表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第一話 そろそろ本気出してもらっていいですか?

 始業式。

 俺、文月楓は二年生となる。

 新しい教室。

 新しい友達。

 いつもと全然違う雰囲気の中、俺は今年初めてのホームルームを待つ。

 実力順でクラスが変わるこの学校。

 俺は去年から昇格してBクラス。

 去年Cクラスだった俺だが、クラスが上がるだけで教室はこんなに綺麗になるのか。

 もうほとんど教室の席は埋まっていた。

 クラスのメンバー表をちらりと見る。

 唯一、誰も座ってない席が1つ。

 そこの席の人を確認すると、去年からの友達、柊雄太(ひいらぎゆうた)だった。

 今年も同じクラスで大歓喜なのだが、中々本人がやってこない。

 そして、教室にやっと入ってきたと思ったら、それは柊ではなく先生だった。


「2のBの担任となった小田だ。よろしく」


 30代くらいの優しそうな男の先生。

 すらっとした体型に中々整った顔だち。


「早速だが、残念なお知らせがある」


 すると、先生の目線はまだ来ていない柊の席へ向けられる。


「ついさっき、柊雄太が退学となった。」


 クラスはもちろんザワついた。

 俺は先生の言葉を信じらることが出来ない。

 なんで急に?ついさっきというのはどういうことだろうか。

 確かに、個人実力主義であるこの学校では、生徒が実力不足などで退学することはよくある事だった。

 でも、始業式の日に退学なんてあるのだろうかか。


 俺は窓を見る。

 外に、今にもこの学校を去ろうとする柊が見えた。

 本当についさっき退学になったのだろうか。

 俺は立ち上がる。

 体は教室を出ていた。

 俺は柊の元へ走っていった。


 ***


 この学校は個人実力主義。

 個人の強さを求める学校である。

 勉強だろうが、運動だろうが、協力よりも、個人の実力が絶対。


 そこに通うのが文月楓。

 小学生でも中学生でも勉強だろうがスポーツだろうが全て一位。

 

 理解能力が常人よりも高かった楓。

 ある程度テスト勉強をこなせば一位。

 ちょっと上手い選手を見れば、それを真似してすぐにスポーツをこなしてみせた。


 そんな楓は高校でも無双。するのではなかった。

 勝つのが当たり前だった楓は、勝つことの意味を見失う。

 その結果、楓は入学後の半年間、ただの凡人として過ごしてきた。


 実力順でクラスが分かれるこのクラス。

 楓は1年Cクラスだった。

 一人一人に渡される個人ポイント。

 試験などでそれを貯めていけば、クラス昇格のチャンスがある訳だが、本気を出さない楓は昇格できるポイントなんてあるはずなかった。


 しかし、学年末試験。

 そこてで上のクラスへの昇格確定の権利を賭けた戦いがあった。

 楓は久々に本気を出した。

 あっけなくそのチケットを勝ち取り、Bクラスへ昇格。

 その代償として、負けた相手は退学になった訳だが、この学校はそういう所なのだ。


 ***


 始業式の今日、退学になった友達、柊雄太。

 それを追いかける俺、文月楓。

 学校の門を出る所で、柊に追いつく。


「柊!」

「楓か」

「何があったんだよ」

「すまんな。生徒会だよ。やられた」

「生徒会なのか?」


 この学校での生徒会の権力は強い。

 しかも、今の生徒会長はこの学校の創立者の息子なので、学校は誰も逆らえない。

 去年の終わり頃から、その生徒会長は好き放題やり始めている。


「ああ。ほら、無駄に退学者とか多いだろ最近。それ生徒会のせいなんじゃないかなって思ってさ」


 確かに、俺も同じ考えはあった。

 なんなら、軽く調べた。

 でも中々真相には辿り着けず、学年は変わってしまった。


「春休みにちょっと調べたんだよ生徒会に、そしたらバレてさ、退学にさせられたよ」

「本気か?」

「ああ。楓、生徒会には気をつけろよ。お前まで退学になったら困るぜ」


 本格的に生徒会を調べてみてもいい。

 これ以上無駄な犠牲はごめんだ。

 その犠牲が今回のような俺の友達なんて、もう見たくない。


「生徒会を調べるのなんてやめとけよ。って言おうと思ったんだけどさ」

「ああ」

「もしかしたら、お前ならできるんじゃないかって思うんだ」


 お調子者の柊。

 今はそんないつもの姿とは全く違って真剣な表情の柊がいた。


「楓頼む。これ以上の犠牲を出さないように……」

「言いたいことは分かる。でも、俺1人には出来ないかもしれない」

「いや、できる」


 柊は俺の肩に手を置く。


「楓さ、なんで実力隠してるんだ?」

「逆になんで隠してると思ったんだ?」


 俺が実力を隠してること知ってるの者は基本的にはいない。


「いや、なんか前から気になっててさ、楓なんか普段から緩くやってる感ある気がしてさ。」


 まあ、この際は実力を隠してることはバレてもいいか。


「で、この前の学年末試験、お前の圧勝っぷりを見て確信したんだ」

「それはたまたまだって言ったろ」

「たまたまで済むわけないだろ」


 まあ、そうなるか。


「分かった。柊、生徒会について調べてみる。もし、生徒会が本当に悪だったなら、俺が仇でもとろう」

「ああ。頼んだぜ。後さ、俺の代わりにAクラス行ってくれよ」


 そう言って柊はここを去ろうとする。

 だが、一瞬振り向いた後、また俺の方を見てくる。

 さっきまでの真剣な表情とはうってかわって、今度はいつもと同じ、お調子者の顔をしていた。

 柊はきっと今にも俺を煽ったり冷やかしてくる。

 そんな表情をしていた。

 煽るとき、こいつは敬語を使う。

 名前にもさん付けをするなど、中々煽り性能が高い。


 もう、こいつのそんな煽りを見ることとなくなってしまうのか。

 もしかしたら、この煽りで最後にななのかもな。

 そんな、最後の柊の言葉が、耳の奥までしっかりと刻まれた。



「楓さん、そろそろ本気出してもらっていいですか?」

第一話ありがとうございました。

早速本気を出す理由ができててしまった楓くんです。

タイトルの一文字目にある「恋」についても、多く話に入れて行こうと思っているので、楓の最強さも恋愛の方も楽しんでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます 是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」をクリックして応援していただけると嬉しいです。感想も是非。いいねもくれると嬉しいです。 それでは次話もぜひ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ