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ガールズラブタグ追加。
葉子ちゃんがお泊りすることになりました。
前もなんだかんだで雑魚寝になったりしたから客間は用意せず、暗黙の了解で私の部屋に布団をひいた。
「悠里、隣、いい?」
何故か私のベッドにインしてきた。いいけどね。床の布団はスルー、か。…いいけどね。
「ん、悠里…」
「葉子ちゃん?」
ぎゅう、と私の腰に腕を回してきた葉子ちゃんに私はとりあえず抱きしめ返して頭を撫でてあげながら問い掛ける。
「どうしたの? 何か嫌なことでもあった? 話してごらん」
「…ん…」
私の胸に顔を押し付けながら葉子ちゃんは小さな声で言う。
「悠里…最近るいばかり構う」
「ああ…寂しい思いをさせちゃったかな。ごめんね」
「いい。るいも、友達だから、仕方ない」
「そうだね」
「ねぇ」
「なに?」
ぐい、と私にくっついたまま顔をあげる葉子ちゃんはなんだか悲しそうに見えた。いつもよりほんの少しだけ眉が下がってて…いや、悲しい、じゃない? 不安?
「悠里は…るいのこと友達?」
「もちろん」
「…私のこと、も?」
「もちろん。だーいじな、お友達だよ」
「おとも、だち…おともだち……」
「どうかした?」
一度瞼を伏せて何かをつぶやいてから、ぱちっと葉子ちゃんは目を開いて私と同じ頭の高さまであがって、言った。
「るいと同じじゃ、嫌。私、悠里が大好き。私を、特別にして欲しい」
「え………とくべつ?」
「特別」
予想外の展開に棒読みに言葉を繰り返すと葉子ちゃんは頷いた。
くっついている葉子ちゃんの胸から、ダイレクトにはっきりと、彼女の心臓の音が伝わってくる、
「……恋人にして欲しい、という意味、だよね」
「…多分」
「多分?」
「…よく、わからない。でも、悠里が好き」
そう言って身じろぎするように動いた葉子ちゃんは、私の唇に押し当てるようにキスをした。
「キスしたい、好き。ドキドキする、好き。私、自分のことよくわからない。でも、悠里が好きなのは本当だよ。だから、特別になりたいの」
「……私は、葉子ちゃんが好きだよ。でも、ドキドキはしないよ。だから…恋人にはなれな−」
「好きな人、いる? ドキドキする人、いる?」
私の言葉を遮ってさらに尋ねてくる葉子ちゃん。珍しくて、戸惑う。
「い…いない、けど…」
「じゃあ、今だけ、悠里に本当の特別ができるまででいいから、私を特別にして」
「……」
断るべきだ、と、思う。
でも彼女の一生懸命な言葉に揺れてしまう。
ドキドキドキドキと、彼女の早い脈拍を感じさせられて、動揺せずにはいられない。人間はこんなに早く、運動をしなくても感情だけで心臓を動かせたんだ。それはとても新鮮な感じだった。
どうして断らないといけないのか一瞬わからなくなった。
私が彼女に恋をしていなくても、私は彼女が大好きだ。気のすむまで付き合ってあげればいい。どうせ死ぬんだから。
…いや、それは違うだろう。私は死ぬことが決まっている人間だ。だから恋人をつくるとしても、私が死んでも立ち直れることが前提じゃないといけない。
理想として、私は人生分好きになれて、相手は半分体目当てでそこまで私を好きにならないくらいがいい。
葉子ちゃんは…どうだろう。本気じゃなくて、期間限定でいいと都合のよい条件だけど、そもそも私は彼女を好きになれるかな。
一年付き合って、でも女同士だからそんな目で見たことはなかった。女の子しかいない学校では珍しくないのか、何人かそういう人は見たことはある。でも少なくとも親しい人で付き合ってる人はいないし、自分には関係ないと思ってた。
女の子同士ははしかみたいなものだと、彩ちゃんは言っていた。彩ちゃんには許婚がいるから、遊びでも付き合わないらしいけど、告白されるのもよくある話だと聞いた。
彩ちゃんは可愛いからわかるけど、でもまさか、私を好きだという人がまだ世界にいるなんて思わなかった。それも葉子ちゃん。普通に可愛いし、クールだって後輩に噂されてる人気ある子だ。
「どうして、私?」
「…悠里が、悠里だから」
「……ちょっと、考えさせて。そう…試験が落ち着いて、終業式の日、返事をするわ」
「…わかった。待つ」
葉子ちゃんは頷くと布団にもぐるようにして、また私の腰に腕を回して胸に顔をすりつけた。
「お休み」
くぐもった挨拶に、頭を撫でながら返す。
「お休みなさい」
「ん」
目を閉じた。
ああ、そういえば…私、今のファーストキスだ。
そんなことに気づいたけど、私の心臓はドキドキしなかった。
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