No.21
No.21
この世界の名はクラウベルブァーナ。
その世界にあるクロウバルワ王国のヤーナ・マーナ地方。その辺境にあるトトカト村。
そのトトカト村の領主の家。ロッソストラーダ家の次男として生まれた、デュヴェルオブリス・ロッソストラーダは転生者である。
二歳の時に気がついたら四十代のおっさんの記憶が目覚めた。
そりゃあ驚いた。死んだ記憶も神様イベントもなく。いきなり子供になっていたのだから。
慌てもしたが、まあそれも人生と受け入れ。デュヴェルオブリス。家族からは親しみを込め『デュオ』と呼ばれている。そのデュオとしてこの世界での生活を営んでいくことにした。
それから一年。
クラウベルブァーナには魔法があり。その存在を知って大変興味が湧き。魔法の扱いをほぼ独学で習得した。
そこから先は自分で自重していると思っていたのだが、あとから思い返せば思いっきりしてないことに気がつく。
まあこれも『やっちまったもんはしょうがねえ』と受け入れ。次回から気を付ければ良いやと思い行動する。
しかしその行動は伴わないことがしばしば。
そのせいでーーー
「おーい。デュヴェルオブリスの坊っちゃん。こっちも頼むよ」
「それが終わったらこっちも頼むな」
「いやぁ~デュヴェルオブリスの坊っちゃんが来てくれたお陰で、稲刈りが楽だなぁ」
「だな」
「みんなおかしいよ!? なんで三歳児のボクをこんなに酷使するの!?」
今日のトトカト村では麦の刈りが行われている日であった。
そんな日であったが、三歳児の俺には関係ないだろうと、ザーム牧師のいる教会へ向かおうとしたと麦畑を通り過ぎようとすると。何故かトトカト村の村人達に捕まり。麦刈りを手伝わされる嵌めになった。
「ってもなぁ。デュヴェルオブリスの坊っちゃんの魔法でちょっちょっいっと麦を刈ってくれると、ずいぶん助かるだがな」
「そうして貰えると、いつもより四日くらい早く終わるなぁ」
「俺達デュヴェルオブリスの坊っちゃんみたいに魔法使えないから、だから頼むんだけどな」
「だからってこんな重労働を三歳児に頼むのって、おかしくないッ!?」
なんかおかしいよ!? 最近のトトカト村は!? 俺が行くと誰かしらに捕まり、何かをやらされる。
しかもやり終わると誰もが『流石デュヴェルオブリス。仕事が早い』と言われる。
ユーリ父さんが治める村だし。子供の俺でも何かしらの貢献できればくらいの気持ちで引き受けてるけどさあ。みんな要求が段々とエスカレートしてる気がするんだよ。
それをこなしてる俺も悪いだろうけど、三歳児に頼みすぎだよみんな! 過労死するぞ!
などとブー垂れた事を言ってもやることはやる。
『風の系統』。【小風の刃】で麦を切り。
『空の系統』。【遠手】で切った麦を所定の場所へと集めていく。
その様子に村人達が感嘆の声をあげていた。
「すげぇ……。一瞬であの広い範囲の麦を刈り取ったぞ……」
「それだけじゃねぇよ。刈り取った麦が一人でに積まれていくんだぞ。さすがデュヴェルオブリスだ……」
これだ。一体自分の名前がなんだと言うのだろう?
ルー姉やアル兄の名前の由来はすぐに分かった。
ルー姉の『ルージュファリス』は知恵と慈愛。そして鍛冶を司る火の女神の名前だ。
名前負けしてるなぁと、名前を見つけた時にルー姉を見て大笑いしたら、ルー姉から手痛い制裁を受けた……。
そしてアル兄も名前負けと言う意味では同じかもしれない。
アル兄の『アルブレヒト』は国の歴史に残る英雄の名前。
なんでもその昔、竜退治をした英雄で 勇猛にして凄腕の剣の使い手だったと言う逸話が残っている人だ。
暇があれば書庫で本を読みふけっているアル兄が勇猛? 正反対の人だと思う。
そして俺の名前もそうした歴史や神話系からだろうと。それ系統の本を探し見たが、『デュヴェルオブリス』と言う名前は一切出てこなかった。
毎回毎回刈り取りをやらされるのは勘弁して貰いたいから、ユーリ父さんに相談して、人力稲刈り機の製作の許可を貰おう。いや麦だから人力麦刈り機だな。
「終わったよ。これでいい?」
「……すげぇ……ほんの小一時間で刈り入れが終った……」
「……さすがだぁ。さすがデュヴェルオブリスだぁ……」
「みんなそう言う風に言うんだけど、ボクの名前がなに? ルー姉やアル兄みたいに何か由来のある名前だって言うのはわかるんたけど。どんな意味があるの?」
「え? そいつは……」
「なんつうかなぁ。なあ、おい?」
「俺に振らねぇでくれよ!?」
こうして聞くと誰も話したがらない。と言うか、苦笑い? それとも何か可笑しくて我慢していると言った雰囲気も出している。
俺の名前に一体何があると言うのだろう?
明らかにわかるのは、仕事が手早く終われる事に関係していると言うことくらいだ。
二人みたいに名前負けしている、と言うわけでもなさそうなんだよな。
これは一回本格的に調べた方がいいな。機会を見つけて調べてみよう。
まあ、それはそれとして、早くザーム牧師のところへ行こう。今日は魔道具の新しい技術を教えてくれるって言うからな。楽しみだ。
そうしてこんな日々が一週間ほど続いたある日。
その日もザーム牧師から新しい技術を習得するために通いに行くと。いつも閑散としている教会には沢山の子供達がいた。
「デュヴェルオブリスくんこんにちは。今日も魔道具の師事ですよね?」
「うん。そうなんだけど今日は人が多いね。それも子供ばっかり」
「昨日伝え忘れたのですが、今日は『教育日』です。なので子供達が集まっているのですよ」
なるほど。今日は勉強の日だったのか。
俺は教会で行われる勉強には参加したことが今までない。
家でノイッシュ母さんやシェルティから教わっているからだ。
ルー姉やアル兄は行ったことがあるらしく。アル兄は。
「うん。ためになる話が聞けたよ」
と、答え。ルー姉は。
「家で勉強させられてるのと同じくらい辛かったわ……」
と、若干疲労困憊と言った感じで答えていたのを覚えている。
ザーム牧師から魔道具の教義は今日の教育日が終わるまで待って欲しいと言われたので、次いでだからと俺も一緒に受けることにする。
「そうですか? デュヴェルオブリスくんには少し退屈な内容かもしれませんが」
「それはそれだよ。そこから何か面白いことが思い付くかもしれないし」
「余り派手にやらかさないでくださいね。この間ユークリウッドさんが来て、デュヴェルオブリスくんのお陰で村が豊かに成りつつあると言っていましたが、同時に自分の仕事量が倍々に増えていくと言って嘆いてましたから……」
ユーリ父さんこっちでも愚痴を言っていたのか……。
そんなにやらかしているつもりはないんだけどな。
指折り今年になって作ったものを数えてみると、結構作っていることに気がつく。
地球の技術としては大したことのないものはかりだが、この世界では革新的なものがちらほらとある。
なので、もう少し作るのを控えようと心に留めることにした。
そんな感じで自分なりの反省をしていると、そろそろ教育日が始まるようで、ザーム牧師が祭壇前に立ち。子供達に話し掛ける。
「それでは皆さん。今日の教育日を始めさせていただきます。退屈な時間とは思いますが、皆さんにとっては必要な知識。今日の話を覚えて帰ってくださいね。では、今日の話はーーー」
そうして始まるザーム牧師の話。
話の内容は教訓目いた話から文字や数字の数え方。
子供達は幼いからか。それともザーム牧師の話が退屈なのか。あっちこっちで好き勝手なことをしているのもいた。
そうした子供がいると少し年長の子供があやしたりしていて、子供の世話をしている。
なんとなく幼稚園児と混ざって話を聞いている感じがするな。……年齢的に言ったら俺もそうなんだ。
ザーム牧師はそうした子供達に対して目くじら立てるような行為はせずに、笑顔で対応。
ザーム牧師は話を半分でも聞いてもらえればいいと思っているのかもしれない。
確か地球では、必要以上に民に知識を与えないようにしていたって時代が在ったと聞いたことがあるな。
ここではそれがないんだから、単にその余裕がないと言うことなんだろうな。
こう言ったことは生活水準が上がればまた違ってくるだろう。そうすると、っといかん。控えようと誓った矢先にこれだ。
それでも必要になった時にぱっと取り出せるように、今思い付いたものを心のノートに書き留めてはおく。
「と、以上が午前の分の話です。まだお昼までには、少し時間がありますね」
約一、二時間程度でザーム牧師の話が終わる。
それと、教育日の時は子供達に昼御飯を振る舞い。午後も受けて貰うそうだ。
でなければ、子供達など集まりはしないだろう。
「では皆さん。何か聞きたいお話などはありますか?」
まだ時間が在ると言うことで、子供達に何か聞きたい話はあるかと尋ねるザーム牧師。
するとあちこちの子供達から「英雄の話!」「魔法騎士!」「冒険の話!」と、様々は物語の話を聞きたいと声が上がる。
それは先程までザーム牧師の話をろくに聞いていなかった子供ですら発言していた。
そんな子供達の発言にザーム牧師は時間的にひとつのお話となりますと言うと、子供達は何やら真剣な顔となりーーー
「俺の話だ!」
「いいや! 私の話よ!」
「お前らの話より! こっちの話の方が断然良いに決まってるだろう!」
「「「「あぁん!? やんのかぁ!」」」」
途端に子供同士で、自分の主張を通すためにメンチの切り合いを始めた。
……なんだ、これは……?
先程まで幼稚園にでもいるかのようだったのに、互いの顔を突き付けている。
それだけで、今はもう族の喧嘩場にでも居るかのような殺伐とした雰囲気の場所となった。
もう一度言おう。なんだ、これは!? どうしてここまで雰囲気が変わる!?
俺が子供達の豹変に戸惑いを覚えていると。
「デュヴェルオブリスくん。私は食事の準備のお手伝いをしてきます。もし何かあったら声を掛けてください」
「いやいやいや! すでに起きてるじゃないですか!」
俺がそう言うもザーム牧師は「あの程度なら大丈夫ですよ。もし手が出るようでしたら教えてください」と言って、出ていってしまった。
……もしや、こんなことを毎回やってるのか?
次回の更新は2月10日となります。




