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黒の元OLと黒の王族少年  作者: 鶯餡
第一章 ユーフォリア王国
4/5

双子王子

書き方変えました

目の前の少年は、確かに王子だと告げた。

それにアカリは戸惑う。王子と言う神聖な方の前で自分は無様な姿をさらしてしまった。

しかし、そんなところを見ていないかのように彼は微笑む。嘘偽りのない、正義の笑顔で。




「____す、すいません。お、王子だと知らず……」

「いいえ。構いませんよ」



アカリは彼から見たらただの変な平民である。

なのに彼、ルイスは腰が低く、きっと民からの信頼も厚いのであろうと予想ができた。しかも剣術に長けており、先程の魔獣も簡単に切り裂いてしまっている。

それを考えてから彼を改めて見てみると、何て素晴らしい王子なのだろう、と感心を受ける。



「___しかし、まだ魔獣は滅んでいないようです」

「え?」



情けない声を呟く。するとすぐにグルルルという魔獣特有の呻き声が聞こえてきた。アカリは声をする方向を恐る恐るみやると、魔獣が目を赤く染めてルイスを威嚇していた。


アカリはそんな動物の本能的行動さえも怯えてしまうほど恐怖心を植え付けられていた。今はレイスだけが頼りだ。しかし王子と言う立場故、簡単に助けてと呼べない。




「はぁ、人探しをしているというのに、酷い獣だ」




余裕な笑みを浮かべるレイスは、腰を低め剣の持ち手を掴む力を強めた。そんな格好だけでも絵になるほど、彼は美しい。

サッと足を早めた彼はすぐさま獣の方へ向かい、背中や腹を狙って切り裂いていく。

踊るように血が舞い、先程の剣さばきと同じくらい綺麗であった。血にまみれた剣が、微笑んでる。

青いホワイトブルーの瞳を光らせ、約数体を殺し尽くしていた。


アカリは感嘆の息を付く。何しろ日本ではほとんど見ない、珍しいものなのだ。アカリの体は、へなりと地面に落ちたまま、動けなくなる。

それは、体も、心も、確実に彼の剣術に魅了されていると物語っていた。



「すごい……!」



声をあげた瞬間、アカリを見るレイスの表情が崩れた。

目を開いて、焦っている顔。それにアカリは戸惑いながらも、無意識に後ろに向く。

そこには先程の生き残りか否か、魔物が自分の背中に飛び掛かるとこであった。

アカリの恐怖は一気に沸き上がる。

何しろ座ったまま動けないため、逃げる手段がない。

怖いのを紛らすように、ただただ目をつむった。

____その瞬間であった。




「キャンッ!!」



氷の乾いた音と、獣の悲鳴が同時に耳にこだまする。

そしてドサッと獣が倒れる重たい音が辺り一面に響く。

驚きながらも目を開くと、獣の横腹には二、三本のダイヤの形をした氷が突き刺さっていた。

血が流れ、獣はピクリとも動かない。


次にアカリの耳に入った音は、声であった。



「___お姉さん、ごめんね。勝手にどこかいっちゃって」



そこにコツ、と立ち尽くしたのは黒い少年。

いつのまにかフードを下げており、真っ黒な髪と真っ赤な瞳が特徴的な、アカリを助けてくれた少年だった。

黒い前髪は片方の瞳をさえぎり、片方の瞳を露にしている。

今ここに生きて、またで会えることに嬉しさしか感じられない。


すぐに立ち上がり、彼のもとへと向かった。

そして彼の両手を包み込み、安堵の笑みを浮かべる。



「___良かった、無事で……」

「あはは、約束もう忘れたの?」

「ううん、忘れてないよ」



約束、というのは日本へ一緒にいくこと。指切りげん万までしたのだ。忘れない、忘れるわけがない、彼との約束。

にしても、先程の氷は彼が打ったのか。不意に、疑問が浮かび上がってくる。




「__ルイス?」



レイスの震えた声が木霊する。



「___兄、さん」



二人は向かい合った。改めてみると、本当に顔がそっくりだ。双子みたいに______。

あれ?兄さん?アカリはキョトンと口を小さくする。

しかし、犬猿の仲のような雰囲気だ。この双子か兄弟は、仲が悪いのだろうか。



「__ルイス!!」


「__兄さん!!」




______は?





「もう!どこ行ってたの!僕スッゴク心配したんだからね!」

「ごめんね!兄さん!僕どうしても外の世界にいきたくて……!」



二人はぎゅっ!と抱き締め合う。なんだ。仲がいいのか。

アカリは安堵の溜め息を溢した。

___ん?レイスは第一王子。じゃあその第一王子の兄弟か双子……ということは?




「___まさか、第二王子、とか……?」

「うん、そうだよ」

「ええええええええええ!?」



アカリの顔は青ざめる。そしてそのあっさりとした少年の返答にアカリは驚きの声を上げた。

確かに、顔も、声も若干似ている。

髪色や瞳の色、前髪で隠れている目も違う。

ちなみにレイスが左目で、彼が右目だ。


そして彼は、急に手を前に回して、お辞儀をし始めた。



「改めまして。__ユーフォリア王国第二王子の、ルイス・デッド・ユーフォリア、と申します。」


その兄同様、丁寧な言葉遣いである。

助けてもらったときのと口調は全く違うが、あの対応からきっと優しい王子なのだろうと予測できる。


「……ルイス、くん?」

「んふふっ、ルイスでいいよ!お姉さん!」


ルイスは先程の口調をはずし、ニコニコと笑う。

元気な男の子なんだな。アカリも無意識に笑みを浮かべられた。



「因みに、ルイスと僕は双子です」

「ですよねぇ……」

「あのね!兄さんはすごいんだよ!剣術に長けててね!」

「ルイスだってすごいよ!魔術なら完璧じゃないか!」



何この褒めあい双子。

仲がいいのは良いことだけど、何故か真顔になってしまう。



「___あ、そうそう、別の場所に出てきた獣も駆除したから、多分もういないも思うよ」

「あぁ、こっちもさっき殺った」

「この事、お父さんに報告する?」

「うん。した方がいいと思う」



アカリを最初からいなかったもののように忘れて、二人は真剣に話し合う。もちろんアカリは頭がクリアになっていた。そのため、口を挟もうにも挟めなかったのだ。


(私も一応、困ってるんだけどなぁ……)


家も、お金も、知識も、知り合いもいない。この世界に降り立ってから、私は一応四面楚歌状態となっている。

きっとルイスはルイスでレイスと一緒に城にでも帰るのだろう。


そこからだ。そこからは私は、どうすればよいのだろうか。

まずこの服装だって違うから、怪しまれてしまうかもしれない。更に、生憎私はこの世界の文字が読めない。

先程ルイスとたくさんの店を見て回ったが、字がとにかく読めない。


しかし、ルイスに助けを求めるわけにもいかない。

自立しなければ。

アカリはルイスとレイスが去ったあと、潔く身を引くと考えていた。そう。今は___




「__あ!お姉さん、お名前は?」

「___え?あ、えっと、あ、明莉……です」

「アカリ?聞いたことない名前です」



アカリは戸惑いながらも少年たちに名を告げる。

日本出身なので、そりゃあわからないはずだろう。

レイスは肩をすぼめて首を捻ると、ルイスは次のように説明した。



「アカリは他国から来たんだって」

「他国……か、ユーフォリアと変わって、他国は治安が悪いという噂なのだけど……」



レイスは、レイスより身長の高いアカリを足元から頭まで見上げる。漆黒の黒髪。そう。ルイスが告げていた、嫌われるという噂の「黒」

アカリのフードはいつのまにか外れており、その黒髪は露となっていた。




「心配しないで、兄さん。アカリは優しいよ」

「__まぁ、ルイスが言うんだ。きっとそうに違いない……よな。

申し訳ございません。これまでの失礼を謝罪します」



彼、レイスは潔くお辞儀をする。

そこまで軽々と頭を下げて、プライドはないのかと疑ってしまうほどだ。

王子、とあろうものが私のような異世界人に頭を下げるなど、私が恨まれるに決まっている。



「__あ、いえ……」



無意識に両手をふって否定する。

こころの奥底では、ほんとだよ、全く。と思っているが、王子だ。そんな無礼な言葉を告げてはならない。



「__じゃあ、行こうか。少しあるいたところに、僕が来た馬車があるから」

「__うん!」




___お別れ、か。

ここで悟った。二人で歩き出す小さな背中を見つめ、私は立ち止まる。

あー、私、これからどうなるかな?最悪、風俗とかになって稼ぐのかな?いや、黒髪で、得体の知れない異世界人など何処の店が雇うものか。


もう行く先のことを考える。そして、アカリに背を向けたままのルイスはピタリと止まった。




「___え?アカリは来ないの?」


「______はい?」

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