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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ハイファンタジー

伝説の宝石を集めて願いを

作者: 本羽 香那


 アイル国の超名門であるフィッツロイ公爵家の長男リアムは、この国の誰もが認めるとんでもないろくでなしだった。彼は家が名家であることをいつでも鼻にかけ、周りの人々をいつも怒鳴り散らして、自分に服従させようとしていた。また、ヤバいギャンブルに手を出したり、様々な女と戯れたりと、領地に納めている人々のお金を有らぬことで勝手に散在しまくっていた。それでいて、両親が「人々のためにしっかりと勉強をして、尽くしなさい」という言葉を無視して、跡継ぎとしての勉強をすることさえもなかった。そのため、ついにブチギレてしまった両親に「リアム、この家の敷地を2度と跨ぐな」と言われてしまった。そして、じいやからは「リアムお坊ちゃま、これが手切れ金です」と約1年分の生活費のみ渡され、屋敷を追い出されてしまった。こうして、リアムは家から勘当されてしまったのであった。


 リアムは勘当されたことに大変苛立てながらも、これはチャンスかもしれないとこっそりと取ってきた地図を取り出す。この地図は、屋敷の倉庫の中にあり、気になったリアムはこっそり盗んでいたのであった。しかし、どんなに見ても何であるかは自分では分からなかったため、両親の目を盗んで、専門家に鑑定してもらったのだ。すると、専門家からは、伝説と呼ばれるドロップジュエルの位置を示しているのではないかと伝えられた。

 ドロップジュエルとは、世界各国にそれぞれ1つずつ散らばっており、全ての宝石を1つの場所に集めると、願いを叶えてくれる伝説の宝石である。その宝石は10cmほどと、とても大きいらしく、どれも綺麗な雫型であるとのこと。全てで12種類存在し、それぞれガーネット・アメジスト・アクアマリン・ダイヤモンド・エメラルド・パール・ルビー・ペリドット・サファイア・オパール・トパーズ・タンザナイトと誕生石らしい。しかし、光の反射で輝く普通の宝石とは違い、自ら光っているらしく、見たら1発で伝説の宝石かどうかは分かるとのことだった。

 リアムは本当にあるとは思ってないが、お金がそこまで無い今では、今までのようなお金を散在しまくる遊びをすることが出来ない。そのため、そこまで楽しんで出来ることが無く、遊びがてらに宝石を探す旅でもしようと思ったのであった。そして、もし全ての宝石が集まり、願いを本当に叶えてくれるなら、世界一の金持ちとなり両親に復讐して、また全世界を服従させてやろうという野望を秘めて旅は始まった。




 まず最初に向かったのは、この国にあるというガーネット。ここでは残念ながら悪い意味で有名だったため、リアムに手を貸す者は誰一人としていなかった。しかし、威力を恐れてか、陥れようとする者もいなかった。

 この国が平和であるため、何の障害もなく、アッサリとガーネットを見つけることが出来た。その宝石は光を反射しているのではなく、本当に宝石自体が輝いていた。また、大きさ10cmほどあり、とても綺麗な雫型の宝石だった。


 次に向かったのは、隣国にあるアメジスト。入国審査を行う兵にパスポートを見せると、顔を顰められたものの、何とか無事に入国することは出来た。こちらでも、悪い噂が広まっていたのか、リアムに手を貸す者は誰一人いなかった。しかし、こちらの国も平和だったため、何の障害もなく、アッサリとアメジストを見つけることが出来た。2つの宝石共に見比べると、甲乙を付け難いほど、美しい宝石だった。


 その次に向かったのは、その隣の国にあるアクアマリン。こちらでパスポートを見せると、顔を顰められたものの、先ほどの国の兵よりも表情は柔らかであり、無事に入国することが出来た。こちらでは、リアムを見て、不快な顔をする者もいれば、そうでない者もいた。そのため、不快な顔をした者に声を掛けると煙たがれ、そうでない者に声を掛けると、普通に道を案内してくれた。少し入り組んだところにあったものの、この国の人達の力を借りて、アクアマリンを見つけることが出来た。他の人の力を借りるという新しい方法に、アクアマリンの石言葉のように新たな進路を切り開けたような気がした。


 次に向かったのは、その隣の国にあるダイヤモンド。こちらでパスポートを見せると、先ほどと同様に顔を顰められたが、無事に入国することは出来た。こちらでは、誰一人として不快な顔をする者はおらず、誰に声を掛けても、親切に道案内をしてくれた。そのため、入り組んだところにありながらも、今回はアッサリとダイヤモンドを見つけることが出来た。フィッツロイ家では、大きくて綺麗なダイヤモンドが多くあるが、今まで見た中でも、1番美しいダイヤモンドだった。


 次に向かったのは、その隣の国にあるエメラルド。こちらでパスポートを見せると、顔を顰められることもなく、普通の顔で通され、無事に入国することが出来た。こちらでも、誰一人として不快な顔をする者はおらず、誰に声を掛けても、親切に道案内をしてくれた。そのため、入り組んだところにありながらも、今回もアッサリとエメラルドを見つけることが出来た。今のところ大変順調に進んでいるため、エメラルドの石言葉のように全て集められる希望が見えた気がした――世界を服従させる日は近いのかもしれないと。


 次に向かったのは、その隣の国にあるパール。こちらはパスポートを見せると、笑顔で迎え入れてくれて、無事に入国することが出来た。どうやらリアムが宝石を集めていると噂に聞いたようで、歓迎してくれたのである。みんなに何故宝石を集めているのか聞かれたため、リアムは嘘を吐いて、世界平和のためと、本来の願いとは真反対のことを言った。すると、人々は手を叩いて、大変喜んだ。そのため、多くの人が道案内だけでなく、一緒に探してくれて、この国の男性がパールを見つけてくれた。それを素直にリアムに渡してくれる。彼は世界平和を頼むぞと笑顔で見送った。リアムは、偽善の言葉に騙されて馬鹿な奴らだなと思っていた。


 次に向かったのは、その隣の国にあるルビー。こちらは、パスポートを見せると、兵は本当に入国したいのかと心配した。この国には、ドラゴンがいるため、部外者は不用に入らない方が良いと忠告されたのだ。しかし、ここでやめるわけにはいかないと無理を言って入国させてもらった。

 こちらの人々は、先ほどの兵と同様にリアムを心配した。どうやら、ドラゴンの住処にルビーがあることを知っているらしく、無謀だと言った。しかし、リアムは世界平和のために宝石を集めたいと再び嘘を吐きながら、説得をした。すると、みんなは感動し、様々な武器を貸してくれた。そして、気を付けてと見送ってくれた。

 貸してくれた武器はとても優れたものであったため、無傷でルビーを手にいれることが出来た。ルビーを持って返ってきたリアムを見て大喜びをしてくれた。リアムはこいつらも馬鹿ばっかりだなと心の中で蔑んでいた。


 次に向かったのは、その隣の国にあるペリドット。こちらはパスポートを見せると笑顔で、すんなりと入国させてもらえた。そして、何故かそのままとある屋敷に案内されたのだ。そこにいたのは、王弟殿下。彼の隣には光り輝くペリドットがガラスのケースに入れてあったのである。彼はリアムに何故ここに呼び寄せたのか説明をし始めた。

 現在この国は戦いもなく平和である。しかし、隣国とその隣国では現在進行系で戦争が起こっていた。このまま長引けば、自分の国にも被害が及ぶ可能性が非常に高い。また、貿易も盛んに出来ないため、国力の低下にも繋がる。そのため、この国の商人と兵士と共に、宝石を集め、世界平和を叶えて欲しいということだった。もし、受け入れてくれるなら、このペリドットを渡すと。

 フィッツロイ家の嫡男だから、信頼しているとも言った。隣の国なら煙たがれいたものの、ここまで離れると名門貴族というのは、立派な信頼の証となるらしかった。

 リアムは快く引き受けた。まさか手間が省けるとはラッキーである。勿論戦地国に行くのは怖いが、彼らがいるならすぐに行けるはずだと安易に考えた。この時も彼らのことを馬鹿な奴らだと蔑んでいた。


 次に向かうのは、その隣の国にあるサファイアと更にその隣の国にあるオパール。商人が武器を届けに来たと言ったため、リアム達は簡単に入国することが出来た。

 この国の人々だけでなく、その隣の国の人々が入り混じり、熾烈な戦いを繰り広げていた。リアム達は彼らが戦っているところを掻い潜り、まずはサファイアを目指した。

 大砲の爆破音や剣の混じり合う音、そして悲鳴や泣き声と悲しい壮大な音楽が国中に奏でられているようだった。リアム達はなんとか目的地まで辿り着き、サファイアを手に入れた。しかしリアムは、今までのような嬉しさを全く感じることがなかった。

 次も商人の力でアッサリと隣の国に入国することは出来た。しかし、先程の景色とほとんど変わらずとても気分が良いものでは無かった。多くの人々がリアムの目の前で亡くなったり、怪我したりする姿を目の当たりし、血の気すら感じる。そんな中でも、オパールを求めて必死に探し、見つけた途端、その国からは立ち去った。

 こうして、戦地国にある2つの宝石を、何とか無事に手に入れることが出来たのであった。


 次に向かったのは、その隣の国にあるトパーズ。そこでパスポートを見せると、兵はリアムを襲おうとした。それを何とか付いて来ている兵士が取り押さえた。

 この国は、大変貧しく、国自体がスラム化していた。そのため、リアムがアイル国の名門貴族の嫡男であると、パスポートを見て分かった兵は、金目のものを持っているに違いないと、襲ってきたのだった。

 正直に言ってリアムは、もう渡された手切れ金は全て使い果たしていた。何故なら渡された手切れ金は1年分。旅を初めてすでに5年も過ぎた今、手切れ金を持っているわけが無かった。手切れ金を使い果たした後は、入国した住民の食べ物を恵んでもらったり、部屋を借りたりと、人々の好意で日々を送っていたのだ。今では、商人に資金を工面してもらって、生活をしていたのだった。

 リアム達は、トパーズを探し求めるのだが、周りの人達から服や資金や食料やらを常に狙われた。また、今まで集めてきた宝石すら奪われそうになった。そのため、トパーズは地図があればすぐに分かり、取りやすい位置にあったものの、人々の邪魔が多く入り、そこに辿り着くまでに今までで探してきた中で1番長く時間がかかった。

 何とかトパーズを手に入れ、残りはただ1つとなった。


 最後に向かったのは、その隣の国にあるタンザナイト。この国は先程の国よりも離れており、辿り着くまで少し時間が掛かった。そこでパスポートを見せると、今まで1番明るい笑顔で歓迎され、アッサリ入国することが出来た。入国すると、その国の人々がゾロゾロとやって来て、リアム達をジロジロと見た。そして、何故ここにやって来たのか、一斉に質問をぶつけてきた。リアムは、少し戸惑いながらも、伝説の宝石を集めて旅をしていると話すと、そんな伝説があるのかと大変驚かれた。

 この国は大変長閑なところであり、この国全員が家族であるかのように仲が良い。外の噂も届かないのか、隣の国がスラム化していることも知らないようで、勿論リアムのことも知ってなどいなかった。昔のリアムなら、自国では大変権力のあるところの嫡男だと威張り散らしていただろうが、今ではそんな気分にはならなかった。

 この国の人達はみんな総出でトパーズを探してくれた。見つけた女性がトパーズを差し出し、見つかって良かったですねと笑顔を向けてくれた。そして、国の人々はお祝いだお祝いだと美味しい料理や珍しい酒を持って来て、リアム達を盛大に祝ってくれた。リアムはこんな幸せなところが存在するとは驚き、また大変居心地が良いなと感じた。



 次の日、リアムは誰もがまだまだ目覚めていない未明の時刻に、大きな広場に行って、今まで集めた宝石をガーネットから誕生石の順番に円状に並べていく。そして、最後のタンザナイトを並べ終えた瞬間、全ての宝石がこれまでにない大きな光を放ち、1つの光となった。すると、その光から綺麗な女性が現れた。


「貴方が私を目覚めさせたのですね。今までお疲れ様でした。私は女神。貴方の願い、何でも願いを叶えてあげましょう」


 リアムはここまで来てようやく伝説は本物だと確信した。最初は遊び半分でやっていたものだったが、本当に苦労した甲斐があったと思った。これで自分の願いを叶えることが出来ると今までずっと秘めていた願いを言おうした。しかし、何故かその願いを言うことが出来なかった。言おうとすると、そのたびに本当にそれで良いのかと頭の中を過るのである――それで果たして自分が幸せになれるのかと。

 そんな風にリアムが迷っている時に、大きな揺れが襲った。その大きな揺れはだんだん大きくなっていき、頻度が増していく。すると、この国の建物が次々と倒れていき、先ほどまで眠っていた人々は目覚めて、昨日は喜びで満ちていた声が、一気に恐怖の声に変わる。その声は、戦地国の声とほぼ同じ声であった。先程までの居心地の良さは一瞬にして奪われてしまった。


「願いはないのですか? 無いのならば、私はそのまま帰りますよ」


 こんな状況になったとしても、女神の態度は平然としており、寧ろさっさと願いを言わない自分に腹を立てているのだとリアムは感じた。リアム一呼吸だけ置いて、今まで全く思ったことの願いを口にした。


「世界を平和にしてくれ。戦いもなく、お互いを認められるように、立ち直れるように、全世界の人々に勇気を与えて欲しい」


 それは今まで嘘を吐き続けてきた偽善の願い――今まで散々馬鹿にしていた願いだった。


「貴方は今までずっと世界征服を狙っていたのではないのですか? 本当にその願いで後悔しませんか?」


 女神には全てがお見通しだった。今までそのように思っていたことを直接そのまま口にされて、リアムは恥ずかしさを覚えた。


「はい。絶対に後悔は致しません」


 確かにリアムは最初世界征服でもしてやろうと考えていた。それが楽しそうだなと思っていたし、両親への復讐も出来るからという真剣ではない気軽な願いだった。しかし、リアムは平和な国や戦争が起こってしたった国々、スラム化してしまった国、そして幸せに溢れていたのに一瞬にして悲しみに変わってしまった国と、様々な国を見て、心の底から今初めて強く願ったのだ――全世界が平和になって欲しいと。今やリアムには、世界征服したいという願いは微塵も残っていなかった。

 女神はその返事を聞き、笑顔を浮かべいた。宝石を集めた以上リアムの願いを叶えなければならない――たとえどんな残酷で悲しい願いだとしても。それが女神の使命だからだ。その使命に抗うことは出来ない。しかし、今まで彼みたいな世界征服を願った人もおり、女神は叶えたこともあったが、決して良いものとはならなかった。それは、全世界の人々だけでなく、願いを叶えた人自身も幸せにはならなかったからだ。そのことを女神はよく知っていた。そのため、今回リアムが宝石を集めていると分かった時、不安でしかなかったが、真逆の願いを口にしてくれて、またその確認時に心強い返事をしてくれて、心の底から安堵していた。


「貴方の願い、しかと受け取りました。その願いを今すぐに叶えましょう」


 すると、女神は両手を合わせて、それぞれの指を絡める。そして不思議な呪文を唱えると大変大きくて綺麗な光が四方八方に広がっていく。その光景は今までにないほど美しく、リアムは思わず見とれていた。


「リアム、どうか貴方も幸せでいてくださいね」


 女神はリアムに一言残してスッと消えていった。そして、今まで集めた宝石もそれぞれ飛んでいき、元の場所へと戻っていく。またその直後、大きな風が吹き、仕舞っていた宝石の場所が書かれた地図が吹き飛ばされてしまった。その地図はあっという間に飛んで行き、リアムには何処に飛んで行ったのかは分かりようがなかった。


 タンザナイトがあったこの国の建物は壊れたままであったが、頑張って再建しようと人々はみな立ち上がっていた。先程の悲しみの声は一切聞こえず、明るい声のみが聞こえる。リアムは本当に願いが叶ったのだと実感した。しかし、他の国でも本当に叶っているのかが気になり、この国にお礼を言って、リアムはスラム化していた国に戻ることにした。


 トパーズがあったその国に戻ると国は豊かではないものの、治安は大変良くなり、人々がそれぞれ助け合って暮らしていた。リアムが入国したところで、襲われることもなく、皆元気良く挨拶をしてくれた。ここも願いが届いているのだの分かり、リアムは先程の国に戻ることにした。


 サファイアとオパールがあった戦地国だった2つの国は、建物は相変わらず多く崩壊しているものの、戦争は終結し、両国で和平が結ばれていた。そして、戦争で亡くなった人を弔い、怪我人は怪我をしていない人達総出の看病を受けている。他にも国を立て直すため、建物を直したり、新たな施設を作ったりと、共に理解し、協力し合っていた。ここも願いが叶っているのだと分かり、リアムは先程の国に戻ることにした。


 ペリドットを渡してくれた国では、再び王弟殿下の元に案内された。彼は願いを叶えてくれてありがとうとお礼を言い、美味しい料理や酒で盛大にもてなしてくれた。リアムが願いを叶えてくれたおかげで、貿易も進み始め、何より戦争に巻き込まれずにすんだのだと。今まで1度も感謝されたことがなかったリアムには、この感覚は初めてのものであり、それは大変居心地が良いものであった。ここも願いが叶っているのだと分かり、リアムは王弟殿下にお礼を言ってから、リアムは先程の国に戻ることにした。


 ルビーがあったドラゴンのいる国では、ドラゴンは存在するものの、共に仲良く共存していた。人々に宝石を集めて世界平和を叶えたと話すと大喜びをし、皆そのおかげでドラゴンと仲良く出来たのだと嬉しそうに笑みを浮かべていた。ここも願いが叶っているのだと分かり、リアムは先程の国に戻ることにした。


 パールがあった国では、リアムを最初から盛大に迎えられ、多くの人々からおめでとうと祝福の言葉をもらった。相変わらずここは平和であり、より明るい国になっていた。ここも願いが叶っているのだと分かり、リアムは先程の国に戻ることにした。


 エメラルドがあった国では、入国審査する兵は前と変わらず笑顔で迎え入れてくれた。国の人々はリアムに対して相変わらず普通の態度であるものの、国同士の人々は和気あいあいとしており、前よりも明るいとなっていた。ここも願いが叶っているのだと分かり、リアムは先程の国に戻ることにした。


 ダイヤモンドがあった国では、入国審査する兵は顰めた顔をせず、笑顔で迎え入れてくれた。国の人々は前と変わらずリアムに対して普通の態度であるものの、こちらも国同士の人々が和気あいあいとしており、前よりも明るくなっていた。ここも願いが叶っているのだと分かり、リアムは先程の国に戻ることにした。


 アクアマリンがあった国では、こちらの入国審査する兵も顔を顰めることはせず、笑顔で迎え入れてくれた。国の人々は誰一人としてリアムのことを不快に思うものはおらず、全員の表情が柔らかくなっていた。ここも願いが叶っているのだと分かり、リアムは先程の国に戻ることにした。


 アメジストがあった国では、こちらの入国審査する兵も顔を顰めず、笑顔で迎え入れてくれた。国の人々はリアムを見るとすれ違う度に不快な顔をしていたが、今では全員が笑顔で挨拶をしてくれる。ここも願いが叶っているのだと分かり、リアムは最初の国に戻ることにした。


 ガーネットがある母国は、入国審査で兵に驚かれたものの、笑顔で迎え入れてくれた。国の人々もリアムを見て驚くものの、笑顔で迎え入れてくれた。中にはおめでとうと祝ってくれた人達もいた。また、中にはまさかそんな願いを口にしたとは驚いたと笑って喜んでいた人達もいた。

 リアム改めてこれまでのことを振り返ると、本当に世界中が平和になって、勇気を与えることが出来て良かったと思った。このように良い行いをすれば、権威を振りかざして無理矢理従わせなくても、信頼も築くことが出来るのだと初めて知った。それと同時に、今まで自分は本当に酷いことをしてきたのだと気づき、大変申し訳なく思った。そのため、リアムは会う人全員に今までの行いを謝罪し、許しを請うた。すると、人々は大丈夫だと笑顔で許してくれた。


「リアムお坊ちゃま、旦那様と奥様が屋敷に来るようお呼びでございます。是非ご同行くださいませ」


 後ろから声を掛けてきたのは、昔から仕えてきたじいやだった。久しぶりに聞いた声と久しぶりに見た姿に、リアムは思わず喜びの笑みを浮かべてしまう。そして、じいやに飛びついてしまった。


「リアムお坊ちゃま、いつの間にそんなに甘えたになってしまわれたのですか。今までは常に反抗してきましたのに」


 じいやは少し呆れながらも、リアムのその行為を拒むことはしなかった。寧ろ優しく受け止めてくれた。

 暫くすると、じいやはリアムを馬車に乗せて、屋敷まで向かわせた。今までは常に歩きだったため、リアムは馬車ってこんなに心地が良い乗り物だったのだと初めて実感した。

 

 屋敷に到着すると、じいやがリビングルームまで案内した。少々お待ち下さいとリアムに伝えて、部屋から出ていく。暫くすると、じいやが帰ってきて、その後ろには勘当を言い渡した両親がいたのだった。


「リアム、勘当されている間どうだった?」


 父・公爵の言葉は至極簡単なものであり、表情も何を考えているのか読み取れないものだった。リアムは何と答えて良いものか迷いながらも、素直に答えることにした。様々な国を見回って、平和であることは素晴らしいこと、そして権力を見せつけなくても信頼は築けるということを。


「リアムが無事で良かった」


 母・公爵夫人は涙を流して、息子の無事を喜んだ。戦地国やスラム化した国に足を踏み入れたことも話したため、命を失っていてもおかしくはないと思ったのであった。

 

「リアムが無事で良かったよ。それにしっかりと大事なことが分かってくれるようになって安心したよ」


 父も笑みを浮かべて喜んでいた。リアムは父が笑うところをほとんど見たことが無かったため、その笑みには大層驚いた。こんな素敵な笑顔を見れて幸せだと思った。


「リアム、これからはどうするつもりだ?」


 父はリアムの予定を尋ねたが、リアムはその質問に悩んでしまった。最初願っていた世界征服は、世界平和と変わって、すでにその願いは女神によって叶えられた。また、世界が本当に平和になっているかも確認し終えたばかりだ。かと言って、元々継ぐ予定だったこの家は、現在弟の次男が継ぐことが決まっており、自分はここですることは何も無かった。リアムは時間を掛けて考え、そして一呼吸を置いてから口をゆっくりと開いた。


「私は、この世界平和をずっと守り続けたいです。しかし、今の私には知識が足りなすぎます。この国のこともあまり分かっておりませんし、また他の国は尚更分かっておりません。そのため、再び旅に出たいと思います――それぞれの国を知るために、また助けるために」


 リアムはこれを口にすると、自分の頭にスッと入ってきた。やはり、これが今のリアムがしたいことのだと、改めて認識する。


「そっか……」


 父は少し寂しそうな顔をした。母も残念そうな顔をしている。きっと、ここにいて欲しかったのだと、リアムは2人の表情から読み取った。


「リアム、頑張ってこい」

「リアム、頑張ってきてね」

  

 しかし2人はリアムの意思に反対することはなく、応援をしてくれた。そのことがリアムにとってはとても嬉しい。今まで両親ですら煙たがれていたと思っていたため、愛されているのだと分かり、心が温かくなった。


「いつ旅立つの?」

「明日の朝に出ようと思っています」

「そんなに早く出るのか?」

「はい、少しでも早く学びたいので」


 2人はまた寂しそうな顔をしていたが、これにも反対はしなかった。2人は弟も交えて盛大な料理と美味しい酒を振る舞いお祝いをしてくれた。

 朝になると、両親と弟、じいやの4人がお見送りをしてくれた。


「旅をするなら、お金は必要だろ。勘当は不問にするから、いつでも帰って来い」


 父が渡してきたのは、勘当時に渡された同じ金額のお金。ただし、今回は手切れ金ではなく、旅費としてである。


「リアムお坊ちゃま、行ってらっしゃいませ」

「お気をつけて」

「頑張れよ」


 じいや、母、弟と3人も笑顔で応援してくれた。




 こうして、リアムは再び旅に出て、世界について学びにいくのであった――世界征服をするのを叶えるためではなく、世界平和を守り続けるために。

 

ご覧いただきありがとうございます。

もし良ければ評価やコメント、誤字脱字報告をお願いします。


瑞月風花様から素敵なバーナーをいただきました。

本当に素敵なバーナーありがとうございます。  

 挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 宝石をさがす旅をていねいに描いていて、スケールが大きい良作でした。寓話みたいな雰囲気が素敵です。 ほかのかたへの感想返信でファンタジーっぽくないと仰っていましたが、私は寓話ってとてもファン…
[一言] 12の国の違いや、それぞれの特色が面白かったです。 国ごとのエピソードも読んでみたくなりました。 最後に平和を守る為の旅に出るところが、最初との対比でとてもよかったです。
[良い点] 超名門の家を勘当されたリアムが、はじめは世界一の金持ちとなり世界を服従させよう、という野望から始まり、様々な国にある12の宝石を集めていくうちに大切なことに気付く、というストーリーがとても…
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