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あぶり出し

 局長から無茶な注文をされたものの、それでもジョン司令はその通りに答えてくれた。

「あんたのご注文通り、500人。基地にいる全員を大急ぎで動員させた。おかげでまだコック姿のヤツまでいる始末だよ」

「ありがとう、ジョン。ではすぐ出発だ。準備してくれ」

「へいへい、仰せの通りに!」

 ジョン司令が憮然とした顔で、大股で歩き去ったところで、局長とリロイは目配せした。

「で、エミルたちは?」

「仰せの通りに、だね」

「うむ」


 まだ憮然とした様子ながらも、ジョン司令はきっちり、全軍に号令を発してくれた。

「……と言うわけで、諸君らは直ちにサンドニシウス島へ向かい、そこに本拠地を構えていると目される秘密組織を包囲、および拿捕せよ! 以上だ! 各員、即時行動されたし!」

「了解!」

 ジョン司令がこぼしていた通り、兵士たちの中には直前まで調理や営繕工事など、軍務以外の作業をしていたらしい者や、まだ私服姿に小銃一挺を抱えただけの者までいる。揃って憮然とした表情を浮かべつつ、彼らはぞろぞろと船や舟艇に向かって行進して行った。

 と――その中の一人が、しれっとその列を離れる。

「おい、どうした?」

「腹いてえ。ちょっと済ませて来る」

「おう」

 いぶかしむ同僚たちにそれらしい言い訳をし、彼は基地内へと引き返す。そのまま電話室に向かい、電話をかけようとしたが――。

「ん、んん? なんだ? ウンともスンとも言わねえ。……壊れてんのか?」

 がちゃん、がちゃんと受話器を上げ下げしても、まったくつながる気配が無く、彼は困った顔をした。

「おい、まずいって……。早く伝えねえと」「どうなるって?」

 電話室の外から、女の声が飛んで来る。

「うっ……!?」

「聞かせてちょうだい? あんたがこんなタイミングで電話しなきゃ、一体、誰がどうなるのかしら?」

「そ……それは」

 彼が両手を挙げたところで、別の男の声が掛けられる。

「そのまま電話室を出ろ。ゆっくりとだ。振り向くんじゃないぜ」

「あ、ああ」

 彼が電話室を出たところで、赤毛の男が彼のこめかみに小銃を突き付けた。

「ネックレス見せろ」

「……わ、分かった」

 相手の言わんとすることを察したらしく、彼は首に下げていた、猫目三角形のネックレスを取り出した。


 内通者を見付け出して拘束し、エミルたちは局長たちがいる部屋に戻って来た。

「いたわよ」

「ありがとう。間違い無くいるだろうと思っていたが、やはりか」

「そりゃ、サンドニシウス島から一番近い軍事基地となれば、ここだからね。仮に当局が動き出した場合、十中八九この基地が関わることになるだろう。なのにここにスパイを仕掛けてないって言うんじゃ、話にならないさ」

 安心した様子の局長とリロイを見て、アデルもほっとした顔をする。

「じゃあ後は……」

「うむ。もうこれで組織は、自分たちに危機が迫っていることを知る術を、ほとんど完全に失ったわけだ。残る術はただ一つ、州軍が自分たちのすぐそばまで多数迫っているのを、実際に目にする以外に無い。

 いよいよ、決着の時と言うわけだ。そろそろ我々も船に向かうとしよう」

「了解です!」

 待機していた他の局員たちと共に、局長とリロイは部屋を後にした。

 が――。

「アデル。……それから、あんたも」

 局長たちに気付かれないようにしているかのように、エミルはアデルとロバートの服の裾をぐい、と引く。

「なんだ?」

「どしたんスか?」

「局長はもう問題無しだって言ったけど、……あたしの勘が告げてる。チェックメイトにはあと一手、足りないって」

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