No.39
No.39
「うおおッ! ちょーうめぇーッ!」
「均等に切り揃えられた野菜には無駄なく火が入り。野菜の旨味もしっかりと壊すことなく出させれている。そしてこの彩り豊かな野菜の旨味だけでなく。使われたこの味は、これはなんだ? ぼくの舌に覚えがない味だ。コクと酸味。そして油分がある…これは植物? どこかで覚えがあるぞ!? どこだ…!? どこで食べた…!? ……そうか!? これは豆だ! 何てことだ!? 豆から油を作り出し。新たな味にするなんて!? デュオ! 君はなんてサイコーなんだ!」
「……ああ、ありがとう」
なんでほんの少ししか使ってないのに、なぜそこまでわかる? それと食に関することになると相変わらず口調が変わるよな、こいつは。
食レポみたいな感想を述べるポテプに驚きと呆れつつも。自分の作ったものが誉められると言うのは気分が良いものだ。
ウィードは何を出しても「うめぇー!」とか。「ちょーうめぇー!」としか言わない。逆にこいつの場合はバカ舌なんしゃないかと疑いたくなる。それでも皿を舐めるようにして食べているのだ。満足のするモノであるのはわかると言うものだ。
「で、いまのゴハンに使ってた調味料ってなに? まだあるの?」
「よくそうポンポン思い付くよな。どんな頭してんだよ。スゴすぎんだろう」
俺が作った料理に満足した二人は、食休みも兼ねてのまったりとした会話を所望してきた。
俺の方は使った道具を魔法を使って洗浄して、また【収納箱】に仕舞っていく。
「今回作ったのはマヨネーズって言うやつで、タマゴを使った調味料だな。ポンポン作ってるって言っても、本に載っていたやつを再現しているだけだからな。俺が凄い訳じゃないさ。その作った人達が凄いんだよ。でも流石にきちんとした作り方まで載ってなかったから、大分試行錯誤したなぁ。まあ二人の反応見ればわかるけど、どうだった?」
「「うまかった!」」
そうかそうか。お前達がそう言うなら出来としてはオッケーだろう。あとはユーリ父さんとシェルティにも味見をして貰って、マヨネーズのレシピを売れば、また村の運営資金の足しになるだろ。
今回のマヨネーズもよく俺がお世話になる著者・カンパネル氏の食い倒れ漫遊紀行録第何段は知らないが、そこから見つけたものだ。それ以外にも醤油、味噌もあった。名前もそのままの品物だ。もしかしたら地球の日本から来た人が広めたのかもしれない。因みにソーマさんでないことはわかっている。ソーマさんはアデルばあちゃんの転移魔法実験の失敗で呼び出された際に、記憶喪失になっていたそうだからな。地球の知識は殆ど思い出せず。時たまふらっと思い出す時があった程度だとアデルばあちゃんが言っていた。
そして醤油と味噌だが、残念ながらこちらはまだまだの出来だ。流石に同じモノ作りとは言っても、食品に関してはまったくの素人だからそうそう上手くはいかない。トライアル&エラーの真っ只中だ。
醤油と味噌はクロウバルワ王国の東、海を渡った和国に在ると言うことだ。現在トトカト村を出入りしている馴染みの行商人に頼んで入手を試みているが、いまだ入手したと言う連絡は受けていない。まああの人は優秀な商人らしいから、必ず成し遂げてくれる、と信じ今は待っている。
「マヨネーズはまだあるけど、これは日持ちしないぞ。食べて使うなら冷蔵庫に入れていても、一週間以内に食べろよ」
タマゴに付き物のサルモネラ菌に関することは、瘴の属性には殺菌作用の効果の魔法が存在する。
腐食とか酸とかの魔法なのに殺菌? と思われるかと思うが、あるものはあるのだ。そう納得してくれ。
油はトトカト村ではアブラナと良く似た植物から油を抽出している。まあそれを使うのでも良かったんだが、確か大豆から取れる油があったな、などと言う。うろ覚えな知識なのもと、試行錯誤しながら大豆の種子から油を抽出することができ、それを使った。
混ぜるときには酢が必要だなと思うも酢はトトカト村にはない。他のところにはあるらしいが、これもまだ仕入れていない。なら代わりとなる、酸っぱいものが必要だと巡り巡って、レモンのようなものを発見し。それを使用した。
日持ちしないのはそうした処理をしてないからだ。
冷蔵庫に関して言えば、トトカト村では100%の普及率となっている。これは俺が作った物の売り上げの一部を使い。村の各家庭に一台は無料提供しているからだ。この辺りはユーリ父さんが言い出したことだな。小型であっても食べ物の保存ができる。これによって夏場の暑さで食べ物が傷んでいる事に気がつかず食べて、体調を崩すものを減らすことが目的だ。
「ひゃっほー! ウマイもんだ!」
小分け用の壺に渡してやったら小踊りしながら喜んでいる。
「マヨネーズは色々と使い道があるぞ。さっき使った油の代わりだけでなく。生野菜にソースのようにつけて食べる事だって出来るぞ」
「マジッか!? ちょっと食ってくる!」
「ぼくも!」
「いや、お前らいま腹一杯になるまで食ったんじゃないのか?」
あれほど腹がはち切れるんじゃないかと言うくらいに食べたのに、バリボリバリボリとまた食べ始めている。
「だから生の野菜を食うなっ! モノによっては腹壊すぞっ!」
「大丈夫だって、いつもこうして食ってるし。しかしこうして食うとまたうめぇなっ!」
「この野菜本来の味を包み込むようなまろやかなコクは、人によってはくどい味とも捉えてしまうだろう。しかし…だがしかし! 一度人が口にしたのなら、もはやこの味でなくてはならいと。これ無しでは生きていけないと思えてしまうほどの至高の味! ああ、まさに。まさに天上の味とも。魔性の味とも言えてしまうマヨネーズ……デュオ! きみは、きみはなんてモノを生み出してしてしまったんだ! ありがとう! きみの悪魔のような所業にぼくは感謝する! ぼくはもうマヨネーズ無しでは生きられないっ!」
ここにひとりマヨラーが誕生した。
って違う! ジャガイモを生で、しかも芽が出てるところを食おうとするな! いくら物作りしか取り柄がない俺でもわかるやつだぞ!
食べるところを慌てて止めて。二人からぶーぶー文句を言われるので、代わりとなるもの。ジャガイモを蒸かしたものを与えたらころっと態度を変えた。
「ふぅ~さすがにもう食えねぇ……」
「え? そう? まだぼく食べられるけど?」
「どんだけ食えば気が済むんだよ…。自分の体積以上の量を食ってじゃねぇか…」
ウィドーがもう食べれないと苦しそうな表情の横で、余裕の表情を見せて。ポテプはまだ残っている蒸かしイモを食べていた。
村の文化基準をあげるように色々と物を作っては要るが、それより先に食文化をあげた方が村の人達にとっては良いのかもしれないな。
基本煮るか焼くかの料理方法しかないからな。揚げや蒸し料理と言った料理方法をバルガスに教えてみよう。バルガスなら料理方法を知れば食材次第で色々なものを作ってくれるだろう。俺だと簡単な料理しか知らないしな。
「マヨネーズ焼きだけでなく。イモがこんなにウマくなるなんてな。これも本で覚えたってやつか?」
「そうだな、本からだな」
正確にはインターネットから仕入れていた知識だが。
「ホントよく作るよな。他にもあるのか?」
「まだ食う気なのか!? 腹一杯になったんじゃないのかよ!?」
「いやさすがにもう食えねぇよ」
「え? そう? ぼくはもう少しいけるよ」
「「お前はいい加減食いすぎだ!!」」
収穫した作物を食べ尽くす気かと言うぐらいに食べ続けているポテプに、二人の鋭いツッコミが入った。
「食いもんじゃなくて、何か作ってんのかって話し」
「ああそっちか。在るって言えば在るけどな…」
色々在ることはあるがまだ試作段階。こいつらに見せると試させろと言われる可能性がある。その中で見せても良いものはーーー
「これが良いな。ええっと……あったあった」
俺は【収納箱】からひとつの魔道具を取り出す。
それは地球の人間が見ればスポーツタイプのバイクのボディフレームのような形をしたもの。だからそうしたモノだと知らないものが見ると。
「なんだこれ? 獣の首と足を無くしたようなやつは?」
「…もうちょっと言い方はないのか。胴体、と言う意味では合ってるのかもしれないが」
これは前に見せた【浮遊】の魔道具を更に移動出来るようにした魔道具だ。
使用した魔法は【空飛ぶ板】と理屈上は同じなんだが、少し違う。その辺をこいつらに説明すると寝るか興味をなくすかなので、省かせてもらう。まあ名前聞けばどんなものか予想つく人はつくしな。
「こいつは、そうだな。【空飛ぶ車体】とでも呼ぶか。乗り物の魔道具だ」
「乗り物? 馬車とかの?」
「正確にはそれを引く馬とかだな」
「馬じゃねえじゃん。馬の出来損ないみたいなやつじゃん」
「出来損ないじゃねぇよ!? これはこう言う形なんだよ!」
まったく失礼な。機能美とかを理解しないヤツめ。これをザーム牧師に見せた時は「とても理に適った形ですね。素晴らしい!」と言っていたくらいだぞ。
さて、【空飛ぶ車体】を説明なしで分からせるとなると、やっぱ実演が一番良いな。
俺は【空飛ぶ車体】跨がり。ハンドルを握りしめ。軽く魔力を流す。
『イグニッション・スタンバイ・レディ』
「うおっ!? なんかしゃべった!?」
「え? なにこれ? 人が入ってるの?」
「入ってないよ。音声ガイドって言ってもわかんないよな。簡単に言えばこの魔道具には鍵が掛かっていたんだ。それを魔力を流すことで外したんだが…」
俺は出来る限り分かりやすく言ったつもりなんだが、この二人はぽかーんとした。まるで理解していないと言うような表情をしていた。
俺は更に分かりやすく。ルー姉相手に理解させるつもりで。
「……要はこれで魔道具が使えますよって状態だ」
「おおっ!? なるほど! それならわかる!」
「へぇーなんか面倒なやり方するんだね。普通の魔道具ならちょっと魔力を流すだけで使えるんでしょう?」
今度は通じだ。これから先魔道具の説明はルー姉を相手にするようにした方が良いのかもしれなーーーぶるぶる。な、なんだ!? 今ものすげえ寒気がしたぞ!?
「あ、ああ…。普通の魔道具は戦闘時に使うものが多い。だから即座に魔力を流したら発動するものが多いんだ。俺の作るのは戦闘に役立つものじゃなく。普通の生活の中で皆の役立つものを目指している。だから何よりも安全性を第一に考えてる」
「デュオらしいね」
「だな。デュオはわけわかんねぇモノばっかり作るけど。みんなが楽が出来たり。楽しめたり。ウマイもん作ったりするからな」
ここに居ないのにどうやって俺の軽口を察したのか疑問があるところだが。この不安を掻き立てられる様な悪寒は取り合えず無視して、二人の疑問に答える。すると二人は普段から俺が作っているものを知っているので、俺が物を作る理由を話すと可笑しそうに笑っていた。
二人の笑いに俺は頬を緩める。
二人が俺をバカにして笑っているのではないと言うのは十分分かっている。作っている時は理解されなくても、作った後に理解されたのであれば、作り手としては嬉しいものだ。
自分の作ったモノが間違いなく皆に喜ばれ、役に立っている。
そう思える時こそ、作り手として一番の誉れの瞬間だと感じる。
それは年を取っても。転生しようとそれに変わりはない。……だからまあ、その、なんだ。友人とは言え、誉められて嬉しいものは嬉しいからと。その礼に本来一人用の【空飛ぶ車体】に子供三人乗って試乗したのは、あとから冷静に考えてみても。ちょっと待て。搭乗者数を無視した多人数乗車は危険だぜ。だった。
「は、はやい…!? う、馬に乗ったことないけどこんな感じなのかな!?」
「今大体時速三十キロだから、大体馬が軽く走るくらいじゃないか?」
備え付けのスピードメーターを見ながら俺の背中にしがみつくようにしているポテプに答える。
常に地上から車体を九十度の状態でキープして、三十セン程の高さで空中に浮遊を保つようした【空飛ぶ車体】が空気の力を利用して走行している。
「デュオ! これやべぇなっ! やべぇよマジで! ヒャホーッ!」
「興奮してんのはわかるけど、物凄くアホっぽいぞお前」
「普段も頭がアレな感じなのに、"速い"ってことで、ウィドーの頭を更におかしくしちゃってるね」
「……食事をしてる時のポテプもベクトルは違うがあんなもんだぞ」
俺。ポテプ。ウィドーの順番で座っていたが、興奮したウィドーが座席の上に立ち。雄叫びを上げるように騒いでいる。
一応投げ出されないようシートベルト代わりに俺が【遠手】で支えているが、座れと言っても聞かないだろうな。
「デュオ! もっとだ! もっとはやく! 何人も俺たちの前には誰も行かせねえぇえええー!!」
「赤木○馬かお前は!? ……だがまあ、もっと速くして良いって言うなら、ちょっと性能実験を試させてもらうぞ」
「え!? ちょっと!? デュオ! なにするの!?」
俺も思いの外の出来に興奮していたのかもしれない。ウィドーの言葉に悪ノリして加速装置のスイッチを入れたのは、あとから考えても本気でヤバかった。
「エアコンプレッサー起動! 空気圧上昇! ……3……2……1……」
以前少し話したが、【浮遊】の話の時に速度が出るのかとアデルばあちゃん聞かれた時に、俺は風の属性の中に【風爆破】と言う魔法がある。それを応用して推進力の空気を一気に溜め。開放すると言う方法を取った。
そして今回もそれを改良したものだ。最初の時は空気圧が高すぎて本体の軸がブレ空へ飛んでいってしまったのが原因だった。だから以前ほどの加速力は出ないようにしてある。……してあったんだがな。やはり子供とは言え三人も集まれば、大人一人分以上の重さがあったんだろう。
「エア・ブースト!」
一気に圧縮空気を開放した。
そして【空飛ぶ車体】はその空気圧の推進力で一気に加速する。俺達の体は慣性の法則に従い後ろへと引っ張られる。三人の重量バランスを考えての搭乗だったが、少し斜めに傾いていた車体は、俺達が後ろへと引っ張られた事で更に傾いた。
噴射口位置は車体後方にあり。車体が傾けばどうなるか?
まず始めにウィリー走行状態となるが、意図してそうしたのであればすぐに対応は出来た事だろう。
しかしいきなりだった為、俺達の体は更に車体後方へと行く。そうして噴射口が車体後方から地面、更にその勢いのままぐるっと一回転。しかも勢い止まらずそのまま立て回転をした。
「うおぉおおお!?」
「うわぁああああ!?」
「うひゃひゃひゃひゃーー!」
慌てふためく俺達を余所に、テンションが振り切れ。血管切れたような笑い声をあげるウィドー。
「……まったく。何してんねん! デュオ坊! 魔道具は扱い方間違ごうたら危険やって自分がようわかっとるやろうが!」
「…はい。すいません」
回転をしていた俺達は、その回転エネルギーが切れたから助かった、訳ではなく。たまたま近くを通りかかったと、本人談のアデルばあちゃんが助けてくれたのだ。そして現在俺達は怒られている。いや正確には俺一人が怒られている。ウィドーとポテプは俺に付き合わされ巻き込まれた。と言うことにした。俺が馬鹿やったせいなのだ。じゃないと流石にあいつらに悪い。
「今回うちの息子がお子さん達を危険な目に遭わせてしまい。申し訳ありませんでした」
そして今回はいくら俺が魔法で二人を守っていたとしても、流石に見過ごすことの出来ない危険性があった為。ユーリ父さんが謝罪に来た。
「誰もケガが無かったんだから良しとしましょうや。領主さま」
「いや、しかし……」
そんなユーリ父さんにどことなく気っ風が良さそうな雰囲気を出して笑っているのがウィドーの親父さんと。
「失敗は誰にでもありますよ。取り返しのつかない様な失敗でなければ、多少の怪我ぐらいは身に覚えの役に立ちます」
「…ですが…」
筋骨隆々で人の良さそうな笑顔で悟ったような言葉を言っているのがポテプの親父さん。
いやぁ聞いていてすげぇなって思う。何しろ俺が子供の頃、デュオの俺じゃなく。前世の俺の時の話な。その子供の頃ぐらいの時なら家族だけでなく。近所のおっちゃんおばちゃん。それこそ誰とも知らない人からでも悪さするやつが要れば誰もが怒って注意していたんだよ。それが俺が大人になる頃には誰も注意しなくなってた。下手をすればその子供の親ですらだ。下手にこっちが注意しようものならパワハラだなんだかんだと、逆にこっちが悪いような言い方をされるからな。あの時感じたなぁ、時代ってやつは良いようにも悪いようにも変わるって。んで、この話がどう続くかと言うと。
「確かに罰のひとつも与えねぇのは、スジが通せねぇかーーなら」
ごんっ! と、ウィドーの親御さんにがウィドーの頭に拳骨一発落とした。
「イテェーーッ!?」
「領主さまの坊っちゃんがお前は悪くねぇと言ってくださってるが、一緒になって騒いでたんだ。これで勘弁してやるから今回の事は反省しろ」
良い音が鳴っていたから余程キツいのを貰ったのだろう。ウィドーが頭を抱えながら悶絶して踞っている。
「ニゾロさんのようなやり方は私には出来そうもないのでーーーポテプ。今日より一週間。食事のおかわりを一回までにします」
「!?」
この中で一番マッチョなお方が武力行使は苦手と、ちょっと意味わからないと言う言動に首を傾げたくなった。更にポテプに罰する罰もおかわり無しではなく。一回までとか優しすぎないと思われるが、あのポテプが顔面蒼白になり。言葉にならない声で親父さんにお慈悲をと訴えているので、本人にとっては相当な罰なのであろう。
そして俺は。
「……私の方も今回の罰をデュオに与えなければいないのだが、アデル様から相当なお怒りの言葉を貰ったんだ。デュオならそれだけで十分に理解し、反省しているだろうから無しにーー」
当然だ。今回の事は反省すべき点は多々ある。
先ずひとつは車体の形だ。バイク型でも良いのだが車高が高すぎた。あれでは重心のバランスが崩れた時、車体と地面が平行に保たれるように術式を組み込んでいたから、噴射力とも重なりもあって車体が回転するなんて言う現状が起きた。
乗る体勢は前傾姿勢でもオーケーだが。車体を低くして、【浮遊】の術式をもう少し柔軟に組み込んだ方が良さそうだ。
通常走行の推進機構は問題は無かったが、加速時の圧力上昇と噴射持続に問題があるな。噴射コントロールをもっと操縦する人間の意のままにスピード調整できるようにしたい。
あとはそうだな。緊急時に搭乗者を守るエアバッグみたいなのがあると良いな。今回は俺が二人を【遠手】で車体から飛ばされないようにしていたから、二人ともかすり傷ひとつ負うことはなかった。…一人たんこぶで、一人心の傷っぽいのを負っているが…。
「と、思ったんだが…。やはり罰は与えておこう」
アデルばあちゃんの説教だけで俺の罰は終わると思ったのに。急速ターンを繰り出したかの如く。ユーリ父さんは罰を与えると言ってきた。
なにゆえに!? きちんと反省しているよ!?
「……デュオ坊。反省している理由が魔道具の出来の話やったら。それは反省しとるとは言わへん」
「あれ? アデルばあちゃん何でボクの考えが? まさか!? 読心の魔法が!?」
「そんなんあらへんわ! さっきからぶつぶつデュオ坊が全部口に出してたわ!」
「な、なんだってぇーー!? あ、ゆ、ユーリ父さん……」
ボケ倒している場合ではない。罰を与えると言ったユーリ父さんの方を向くと。そこにはイケメンフェイスで微笑む我が父がいた。
「デュオ。明日から剣の修行を始めようか。ああ大丈夫だよ。ザームには僕との剣の修行で忙しくなるから魔道具の師事はしばらくお休みと伝えておくから」
「え!? だってそれは年明けてからって!?」
「ちょっと早くなるだけだよ。うん。全然問題ないね」
「いや大分早いよ! 反省してる! 反省してるから年明けてからにしようよユーリ父さん!」
なぜ俺がこんなに必死こいてユーリ父さんを説得しているかと言えば。
剣の稽古が始まる。
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ルー姉とアル兄と一緒に剣の稽古。
⬇️
まるっきり素人の俺。長女であり。剣に一日の長があるルー姉が嬉々として俺に剣の指導をしてくる。
⬇️
ある程度覚えてくると。実践こそ勝る修行なしと打ち合い稽古をやり始める。
⬇️
加減と言うものを知らないルー姉にボコボコにされる俺。
以上が俺の未来予想図。と言うかアル兄がまさにこんな状態でやっているのだ。
そしてアル兄は、ルー姉から生き残るために必死になって剣の稽古を行っている。
だからそんな未来は出来るだけ引き伸ばしたい。しかし。
「どんなに嫌がってもロッソストラーダ家の人間として、やるべき事はやらなきゃいけない。それが貴族と言うものだよデュオ」
……おお、ノブレス・オブリージュ……。
そりゃあ貴族の家の子ですから。それなりの覚悟は持つよう育てられていますが。別の方法で解決と言うのも有るのではないでしょうか父上。
「ああそれと。年が明けるまでは魔道具に関する知識を知ることや魔道具の開発は一切禁止とする。良いねデュオ」
「かはっ!」
……それが、それが一番ツラい罰だよ、ユーリ父さん……。




