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期末試験1週間前。るいちゃんに試験勉強の具合ついて尋ねてみた。
「え? 試験勉強? なに言ってんの、悠里。試験なんてのは実力を計るものなんだから、直前になってあれこれと余計に勉強する必要なんてないんだよ」
「そういうことは普段勉強してから言えることだよ」
「大丈夫、あたしにはこの足があるっ。赤点でも部活に出てるっていえば補習も回避余裕さ」
駄目な子がいる。
ていうかもう一週間前にもそろそろしなよって促したのに。目をそらしながらの返事だから期待はしてなかったけど。
「今日から毎日勉強をしましょう」
「やーだーー」
「最低限でいいから」
「やだったらやだい!」
「…言い方を変えます。勉強しろ」
「うー……うむむぅ、なんだよぅ」
頬を膨らませて拒否するるいちゃん。
中間試験では私の誘いから逃げて全て赤点だったのに、全く反省してないらしい。
仕方ない、説得しよう。乗りかかった船だ。るいちゃんは単純なのでおだてる方向でいこう。
「あのね、るいちゃん。るいちゃんが将来スポーツ選手になったとしてもだよ? 最低限の学力は必要だよ」
「何でさ」
「るいちゃんは可愛いよね、美少女」
「…ま、まあ、そんなことはあるかも知れない」
一瞬キョトンとしたるいちゃんだけど照れながらも頷いた。
「きっとスポーツ選手として活躍するころには美人すぎるランナー!として話題になるだろうね」
「うんうん、その推測は致し方ない」
腕を組んで頷きだした。かなりのってきた。よしよし、
「すると引退か、現役でもシーズン外でテレビから取材、出演、なんて話が引っ切りなしにくるでしょ」
「まー、そうなっちゃいますよね」
「テレビに出ると、さらに話題になってバラエティに呼ばれたりしてね」
「あたしって華があるからねぇ」
「で、クイズ番組にも呼ばれたりして」
「…ん? まあ、そういうのも最近あるよね」
「すると勉強をしないまま大人になったお馬鹿なるいちゃんは問題に答えられないわけだ。イイニクつくろう鎌倉幕府!とか言って笑われちゃうわけだ」
「さ、さすがにそれくらい知ってるって! イイニクつくろう…つくろう、平安京?」
…今のは例えで、まさか本当にわからないのは予想外なんだけど。そんな不安そうに聞かれても間違いは間違いだから。
「……で、日本中からお馬鹿キャラ扱いされちゃう、と。これでもまだスポーツ選手に学力は必要ないって言う?」
「う、うぐぐ……や、やればいいんでしょ、やれば! ……で、今の、あってた?」
「…イイクニつくろう鎌倉幕府、くらいは知ってると思ったんだけどなぁ」
「クニ! ニクじゃないのか…」
がっくりと肩を落とするいちゃんに、一抹の不安を感じる。
本当に私、この子を赤点脱出させてあげられるんだろうか……いや、いや! へこたれるな私! 決めたからにはベストを尽くす!
「そう落ち込まないで。ちゃんと教えるから。今日から部活ないしみっちりやるよ」
「うん…あー、でもやっぱり勉強やだー」
「ちゃんとこまめに休憩とって、おやつ食べさせてあげるから。るいちゃんならできるって」
「おやつ!?」
「うん。さすがにるいちゃんの大食いに合わせるとすぐにお金なくなっちゃうから、手作りになるけど。ポテチやクッキーやマフィンくらいならリクエストに応じて食べ放題になります」
「やる! 勉強する! 今日からする! 今すぐする!」
「やるのは放課後ね」
やはり最終的におかしでつることになったか。
うーん。できれば自発的にやって欲しかったけど、まあ仕方ない。とにかく頑張ろう。
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