表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギ! マギ! マジック!  作者: 嘉和尚武
9/50

No.9




 No.9




 俺は自分の言った言葉に驚く。


 そうだよ! 別に【収納箱(ボックス)】にこだわる必要性はないんだ。とにかく物の運びが楽で。見た目の収納率より多く物が収納できるものを作ればいいんだよ!


 そうする為にはどうすればいいのか、この世界で意識を持ってから得た知識を総動員させて考え始めた。


 空間に作用させる魔法で作るにしても、空の系統の適正持ち以外は空属性魔法が認識できない。

 なら他の系統の魔法か? 『火』、『水』、『風』、は行けそうな気がするが、収納って感じはしない。

 『土』も違う。『鋼』はもとより。『樹木』。『瘴』も性質が違う。『光』も違うな。そうだ! 『闇』! この間ユーリ父さんが闇の系統にも『収納魔法』が在るって言ってたじゃないか!


 「ザーム牧師! 『闇』は! 闇の魔法にも『収納魔法』が在るってユーリ父さんが言ってたよ!」


 俺は良いことを思い付いたと言うようにザーム牧師に提案する。


 「『闇』の『収納魔法』ですか……。あれも一つの案として考えられたことがあるんですよ」

 「何か問題があるのかい? 『空』の『収納魔法』

と変わらず、便利な魔法って聞いたことがあるけど」

 「適正持ちの方が使うなら便利になるんでしょうね」


 ユーリ父さんの疑問に苦笑しながら答える。


 「闇の系統の『収納魔法』が込められた魔道具は荷物を入れると、重くなるんですよ」

 「重く?」

 「ええ、見た目以上の収納が可能な魔道具は出来上がったのですが。どう言うわけか入れた物の重さが、そのまま外にまで影響する様なものになってしまったようで」

 「ええっとそれはつまり、あまり入れすぎると魔道具が壊れたり。床が抜けたりするってことですか?」

 「まさにその通りですね」


 ダメじゃん! 欠陥品じゃんそれ!


 「ですから先程も言った通りに『収納魔法』の魔道具が世に出て来ないんですよ」


 くっ…! 他にないか! 物が収納できる様なものは!

 考えろ。考えろ。考えろ。考えろーーー 


 「物凄く一生懸命考えていますね。『空』の適正持ちならそこまで考える人はいないと思うのですが」

 「実はね。『収納魔法』の魔道具を作ってこないとルージュに一生荷物持ち。と言われているんだよ」

 「ルージュファリスちゃんにですか? ああ、確かあの子は魔法騎士(マギナイト)を目指していましたね。成れれば従者(スクワイヤー)を持つことができますからね、なるほど。知らない者よりは知っている者の方が気安いと言うことですか」

 「だろうね。でも成れたとしても身内の従者(スクワイヤー)が持てるかどうかだね。大概は知らない者同士で組まされるから」

 「身内で固められるのは余程の家、のみですか」

 「男爵(バロン)の身分としては、叶えてあげたくても難しいだろうね」

 「貴方が願えば大抵の事は叶いそうですが」

 「やめてくれ。そんなことを言い出せば、周りの貴族連中に何を言われるかわかったもんじゃない。僕はノイッシュと一緒になりたくて地位を得たけど。貴族になりたかった訳じゃないからね」

 「その地位を得るために必死になって奔走している人達が聞いたら、昏倒するでしょうね」


 大人達が何か話している。だがそんなことは今の俺にはどうでもいい。どんな形ででも物の収納がきちんと出来る。そんな収納魔道具を作らなければ。


 スモー○ライト的なものを作るか? ああでもどうやったら物を小さく出来るかが分からない! たすけてー! ドラ○も~~~ん!


 「大分煮詰まっているようですね。まあこれで今まで作れなかったものが作れるようになれば、世の魔具師(マギクラフト)は職を追われることになってしまいますがね」


 ファンタジー世界に登場する収納アイテムはどうやって作ってるんだよ! あれか!? ファンタジー世界だからファンタジー的な要素が働いているのか!? だったらここでも働けよ! ファンタジーだろう!


 自分自身で最早何を言っているのか分からなくなってきた。


 もうあれだ! 大きな風呂敷でも広げて、その中に物入れて担いで持ってけばいいんだよルー姉は!

 風呂敷? 広げる? ……広がる……拡張……拡張!?


 自分の言葉に今度もピーンと来るものがあった。


 「ねえねえ! 空間を広げる魔法ってないの?」

 「空間を広げる? そんなのあったかな?」

 「無属性魔法に【感覚拡大(ロングセンス)】と言う魔法なら在りますが、あれは五感の感覚を鋭敏化させる魔法ですし。デュヴェルオブリスくんが求める魔法じゃないですよね?」

 「無の系統なら空の系統でも同じようなことが出来ないの?」


 同質の系統だ。出来そうな気がするが。


 「空属性魔法で広げる、何てことが出来る魔法があるかな?」

 「もともと空属性魔法は空間に作用させるものですからね。それを更に変化させるとなると、【空盾(シールド)】。いえ、これだと多分一範囲のみに広がるだけですね。そうなると。可能性としてありそうなのが【空盾(シールド)】の応用魔法。【結界(キューブ)】ですか」


 【空盾(シールド)】? 【結界(キューブ)】? どちらも知らない魔法だ。


 「それどんな魔法?」

 「【空盾(シールド)】は一方向に対して、魔力の壁を作り出すことが出来るんですよ。【結界(キューブ)】は全方面に対して壁を作る魔法てすね」


 ああ違う…。それだと俺の求める魔法じゃない、気がする。

 俺が今望んでいるのは空間内部の拡張だ。それは多分効果範囲を広げるだけの魔法になる。

 物語なら二、三案を出せばパッと問題が解決するような事になるのに……これが現実ってやつか……。

 ああ、そうだな。この感覚なんか懐かしいや。『デュヴェルオブリス』になる前。よく会社でこうやって案を出しあってたな。百の案を持っていって、使えそうなのが半分。実際試してみて使えると思ったのが更にその半分。実用性やら耐久性。不具合やその他の理由でなんかで結局一割だもんな、商品になるのは。

 うん。きっと俺は過労死で死んで生まれ変わったとかのオチだよな。ははは……よし!

 『無いなら作れ。思い通りにいかないならどうしたらそうなるかを考えろ。発想しろ。想像しろ。それを形作るために』!


 かつて働いていた職場での社則ではなく。社員の間で言っていた言葉を心で紡ぐ。

 そうすることで諦めかけていた自分の心に再びやる気を灯す。

 そうしてやる気を取り戻した俺は、自分だけの知識だけでなく。ユーリ父さんやザーム牧師の知識も借り。あらゆる方法の模索を開始した。


 「この案はどうですか?」

 「うーん。それだと使える人がいなくなりそうですね」

 「こっちは?」

 「それ、需要があるのかい? デュオ」

 「トライアゲイーーン!」

 「「それはなんだい(ですか)?」」


 意見を出し合い。ぶつかり合い。時に脱線しながらも話し合いは続けられていく。

 そしてこの話し合いは数時間にも及び、昼過ぎに家を出掛けたのに、もう外は日が暮れそうになっていた。


 「今日はこの辺にいたしましょう」

 「……まだまだ……ううっ……」

 「ほらデュオ。考えすぎで頭痛くなってきたんだろう? 今日は帰ってゆっくり休もう」

 「……でもまだできてない」

 「ルージュだって本気じゃないさ。今日出来なかったからって、デュオを荷物持ちにしたりしないよ」


 俺はテーブルにうつ伏せて頭の痛さに唸っていた。

 自分でも知恵熱が出始めていると言うのはよくわかっている。

 しかしだからと言ってユーリ父さんの言葉を素直に受け入れるわけにはいかない。なにしろ。


 あのルー姉のことだ。俺が収納魔道具を作ってこれなかったと知れば、嬉々として俺を荷物持ちに採用するに決まっている。あれはそう言う姉だ。


 「デュヴェルオブリスくん。君はまだ三つです。にも関わらずその発想の豊かさには感服します。ですが無理は禁物ですよ。良き物を作る時には心と体が充実している方が良い物が作れますよ」


 ザーム牧師も俺を諭し今日は帰れと言ってくる。


 「デュオの発想のお陰で新しい魔法の可能性も見えたじゃないか。今日はそれで良しとしよう?」


 ユーリ父さんが言う新たな魔法の可能性とは、複数の属性魔法の融合である。

 この世界では普通魔法を使う場合、一つの属性魔法を使うのが一般的だ。

 それは例え複数の系統の適正を持つ者でも同じ。

 だが俺はこの世界の考えとは違う考えも持っている。そこからの発想で複数の属性魔法を融合させて使うことが出来ないかと提案したのだ。

 この案にユーリ父さんもザーム牧師も否定することはなく。また子供の案と一蹴することなく。考えてくれた。

 無属性魔法【感覚拡大(ロングセンス)】と空属性魔法【結界(キューブ)】。

 それと鋼属性魔法の【混合(ミックス)】と言う魔法を使った複合魔法。

 これらを上手い具合に術式文を作成し。魔法を作り出した。

 失敗もあった。自分で提案してこれは無茶だと思った。だけど諦めずにやって出来たんだ。


 そして一つの魔法が完成した。【領域探査(エリアサーチ)】と言う魔法が。

 それは自分の魔力が及ぶ範囲内であれば、どんなモノが在るのかが分かると言う。物探しには便利な魔法が……。

 うん……わかってる。目指していたからって、望んだものが出来るとは限らないことはわかってる。そんなことは職場でもさんざん経験したさ。思いも寄らない副産物ってやつをな。わっはっはっはっ! ああ……頭痛い……。


 「ほら今日はもう遅いし帰ろ」

 「ううっ……ボクが求めたのは『拡張魔法』なんだ」

 「本当に変なところが似てしまってますね。頑固なところなどあなた達にそっくりです」


 ユーリ父さんに背負われ帰る準備をする。

 俺はやはりどうしても諦めきれず。心のなかで今日模索していた中の一つ。その複合術式文を唱える。


 『魔力よ。集まりて隔離させた領域に染み渡り。新たな領域を造り出せ。其所は時も空間からも隔絶された場所なり。【拡張領域(エクステンド)】』


 「ん? あれ?」

 「どうしました?」

 「いやね。なんかドアノブが遠ざかって行くんだよ」

 「ユークリウッドさんも大分疲れたようですね。今日は早めに休んだ……私も大分疲れているようです。この部屋の広さがおかしく感じるのですが……」


 二人してなんか言ってる。ああダメだ。今のいい加減な術式文でも魔力使ったようで、精神的疲れがピークに達した。もうルー姉の荷物持ちでも何でもいいや。早く帰って寝たい。


 「目の錯覚じゃないですよ!? 本当に部屋が広がっています!?」

 「いったい何が!? ん? デュオ今魔法を使ったね!? いったいなんの魔法を使ったんだい!?」

 「え? なに? ユーリ父さん、うおおおっ!? 部屋がなんか広くなってる!?」


 成功と言うのは、以外と思いがけずの行動の時『パッ!』と、出来たりする時があったりするんだよな。














次回は11月18日の更新となります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ