釣りの日
これは、三人で(おれ、ダイ、セイヤ)と港で釣りに行った話です。
ダイの仕事が7時に終わる予定だったので、セイヤをのせてダイを車で迎えに行き、仕事の終了とともに近くにある港へ向かいました。
その港は関係者以外立ち入り禁止の看板がかがげてありますが、地元の人が入り、テトラポットに上って釣りをするような場所でした。
友人と釣具の準備をしてテトラポットへ向かいました。やはり先客がおり、おじいさんが真っ暗な中、私たちに気づき挨拶をされました。
「こんばんわ」
おじいさんは俺たちにわらいかけて挨拶をしました。
俺と、ダイは「「こんばんわ」」と返事を返しました。
しかし、セイヤはそのおじいさんを見もせずに通過しました。セイヤはもとから無口で人見知りなので、べつだん、自分達も気にせずにテトラポットの奥の方へ進んでいきました。
それぞれ、釣りざおを沖へ投げ、普通に釣りをしていましたが、なかなかつれず、しびれを切らしたセイヤは釣りの仕掛けを変更してルアーに付け替えてました。
セイヤはその日、たまたま懐中電灯を忘れており、携帯の電気を使って仕掛けをつけてました。案の定というか、セイヤは仕掛けをつける際に誤って携帯をテトラポットの下に落としてしまいました。
その際に近くにいた俺は、スマホを落としたことに気づいて急いで、スマホを落としたセイヤのところへ行きました。
テトラポットの隙間は人が一人通れるようになっており、その下には、海面に浮かぶスマホが電気を上に向けてぷかぷかと浮かんでいました。
俺はその隙間が通れると思い釣りざおをセイヤに渡してテトラポットの中に入ろうとしました。
「いっちゃダメ!!」
すごく大きな声でセイヤが俺がいくのを制止しました。その大きな声に驚き、俺は硬直、遠くにいたダイも何事かと思ってリールを巻き取って俺たちのところへ向かってきました。
するとさっきまで浮かんでいたスマホがポチャンと不気味に響く音を立ててゆらゆらと沈んで行きました。ダイがついたときには一瞬、強くスマホの電気が発光して、その後、電気も消えてしまいました。
結局その日はスマホを落としてしまったので、そのままそれぞれの家に送り届けて解散となりました。
その二日後に、その港で溺死があったことがニュースに上がってました。死因はテトラポットの隙間に何かを落としてそれを取る際に足を滑らして溺れてしまったとのことでした。
自分達のことを重ね合わせてぞっとしました。
あのとき、もし、セイヤが止めてなかったら自分もそうなってたのかと思うと…