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とても奇妙な、事件の顛末

 女が拳銃を海に捨てたところで、東の稜線から太陽が昇り始め、彼女の顔にも陽の光が差した。

「なっ……」

 そこでようやくアデルたちは、彼女の顔をはっきり確認できた。

「え……エミル?」

「こっちにも姉御、あっちも姉御、……ど、どう言うことスか?」

「エミル君、君には双子の姉がいたのかね?」

 3人はエミルと、彼女そっくりの顔をした女の顔を交互に見比べ、揃って目を丸くする。

「い……いない……はずよ? いるはずも……」

 エミル本人も顔を真っ青にし、呆然としている。と、女がエミルに手を差し出す。

「やっぱりって感じね。あなた、全部忘れてるんでしょ」

「あたしが? ……なにを?」

「10年ぶりだからゆっくりお話したいところだけど、もう太陽も昇って来たし、町の人がこっちに来る頃でしょうね。それに大閣下たちを追って来たって話だし、援軍なり何なり、あなたたちも呼ぶつもりでしょ?」

「え、ええ」

 エミルが手を取り、立ち上がったところで、女は羽織っていたガウンから、一通の封筒を取り出した。

「落ち着いたらここに来てちょうだい。全部、教えてあげるわ」

 女はエミルたちに背を向け――何故か、気絶したままのイクトミの襟を引っ張って引きずりつつ――そのまま、どこかへ立ち去ってしまった。

「……どう言う……ことだ?」

 棒立ちになったまま、アデルが尋ねる。だが、その問いに答えられる者は、そこには誰一人いなかった。


「君の前に君が? ……ごめん、ちょっと何言ってるか分かんない」

「分かんないでしょうね。あたしだって分かんないもの」

「で、受け取った手紙には何て書いてあったの?」

 リロイに尋ねられ、エミルはその封筒を差し出した。

「住所よ。N州ネックプラッツ、キャリコ農場」

「ネックプラッツ? うーん……、聞いたこと無いな。州からして、相当な田舎って感じだし」

「調べられる?」

「局に帰ればすぐ分かるよ」

「すぐ帰れるかしら」

 リロイはサルーンの窓から港の様子を眺め、肩をすくめて返した。

「大事になってるみたいだから、もうちょっとかかるかもね」




 リロイの言った通り、組織壊滅から捜査が一段落するまでには、長い年月を費やすこととなった。

 サンドニシウス島は南岸部こそ機銃と爆発で崩壊していたものの、船渠や工場など、他の箇所についてはほとんど無事に残っており、また、隠蔽工作も行われなかったことから、彼らの全犯行計画自体は容易に、白日の下に晒すことができた。

 相当に時間と、そして費用を要する捕物とはなったものの、リゴーニがどさくさに紛れて射殺されていたことにより、費用面における問題は全く起きなかった。彼が大西洋を隔てて築き上げた、違法な遺産500万ドル超は――無論、本人からの異議申し立てなどできるはずも無いので――そっくりそのまま、大西洋に面する各国政府当局の金庫に収められることとなったからである。

 だが一方で、時間面の問題は解決できなかった。彼らが犯した罪はあまりにも多かったために、誰がどんな計画に加担し、実行したのか、そしてその結果どこにどんな被害をもたらしたのか――事細かに調べ上げ、立証し、幹部を含む構成員239名を一人残らず裁判にかけ、その各々に応じた刑が執行されるまでには、最長で20世紀をまたぐ者すら現れる始末だった。


 とは言え、現地での調査にパディントン探偵局が付き合ったのは一週間程度で済んだため、そこからさらに半月後には、全員が東海岸に凱旋することができた。

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