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ルイス=クラーク探検隊

 15世紀の終わりにヨーロッパ人がその地に足を踏み入れたその時から、「その夢」はほのかに、彼らの心に現れた。やがて彼らがヨーロッパと袂別し、「アメリカ人」と呼ばれるようになって以降も、彼らはその目標を達成すべく、歩み続けた。

 そして1805年、ジェファーソン大統領の個人秘書であったメリウェザー・ルイスとその親友ウィリアム・クラークによる探検隊がその海に達したその時、その300年以上に渡る宿願――この北米大陸を横断し、太平洋北西部につながる岸辺、即ちこの「新しい世界」の西の果てを実際にアメリカ人の目によって確認する、と言う目標は達成されたのである。


 と言ってしまうと、探検自体はまるで何と言うこともない旅行か何かであったかのように聞こえてしまうだろうが、実際のルイスとクラークの旅は、艱難辛苦の連続であった。何しろ車や鉄道はおろか、蒸気船すら無い時代である。人と物資をかき集めてミシシッピ川を出発した後ミズーリ川沿いに進み、グレートプレーンズを北西方向に横断。途中、インディアンらとの衝突や極寒による足止め、さらには仲間の死や食中毒にまで苦しめられることとなったが、それでもミズーリ川を源流まで遡上した後、ロッキー山脈を越えて現在のオレゴン州に到達。

 そこでようやく太平洋を目にし、彼らの1年半にも及ぶ旅は報われたのである。




「しかし80年も経った今、我々がまさか、ルイスとクラークになるとはね」

 そうつぶやいたパディントン局長に、ロバートが尋ねる。

「誰っスか?」

「知らんのかね? いや、仕方無いことか。君が住んでいた西部の片田舎じゃあ、伝記も出回っていないだろうな。アデル、君なら当然知っているね?」

 尋ねた局長に、アデルは顔をこわばらせる。

「あ……あー、と、アレ、……です、よね? あの、……アレですよ」

「……結構。それ以上はしゃべらなくていい」

 被っていた帽子のつばを下げ、局長は残念そうな様子を見せた。が、ここでサムが手を挙げる。

「ぼ、僕は知ってます。でも局長、彼らと僕たちとでは3点、その、大きな相違があります」

「ほう? 言ってみたまえ」

 機嫌を直したらしい局長に、サムはどこか得意げに話し始めた。

「まず、移動ルートです。探検隊は北西方向へ進みましたが、僕たちはほぼまっすぐ西へ向かっています。そして探検隊は政府からの要請と援助がありましたが、僕たちは完全に非公式かつ、私費での行動です」

「確かに。今回は相当な出費を強いられた。まさに国家予算的だった。その点はエミルに感謝せねば」

「どーも」

 ぺら、と手を振るエミルに応じつつ、局長はサムに続きを促す。

「それでサム、3つ目は?」

「移動技術の進歩です。鉄道が無ければ、僕たちも探検隊と同様、長い年月をかけて大変な旅をしなければなりませんでした」

「なるほど。同様に感謝せねばならんね、それがヴァンダービルトかモルガンか、それとも我らがボールドロイド君なのかは分からんが」

 そんな取り留めもないことを話している内に、一行が乗る鉄道はまもなく、C州州境を越えた。

「諸君」

 と、局長が客車内の全局員16名に声をかける。

「君たちが一人も欠けること無くここまで来られたこと、その幸運と不屈の精神とを称え、そして感謝したい。ありがとう、よくここまで一緒に来てくれた。しかし本懐はまだ、これからだ。どうか最後まで気を緩めること無く、我が探偵局最大の任務を完遂すべく、全力を投じて欲しい」

「了解です」

 局員たちは全員立ち上がり、局長に敬礼した。

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