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プロローグ
人には人の物語がある。
その人が誰と関わって、何を経験して、何を感じたのか、その全てがこの本に詰まっている。
数え切れないほどの途方もない本たちが、際限の無い天を貫いていたとしても、光は常に私と本を照らしてくれた。
木目の小テーブルにそっと置き、冷たい手で優しく撫でる。
何回も何十回も何百回も何千回も何億回も読んだ。
果たして私は彼の全てを理解したのだろうか。
私と彼の心は融合したのだろうか。
これが私が望んだ愛なのだろうか。
今日もそれを確かめるためまた本を開く。
彼が訪れるその日まで─────