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二度目の私  作者: 川木
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「あ」


また負けた。今やってるのは格ゲー。


「悠里ちゃん? さっきから明らかにぼーっとしてるよね? 考えごと?」

「あー…わかる?」

「そりゃ、普段は僕が負け越してるからね」


まあ、いつもはだいたい拮抗して10勝8敗くらいで勝つのに今日は1勝もできないまま気づけば5戦負けてるし、わかるか。


「まさかと思うけどテストのこと?」

「まさか。中学生のうちはまだ大丈夫だよ。ただ…あー、お兄ちゃん、同性愛について偏見ってある?」

「え…………………偏、見は…ない、つもり…だけど…悠里ちゃん、そうなの?」

「あ、違う…や、んー、違うよ」


まだわかんないけど。

お兄ちゃんはめちゃくちゃ動揺してるのでとりあえず否定する。私も一応偏見はないつもりだけど、身近な人だと動揺するよね。恵理ちゃんがそうでもそうなんだ、と思っただけだけど。優生にそうだって言われたらさすがに動揺しないでいる自信はない。

いや、同性愛が駄目とは思わないけど、すごいびっくりするのは仕方ないと思う。


「そう…えっと、それで、どうしたの?」


コントローラーは置いてお兄ちゃんと私は向かいあうよう座りなおす。


「私、学校の友達に告白されたんだ。それで一旦断ったんだけど…」

「だけど?」

「…頼みこまれて、返事は終業式の日まで持ち越しになったんだ。相談しても他の友達はみんな、好きな人いないなら試しに付き合えばって言うんだよね」

「…今、悠里ちゃんは迷ってるんだよね」

「うん」

「つまり付き合ってもいい、とも思ってるってこと?」

「うーん…葉子ちゃん、あ、その子のことね。葉子ちゃんは可愛いし好きだし、キスくらい平気でできるし、恋人をするのに問題はないと思う。でも別に葉子ちゃんに恋してるわけじゃないし、いつか傷つけるだろうし……それに私だって、青春を無駄にしたくないからできれば好きな人と付き合いたいし。ま…今はいないんだけどさ」

「……」

「お兄ちゃんはどう思う? 葉子ちゃんは私に好きな人ができるまででいいとも言ってくれてるし…付き合う方がいいのかな?」

「…正直に言っていい?」

「? どうぞ」

「僕は君を大切に思ってる。思いすぎてると自覚してる。だから客観的に正しいアドバイスはできない。あえて身勝手な個人的感想を言うなら…付き合ってほしくない」

「ほしくないって…」

「僕はまだ悠里ちゃんに子供のままでいてほしい」

「お兄ちゃん…」


すごい、お兄ちゃんにしては珍しい、押し付けがましい意見だ。今まで私の立場や思いを尊重して相談にのってくれてたお兄ちゃんがこんな風に自分の思いをいうなんて、初めてかも。


お兄ちゃんが一言付き合ってもいいんじゃない?とか言えば、付き合ったと思う。そのくらいにはお兄ちゃんの意見を信頼してるし、付き合う方に考えが傾いてもいた。

でもだから、お兄ちゃんがやめてほしい、なんて言うから、どうすればいいのかわからなくなってしまった。

お兄ちゃんは今まで私のお願いを全て聞いてくれてる、理想的なお兄ちゃんだ。だから私もできるだけお兄ちゃんの願うような妹でいたいと思ってる。

どうしよう。


「お兄ちゃん的には、私はいつまで子供でいてほしい?」

「え? えっと…勝手を承知で言うと高校を卒業するまで、かな。」

「……そっか」


それは…無理だ。いくらお兄ちゃんのお願いでも、それまでは待てない。だってもう、その頃には死んでる。

私にだって死ぬまでに恋をする権利はある。もちろんお兄ちゃんは私の死を知らないんだから仕方ないけど、とにかく、そのお願いは聞けない。


「お兄ちゃんが、私を大切に思ってるのはわかった。ありがとう。でもそれはできないよ。だって、私はもう子供じゃないから」

「……変なこと言ってごめん」

「ううん。お兄ちゃんの言いたいこともわかるわ。私だって、優生のことはつい小さな子供みたいに扱っちゃうもの」


だからそんなにも、我が儘を言ってしまうくらいに、私を大切に思ってくれてるのは素直に嬉しい。


「…付き合うにしても、そうじゃないにしても、とにかくよく考えた方がいいよ。どちらにしても今まで通りではいられないだろうしね」

「そ…そう、ね。そっか…うん、ありがとう。じゃあ今日はもう帰るね。よく考えてみる」

「うん」


やっぱり相談してよかった。お兄ちゃんの気持ちを知れたのもあるし、何より、友達に戻れないことを考えてなかった。

あんなこと言ったけど、私はまだまだ子供だなぁ。











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