2.完璧美少女の完璧なリップサービス
下根絵輝は重度の臭いフェチだ。一見完璧な美少女だが俺と二人きりになった途端、その本性が出る。
「あれ?どうしたのこれ?」
俺の独り暮らしのアパートに入った途端、絵輝が部屋のあちこちに置かれた消臭剤に気付いた。
「いや、結構部屋がニンニク臭かったら置いたんだけど」
「ダメ!捨てて?」
「えっ?」
絵輝はごみ袋に片っ端から消臭剤を放り込んできつく口を縛ってしまった。
「ケイくんの臭いが薄まっちゃうじゃない!ダメだよー」
「……やれやれ」
俺は肩をすくめた。
「約束したでしょ?いつでも私の為に臭くしてくれるって」
「そんな約束……したか!?」
「したのー!」
ぷいっと頬を膨らませて絵輝は足早にキッチンへ。
「薄まっちゃった臭いを取り戻さないと!」
冷蔵庫を開け、にんにくをたくさん取り出す。
「待っててね、おいしい料理をいーっぱい作ってあげるから」
臭いフェチの残念美少女がキッチンに立つと、毎度のことだがとても残念な料理が出来る。
そんな絵輝の得意料理はシュクメルリ。彼女の父親の生まれ故郷であるジョージア国の伝統料理だ。
作り方はとても簡単。軽く説明しよう。
まずは鶏肉を両面軽く炙る。そして微塵切りにしたニンニクをオリーブオイルで炒めたところへミルクを入れて軽く煮立て、そこへ炙った鶏肉を投入して更に煮詰めていく。好みに応じてここで野菜を加える。最後に塩コショウで味を整えたら完成。たったこれだけだ。
いわば、ジョージア風鶏肉のクリーム煮である。ただしニンニクの量が尋常ではない。一個ほぼ丸々使いきるのだ。一見すると優しい味わいをしてそうな白色のスープが、一度舌の上に載せると刺すような刺激と塩味で襲ってくる。
「はい、たくさん召し上がれ!」
満面の笑みで本日もシュクメルリを作ってくれる絵輝。こんな美少女に手料理を振る舞ってもらうのは何て幸せなんだろう、などと思われるかもしれない。だが実際、机の上に並んだ料理は素晴らしく素晴らしすぎるものたちばかり。
キムチとニンニクのサラダ(!)、にんにくガーリックオイル浸けのニンニクバターホイル焼き(!!?)、そしてニンニク山盛りのシュクメルリ(!!!!!!?!!?!?)。
「あ、ありがとう……凄く臭……おいしそうだね」
「たくさん食べて、私の為に臭くなってね?」
「あ、あぁ……努力するよ」
さぁ、今日も修行だ。荒行だ。俺は修行僧だ。いや、気持ち的には虚無僧。無の境地に至らないと食べられない強者達だ。煩悩より厄介。
ガツガツ!モリモリ!
食べる度に体が毒に汚染されていくのを感じるが気にしない。向かい側に座って頬杖ついてひまわりのような笑みで見詰めてくる幼馴染通い妻がまるで邪悪なサキュバスのようだ。
「ご、ごちそうさゴフッ!ごちそうさま!」
噎せながら完食!
「やったー!おいしかった?ねぇ、おいしかった?」
するすると俺の隣にやってきて腕に抱き付いてくる絵輝。上目遣いで訊いてくる。
「お、おう」
汗だくで答える俺。そろそろ内蔵の負荷が心配だ!
「はーい!じゃあ恒例の臭いチェックしまーす!」
絵輝は鼻を俺の喉元に突き付けてクンクンしてくる。ちなみに絵輝の体からは何とも言えないいい香りがしている。この美少女は、俺と同じようにニンニク食べている筈なのに全然臭くないんだ。女の子って不思議!
「この体臭……あぁ、凄くいいよ……」
急に、絵輝は舌を出してペロリと俺の首を舐めてきた。
「おい、止めろよ。汚いぞ?」
「うん、汚いの大好きー!どこを舐めたらいい?」
「いや、舐めなくていいから」
「大丈夫!今日はお泊まり許可もらったから!」
「大丈夫の意味がわからねぇよ」
押し退けようとする俺に構わず喉仏に舌を這わせる幼馴染。うん、今日も今日とて積極的だな。
この変態美少女は自分が満足するまで決して俺を離してはくれないのだろう。
半ば諦めて脱力した俺の体に対面でのし掛かってきて、絵輝は唾液に濡れた自分の唇を拭う。扇情的な光景だけど、ずっと一緒に過ごしてきた幼馴染だから俺にとっては兄弟のようなものだ。手を出そうとは思わないんだよな。
「はい、問題!今日のエピはケイくんのどこを舐めたいでしょーか!?」
「はいっ!?」
「当てたらご褒美をあげるけど?」
「いらねー」
「はい!正解!足の指でしたー!」
会話が成り立たねえ!
そして勢いに押されいつの間にか仰向けに転がされている俺。
……やれやれ。
今回のお話を書くにあたり、実際にシュクメルリを作って食べてみました。
ビックリするくらいニンニク!食べた翌日の口内が凄いことに!
臭いフェチの業は深いな……。
さて、序盤から飛ばしていきますよー!
次回はかなりセンシティブなパートになる予感!
お楽しみに!




