表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

けだるい朝食

自室で過ごすといっても、何をする気力もなく、とりあえずネットサーフィンで気を紛らわして何か楽しいことがないか探していた。


毎日していることなので、今日も特に目新しい出来事の一つもなく、動画サイトでいつも見ているような動画を憂鬱な気分で眺めながら、とにかく少しでも時間が過ぎるのを待つ。





親とはもう何年も面と向かって会話をすることもなく、大学を卒業して何をしているのかも分からない息子を家の中のガンのように思っているのだろうという猜疑心に苛まれていた。


というのも、大学時代は母親に何度注意されようともバイトもろくにせず、日々飛んでくる罵声を布団にくるまってやり過ごしていたことを考えれば自然とそう思うようになった。


正しくはアルバイトをしても、あの精神状況の中では何にも集中できず、ずっと息も絶え絶えでろくに物事もこなせず、説教されるような日々だったので続くはずもなかった。


なにより気持ちの落ち込んだ人間を見る目は矢のように突き刺さって、時にはアクリル板を挟んでいるようにどこか避けられているような感じがしてこれ以上は我慢の限界だった。


そんなことを繰り返すうちに幼少期から少しははぐくまれていただろう信頼関係には亀裂をもたらし、一方的な嫌悪感を抱くようになり、しまいには顔を合わせるだけで激しい動悸や息苦しさに見舞われるようになって、まともに声すらも出せない時があった。






ノートパソコンの画面に映し出される動画をぼんやり眺めながら常にどこか逃げたいという思いと戦いながら、画面右下の時間を何度か確認し、その時間までは神棚や仏壇の神様仏様にすがる年寄りのように、電子の世界にすがりつく。


その間もふとした時に、廊下奥の部屋に自然と意識を向けながら足音がしないか聞き耳を立て、辛辣な言葉がいつ飛んでくるのかとおびえ待っていると、やっとのことで時刻は1時半になっていた。


とりあえず最低限バイトでもしていると誤魔化すために家を出る時間を成り行き的に決めていたので、外に出るために必要なエネルギーをつけようと、学習机の椅子から重い腰を上げ、そろそろと部屋を出てリビングのキッチンに向かう。






胃には慢性的な疲労感、時には痛みが少しあり、何か入れることは躊躇したが、とりあえず冷蔵庫から卵2つを取り出し、台所奥にあるコンロの手前の五徳の上に、やや黒ずみ裏の焦げた年季の入ったフライパンを乗せ火をつける。


台所の最奥の引き出しから家に常備していた三連結のツナ缶を取り出し、親指の爪で真ん中の缶の淵を丸く親指の爪でなぞるようにして封を開け、一つ手に取ると、残りは引き出しのなるべく奥にしまい、同時にその隣の大きい引き出しに手をかけ小さめの金属ボウルを取り出した。


ツナ缶のプルタブを上にあげ少し開いたところで、缶の上蓋を軽く押しながら絞り出すようにシンクの生ごみ袋の中に油ぎりをする。


フライパンに油を敷く意味合いもありそのままツナをフライパンに入れ、引き出しから菜箸を取り出し、缶の上下の隅の溜まっている身までしっかり箸でかき出し、フライパンのツナが全体に行き渡るように軽くほぐした。


そのまま放っておくとパチパチとポップコーンのようにフライパンの上でツナが踊り出したので、コンロを汚さないようすぐに目の前にあったフライパンの蓋で音を静かにさせる。


金属音のしないように缶と上蓋をおもむろに生ごみの袋に入れ、中のごみをその上にかぶせ、ささいな証拠隠滅を計っておいた。


ボウルに卵を割り入れ、コンロの傍らの塩コショウを加え、卵の白身をなるべく切らないようにして白身と黄身が均一になるまで混ぜ合わせてから、フライパンの蓋を開け、そのまま卵液を流し入れると火を強火にして、すぐフライパンの端の方から真ん中に寄せる。


固まっていない卵液がまた空いたフライパンの周囲に流れていき、固まってくる度に繰り返し真ん中に寄せて、大きな塊になるのを待つ。


大して健康を気にしているわけでもないが、油を多く使うのには抵抗があるので、使い古したフライパンに引っ付くこともなく、ふわっと焼きあがる卵ができる様は少し気分がいい。


背後に振り返ってそびえたつ食器棚から、おそらくは安物だろうが見た目だけはそれなりの焼き物の丸皿を取り出し、焼きあがった卵を滑らせるようにフライパンから移し入れる。


フライパンには卵の焼き端が軽く残っているので、そのまま流しで、少し洗剤の残ったままのスポンジを軽く一周させ、フライパンを回しながら泡を洗い流し、再びコンロの上に戻した。


手癖でそのまま頭上の換気扇のボタンに手が行きかけるが、押していなかったことに気付き手を下ろして器を抱えると、リビングから逃げるようにしてまたそそくさと自室に引き上げていくのだった――

ちょっと調理の描写を具体的に描いて、料理マンガのテイストを入れてみようという遊びをしました。

卵とツナの炒め物?略してツナ玉はかなりおいしくて簡単なので一度ぜひやってみて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ