子はいますか?」
ふざけるな。と俺が言う前に勝手に決められてしまった。
まあいいか。せっかくだし頑張ってみるか。
「じゃあ、私やります……」
霜月が手を挙げる。
「ありがとう。霜月さん。じゃあ、2人にお願いしたいと思います」
「せっかくの機会ですし、私頑張ってみます。」
俺に霜月は言ってくる。
今日のところはここまでで話は終わってしまった。
いきなり責任者を任せられてしまったな。とりあえず水無月には仕返しをしないとな。
個人実力主義の学校だが、恐らく文化祭は何も無いただのイベントになるだろう。
文化祭に期待を膨らませながら、その後は通常授業を、受けるのだった。
***
神谷綾華。
私は、霜月有栖さんの元を尋ねる。
「霜月さん、ですよね?」
「神谷綾華さんですよね?どうしましたか?」
一呼吸置いて、私は話し始める。
「霜月さん、楓と仲が良いようですね」
「楓くんには仲良くしてもらってますよ」
近くで見ても、やっぱり霜月さんは可愛らしい見た目をしてる。
「付き合っているわけではないですよね?」
「つ、つつ、付き合ってなんか、ないですよ」
「そうでしたか。それならいいのです」
「え……?」
「どうかしましたか?」
「それならいいのですとはどういう意味ですか?」
「それはですね、うーんと、なんと言えばいいんでしょう」
「楓は私のものです」