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「へえ、まあいいんじゃない?」
否定も肯定もしてくれない。現実には都合よく答えをくれる人なんていないのです。
「悠里? 何変な顔してんのよ?」
「へ、変な顔って…してないよ」
「してるよー。ふふ、悠里ちゃんは優しいから、罪悪感とか感じてるんでしょ?」
「罪悪感? 何でよ」
「真剣な相手に真剣じゃない気持ちで答えてる、とか、決断を自分の都合で後に回して待たせてる、とかかな、多分。私はエスパーじゃないから本当のところはわからないけど」
「うぐ…」
わからない、と言いつつほとんどその通りだ。実代ちゃんエスパーすぎ。どうやったらそんなにわかるのか聞きたいけど、私がわかりやすいとか言われそうだから聞けない。
「なにそれ。悠里、はっきり言うわよ」
「な、なにかな?」
「真剣な相手に悠里はちゃんと考えて返事してるじゃない。やっぱり好きじゃないってフッてその子を傷つけたとして、悠里の意志を伝えただけじゃない。お互いに自分の気持ちを伝えてるのに罪悪感を感じるなんて、それは逆に失礼よ」
「……そう、だね」
それは、わかってる。恋愛には気持ち以上に大事なことはない。傷つけないために無理をしたってそれもまた誰かを傷つける。誰も傷つかない選択なんてない。だから本当に正しい正解なんてないって、私だってわかってる。
それでも傷つけたくない。私の決断で傷つけたくない。誰かに決めてほしい。それはただの逃げだってわかってる。
傷つけて、私が傷つくことを避けてるだけ。結局全て自分のための、自己中な考えだってわかってる。
「わかってる。わかってるけど…不安なんだもん」
でも私は弱いからすぐに逃げ道を探してしまう。私は悪くないって、落ち着きたい。私が悪いのではないかと思うと罪悪感で苦しくて、傷つけやしないかと不安で、悪いことになりそうで落ち着かない。
要は私は自分に自信がないんだ。
悪いことが起こった時に何とかできる自信もない。悪いことが起きないようにいい選択をする自信もない。
私はどこにでもいる人間で、何かをなせるとも思えない。この二人に比べて二倍は生きてるのに考え方も生き方も敵わない。
正解でなくても最善の選択をしたいけど、どうすればそうなるのかわからない。
「悠里、大丈夫よ」
「え…」
「悠里がもし何もかも失敗しても、私たちがいるじゃない」
「そうだよ。不安になる必要なんてないよ。恋愛なんて気持ちに素直になればいいだけなんだから」
「それで傷ついて取り返しがつかなくなったなら、なってから考えなさい。いちいちぐちぐち考えすぎなのよ」
「と…取り返しがつかなくなってからじゃ遅いんじゃないかな」
「本当に取り返しがつかないことなんて、人死にでもない限りないわよ。生きてればなんとかなるわ」
なんというか…慰めてくれてるのも言ってくれる言葉も嬉しいし、頼もしくて安心できるけど、本当に高校生ですか。
「…高校生なのに悟りすぎじゃない?」
「なに言ってんの。私を誰だと思ってるのよ」
「え…あ、彩お姉ちゃん…だけど?」
「その通り。私はお姉ちゃんなんだから、悠里より賢くて悟っていて大人びてるに決まってるじゃない」
「うんうん、彩ちゃんの言う通りだよ」
「…彩お姉ちゃん、カッコイイなぁ」
「ふん。当然でしょ」
ああ…彩お姉ちゃんは本当にカッコイイ。もう本当に、お姉ちゃんだなぁ。実代ちゃんは優しくて憧れなお姉さんで、彩ちゃんはカッコイイ自慢のお姉ちゃんだ。
二人とも優しくてたまに厳しくてはっきり駄目なとこは言ってくれる。いつも優しいけど甘やかしはしない、理想のお姉ちゃんだ。二人がお姉ちゃんで、凄く幸せだなぁ。
「まあとにかくさ、てきとーに恋人ごっこして楽しいなら続ければいいじゃない」
「簡単に言うなぁ」
「簡単にすればいいの。難しくしてるのは悠里自身よ」
「いつも誰にでも真面目なのは悠里ちゃんの長所だけど、考えすぎるのは短所だよ。考えるんじゃなくて、たまには感覚的に感じるのに任せてみたら?」
考えるな、感じるんだ、ですか。はぁ…んー…まあ、そんな風にしてみようかな。
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