内見に行こう!
お兄さんと共に物件の間取りを眺め続けて数時間。いつの間にか午後になっていた。
気になるお部屋を数件洗い出し、とりあえず内見に向かうことに。
「こちらはリノベーション済みの物件です。駅には、徒歩2分で着きます」
「おおっ…………」
最近は、築年数が経っていて外見は古く見えても、中はリノベーション済みで新築みたいに綺麗な部屋が多い。かなり気持ちよく住めそうなクオリティ。
「でもちょっと狭いっすね…………」
「ですね」
「バストイレ別、脱衣場もあって悪くはないけど……脱衣場の分、お部屋の面積が減ってる……?のかな……?」
なのでこのお部屋は、6畳ワンルームよりちょっと狭めな感じ。
私は6畳ワンルームで生活していたことがあるのだが……やっぱり、狭かったなぁ。田舎の民的には、もっと空間が欲しい。あの時は、ロフトベッドを使うことでなんとか空間を生み出していた。けれどこの部屋は、変な位置に窓があってロフトベッドを置くことも難しい。立地は良くて綺麗だけど…………うーん、なしかな。
「お兄さん、次行きましょう!次!」
「はい。次もまた、リノベ物件です。駅から徒歩5分、閑静な住宅街」
「おお~、確かに閑静ですね!」
「ここで豆知識です。保育園がある辺りは、治安がいいことが多いです。なので、近所に保育園がある物件はおすすめです」
「へえ~」
そうして閑静な住宅街を進み、たどり着いた2軒目のお部屋。またリノベ物件で綺麗。いい感じに住めそうである。
「そして充分な広さ」
「1Kですからね」
このお部屋は、6畳+キッチンの1K。つまり、キッチン部分が別にあるため、ちょっと広く感じるのである!最低限、この広さは欲しいな!
「窓からの眺めも良いっすね!あ、電車がこんなに近く見え……」
『ガタンガタンゴトンゴトンガタンガタンゴトンゴトン』
「あー………………」
「うーん。線路沿いだと、このような音の問題も多いです。結構、音は重要ですよ。僕の友人は線路沿いに引っ越して、毎朝始発の時間に電車の音で起こされた結果、ノイローゼになりました。やめとけって言ったのに」
「私、うるさいとこでも寝れる自信はあります」
「うーん、そうですね。人によりますからね。一応、住む場合の音対策としましては。防音カーテンを買ってつけると、ましになると思います」
「へえ~」
『ガタンガタンゴトンゴトンガタンガタンゴトンゴトン』
「とりあえず、次も見てみますか」
「お願いします!」
そして、次のお部屋へと向かう。
「ちなみに、なんですけど。東京の新卒の一人暮らしって、大体いくら位のお部屋に住む人が多いんですかね?」
「5~6万円あたりが多いですかね」
「あー、やっぱり。そうですよね。手取りの3分の1の家賃で~みたいな、よく聞きますもん。それくらいですよね」
「そうですね、それくらいが無難かと。ちなみに僕は、手取りの2分の1が家賃です」
「えっ……それって、生活できるんですか!?」
「なんとか。かなりいい部屋に住んでるので、とても快適です。やっぱり、何よりもお部屋が一番大事なので……」
「やば……お部屋ガチ勢だ……」
「さあ、もうすぐ着きます。次は、結構いい感じだと思いますよ。駅徒歩15分ですが……」
「徒歩15分は余裕です!田舎の民なので!」
「ですよね。で、次のお部屋は……なんと2Kです!」
「やったぁ~!2部屋とキッチン~!」
「かなり広いと思います。たぶん、次で決まりそうな予感が……あ、少々お待ちください。電話に出てきます」
「はい~」
次は、お兄さんおすすめの広いお部屋。
やっぱり、広いお部屋はいいよね。2部屋あったら、家具とか趣味のもの沢山置けるし。田舎の民は大歓喜である。
もう次のお部屋で決まりかな~!
「…………あの、とても申し訳ないのですが。今電話で言われて…………これから行こうとしてた物件、申し込み入っちゃったみたいで。内見はもうできないと」
「あー…………」
「残念ですね……」
こんなこともあるのか……ほんの少しの差で、他の人に部屋を取られるとは…………なるほど…………
私は学んだ!
まだ1月だけど、東京のお部屋争奪戦は既に始まっていると!
「私、今日はそろそろ会社の新年会に行かなきゃなんで……ここまでですけど。明後日の午前空いてるので、もっかい部屋探しに来てもいいですか?」
「はい、いいですよ。お待ちしております」
「よろしくお願いします~」
お兄さんと洗い出した物件リストは、まだ沢山ある。明後日は、今日行けなかったこのリスト内の別の物件を見に行こう。
あと、このお部屋ガチ勢のお兄さんが、間取りを見てテンションが上がってた部屋を、特に優先的に見ることにしよう。たぶん、お兄さんを信じれば間違いはないはずだ……!明後日もよろしくお願いします……!
こうして、お兄さんと再度部屋探しをする約束を交わし。
私は、内定先の会社の新年会へ向かったのであった!
「あけましておめでとう、同期の皆さん。突然ですが、私田舎の民で、東京のこと全然分からないのでお尋ねしたい。住むのにおすすめな場所とかあります?」
せっかく同世代の同期に会える機会なので。新年会では東京の方々に、一人暮らしにおすすめのエリアを聞いてみた。
「そうだなー。うちの職場の近くだと、◯◯と、◯◯と、あと埼玉の△△とか」
「埼玉県。6万くらいで駅近に住める。電車も多い」
「私実家の埼玉から通勤する予定だよ~」
「友達は埼玉の△△から都内に通ってたけど、普通に便利そうだった」
………………ん?埼玉?SAITAMA県?あの?隣の県?
!!
なるほど、その発想はなかった……!
そっか、そうだよね!東北と違って、隣の県が近いんだもんね!それに、東京よりも土地が安そう!いいかも!
早速お兄さんに連絡しなくては……!
「あの、お兄さん…………明後日、埼玉のお部屋を探してもいいですか?」
「いいでしょう。お任せ下さい」
「よろしくお願いします!」
――――そして、舞台は埼玉へ…………!?
あ、その前に!明日は、事故物件を内見する予定が入っていますので!
都内のお部屋探しも、まだまだ続きますよ……!
つづく。