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心理戦



「母、参上」



 お部屋探し3日目。本日は事故物件の内見予約をしていた、大手不動産屋に行く予定だ。


 何故、母が参上したのかというと。

 私の部屋探しに不安があるということで、東京にやってきてしまったのである。そして、共にお部屋探しをすることに。



「大丈夫だって」


「事故物件に住もうとしている時点で不安しかない」


「事故物件も悪くないと思うけどなぁ……」



 不動産屋に到着すると。そこには、めちゃくちゃ人がいた。

 お客も営業の人も多い……!

 予約を取っていた担当のお姉さんの元に通され、早速お部屋探しが始まった。



「本日はよろしくお願いします。まずはお問い合わせ頂いていた、例の物件なのですが…………入居者が決まってしまいまして」


「あらら」


「事前に頂いていた条件で、他の部屋も探してみましたので。そちらの方を内見しに行く形でもよろしいですか?」


「はい、大丈夫です!よろしくお願いします!」



 お姉さんによると。例の事故物件はその立地と価格の手頃さから、問い合わせが殺到したのだという。大半の人は事故物件と聞くと入居を諦めたが、全く気にしない人もそれなりにいて、すぐに入居者が決まってしまったそうだ。事故物件って人気なんだ……知らなかったなぁ…………



「それにしても……お店、凄い人でしたね。大変そう……」


「今日は休日なので、コンビニみたいに人がいます。これが2月3月になると、毎日コンビニですよ。うちはコンビニじゃないっつーのって感じです」



 それはそれは、大変そうな……。

 2月3月は超繁忙期で死ぬほど忙しいらしいので、みなさんお部屋探しの際は、来店予約をちゃんとしましょう。飛び込みで行くと……お店の人が大変そうなので!ね!



「では、お部屋を見ていきましょう。まずはこちら。リノベ物件です」


「リノベ物件流行ってるなぁ……うわぁー、めっちゃ綺麗!いい感じに住めそうです!」


「独立洗面台付きです」


「独立洗面台はあんま気にしないけど……二口コンロなのが嬉しいです!」


「うーん、でも立地がねえ……」


「お母様的には心配ですか?」


「私は大丈夫だと思うけど」


「あんたは酒飲んで酔った時に、ちゃんと帰れる立地にした方がいいよ。飲み会の後よく帰宅困難になるでしょうが」


「はい……ごもっともです…………」


「では、次に行きましょうか」


「よろしくお願いします……!」



 そうして何件か見た後。都内のとあるエリアで、母的にOKな部屋が現れた。



「駅徒歩3分、商店街の近く。部屋も綺麗で……ここ、いいんじゃないの?」


「お母様も気に入ったようですね。私もここ、いいと思いますよ。どうします?ここで決めます?」


「う~ん」


「ここに決めちゃいなさいよ。お母さんもう疲れた」



 ……案内されたお部屋は、特に欠点もなく。普通にいいお部屋だった。悪くない。しかし…………1つ、引っかかることがある。私が昨日、お兄さんとお部屋を探した時に。このお部屋の近所で、ここよりもちょっと良い間取りの物件を見つけているのである。そこには、明日お兄さんと見に行く予定になっていた。この部屋もいいけど…………せっかくだから、明日も見てから検討したい。



「すみません、明日他の不動産屋で見たい物件があるので……その内見が終わったあとに色々と検討して……それからこのお部屋に決める場合、再度連絡してもいいですか……?」


「えっ…………でも、それだとこのお部屋、無くなってしまうかもしれませんよ…………?」


「それはそうなんですけど…………でも……………………」


「ここでいいじゃないのー」


「でも……………………」


「私は待ちますので、じっくりとお考えください」



 お姉さんと母からの、この部屋に決めろオーラが凄い。確かにこの部屋は、悪くない、悪くないんだよ…………でも決めるにはまだ早い気がするんだ…………プ、プレッシャーかけるのやめて…………



「……やっぱり、明日どうしても見たいお部屋があるので今日はこの辺で」


「他の不動産屋に行かれるのは困ります。明日、どのお部屋を見るんですか?たぶんそれ、うちでも紹介できますよ?そのお部屋、明日には無くなってしまうかも。どのお部屋ですか?教えてください。すぐに内見に行きましょう」


「あっ…………」


「さっさとしなさいよー」



 そ、そんな。そんなえぐい心理戦を仕掛けてきます!?私に、お部屋の情報を売れだなんて。あの部屋は、お兄さんと何時間も探して見つけた、いい間取りのお部屋…………お兄さんを裏切るような真似…………わ、私には………………




「なるほど。このお部屋なら、うちでも紹介できます。お任せ下さい」


「………………」




 …………私はゲロった。お部屋の情報を、お姉さんに包み隠さずゲロってしまった。心理戦はお姉さんの圧勝だ。ごめんなさい、お兄さん。私はプレッシャーに耐えられなかった。許してくれ…………



「それでは、そのお部屋がこちらです」


「いい部屋だ…………」


「いいじゃない」



 さすが、あのお部屋ガチ勢のお兄さんが推していただけある。住宅メーカー施行の、とてもしっかりしたお部屋だった。駅に近くて、スーパーも近い。完全にここで決まりだ…………



「お部屋探し粘って良かったですね。いいお部屋です。さ、申し込みしちゃいましょう」


「はい………………」



 大手不動産屋に戻って、手続きをした。手続きの途中で、さっきの物件がこの大手不動産屋で直接管理しているものであることが判明した。そっか…………なら、これも何かの巡り合わせなんだね…………すまない、お兄さん………………



 そして、申し込みの書類を書き終えた。ちょうどその時…………!




「あの………………すみません、今、他の所からさっきのお部屋の申し込みのFAXが来て……………………2番手になっちゃいました…………………………」





 ――――お部屋探し、続行ッ!




 つづく。





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