表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二度目の私  作者: 川木
85/172

80

恋人ごっこを始めて、わかったことが二つある。

一つ目は私が思っていたよりずっと葉子ちゃんは私が好きだということ。

そしてもう一つは、思っていたよりずっと、葉子ちゃんは変な子だということ。


例えばメール、彼女は毎日事あるごとにメールをして、一時間に一度は返信を求める。

理由を聞いてみた。


「葉子ちゃんって実はメール依存症?」

「恋人は一時間に一度はメールするもの。私は好きだからもっとする」


間違った認識だと思います。ていうか義務じゃないからね。


携帯電話が普及しだしたのは私が小学中学年くらい。前は高校入学時に買ってもらったけど今回は電車通学で遅くなることもあるからと、中学入学時に買ってもらった。他のみんなもだいたいそう。

私はあんまり携帯電話は使わない派だ。だって前のに比べて段違いに性能悪いし、使いづらい。着メロもカラオケしかないし、ネット環境もも未発達だし。

といっても死ぬ前もあんまりデコったりするのも好きじゃないし、着メロとか待受も昔にハマッて飽きてたから普通にノーマル設定だったんだけどね。


そんな女子力低めな私がいちいち10分に1回くるメール返信する訳がなく、一時間に一通だけ送ってる。

葉子ちゃんのメールは数が多いけど返信不要な報告メールっぽいのばっかなのでうざくもない。葉子ちゃんの好みとかわかるし、いつも通りの無表情で淡々と打ってるだと思うと何だか可愛いから、メールをやめさせようとは思わない。

ちょっと面倒だけど飽きるまで付き合ってあげようと思う。



他にも葉子ちゃんは変わってるところがある。たとえばデート。


「恋人なら最低三日に一度はデートする」


と言って律儀に二日おきの私の予定を聞いて遊びにくる。例年の二人との家族旅行中を除いたら基本的に予定はないから別に毎日遊んでもいいんだけどね。



そして極めつけはデート中。


「恋人はお弁当を用意する」


と言ってたから楽しみにしてた私に葉子ちゃんはコンビニ弁当を渡した。


「…手作りじゃないんだ?」

「私、料理は苦手」

「ちなみにその、指にやたら張られた絆創膏は?」

「苦手だけど頑張ってお弁当をつくったアピール」

「いや…だから、コンビニ弁当だよね」

「ん。でもこうやるもの」


何と言うか、葉子ちゃんの中には『恋人付き合い』というものに明確なルールがあるらしい。

最初は驚いたけどここまでくると逆に興味深い。一体何に影響を受けてるんだろう。面白いから付き合ってたまにコンビニ弁当を食べてる。これはこれで今まで殆ど食べたことないからたまにはいい。


と、こんな感じで葉子ちゃんが変わってる子なのがよくよくわかった。人との付き合いというのは、関係が変われば全く変わるものだ。

わかっていたつもりだけど、葉子ちゃんが甘えん坊で淋しがり屋な不思議系ワンコになるとやっぱり驚くし、新鮮だ。


「葉子ちゃん」

「ん」


名前を呼ぶと黒目がちの目がじっと私を見つめてくる。色素の薄い肩までの髪が私の前で揺れて、そそと近づいてくる。

告白以来キスどころか自分から手も繋いでこないし、抱き着くのも減った。恋人になる前はアプローチしても、恋人になるとやたらくっつかないもの、というルールがあるらしい。

触れない程度に近寄ってくる葉子ちゃんの姿はとても犬チックで可愛くて、頭を撫でる。喜ぶ顔が見たくて手を繋いでひく。

そんな風に、私から恋人らしいように振る舞っている。葉子ちゃんを見てたら心がほっこりする。

もしかしたらこれが恋なのかも知れない。



「って感じなんだけどどう思う?」


お兄ちゃんの部屋で、いつも通りダラダラしながら尋ねてみた。実はあと一週間で答を出さなきゃいけなかったりする。

夏休み早い。時間の流れって恐ろしいわー。


「いや…と、言われても…悠里ちゃんの気持ちは悠里ちゃんにしかわからないよ」

「頼りにならないなぁ」

「ごめん…」


しゅんと肩を落とすお兄ちゃん。

いや、そんな落ち込まれても困る。メンタル弱すぎじゃない?


「あ、じゃあさ、お兄ちゃんはどうなの?」

「え?」

「お兄ちゃんは、どうなったらその相手に恋してるってわかるの?」

「…言わなきゃだめ?」

「お願い」

「…恋、してる相手とは…まあ僕も基本的に、一緒にいたら落ち着くよ」

「ふむふむ」

「ただ他の友達と違うのは…他の人なら当たり前にできる、例えば隣に座るとか、手を繋いだりとかで緊張したりドキドキすることかな。それまでは当たり前に出来てたのに、恋をしてると意識した途端ドキドキして、自然に振る舞えなかったり」

「ふーん…」

「反応悪いね」


そう言われても…隣に座るだけでドキドキとかちょっと純情すぎるでしょ。お兄ちゃんもう24なのに。


「お兄ちゃんってさ、その…え…愛の営みはもうしてるんでしょ? それでもまだドキドキするの?」


エッチ、と口に出すのは何故か恥ずかしくて微妙な言い回しになってしまった。エッチスケッチワンタッチーとかなら言えるけど、基本的に私下ネタって口にしないから苦手なんだよね。


「……」

「お兄ちゃん? ちょっと、何とか言ってくれなきゃ恥ずかしいじゃん」

「…あ、いや…うん…まあ、今の相手はまだ、片思いだから…」

「ああ、そうなんだ」


最近話を聞かないと思ったらフリーなんだ。でも今の感じだとエッチしたら手を繋いだくらいじゃドキドキしないってことなのかな?

私は…うーん…ドキドキ、したことないなぁ。


やっぱり恋じゃないのか。何となくわかってたけど。


「あー…どうしよっかなー」


一緒にいて楽しいし、葉子ちゃんのことは好きは好きだけど、恋じゃないとわかってるので何だか葉子ちゃんの恋心を弄んでるようで気が重い。


「よし、とりあえずゲームしよっか」


とりあえず、現実逃避することにした。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ