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「ん…ふわぁあ…あ、ああっ」
目が覚めて欠伸をしながら起き上がると驚愕の事実が目に飛び込んできて、思わず声をあげた。
「え、な…なに?」
キョドるお兄ちゃんに私はびしぃと指をつきつける!
「アイス! 私の分も食べたでしょ! 酷い!」
これみよがしに二個も空袋並べて! しかも溶けたのかべちょべちょだし!
「酷すぎる!」
「ご、ごめんね。気持ちよさそうに寝てたし、冷蔵庫に戻しに行くのも面倒だし溶けたらアレだから…つい」
「起こしてよぅ」
うう。もうっ。暑い!
額に流れる汗を拭って肩にかかる髪を払って、どんっと乱暴に床に座り直してジュースを一気飲みする。
「はあっ、ぬるいっ。てか薄いっ」
「氷、いっぱいいれてたから…」
「もー。ていうかもう2時間もたってるじゃん。起こしてよー。うー」
「疲れてるみたいだったし」
「納得いかない」
夜ならともかく昼に遊びに来たのに、これは優しさじゃない。……いや、そりゃ私だって遊びに来た子が寝ちゃったからってすぐには起こさないけどさぁ。でも私は起こしてよ。
「本当、ごめんね。あ、今からアイス買いに行こうか」
「暑いからいやよ。お兄ちゃん一人で買って来てよ」
「んー…じゃあ、夜になったら行こう。二つ買ってあげるから、ね?」
「…うん、わかった。それで許してあげる」
「うん。じゃあ、ゲームの続きする?」
「その前にジュースお代わり。氷たっぷりねっ」
「はいはい」
お兄ちゃんが席をたってから私はゲーム機にさっきとは別のソフトをいれる。前にやってたRPGの続きをしよう。
ふぅ……ううん、寝起きとはいえ、ちょっと我が儘な発言しちゃったな。相手がお兄ちゃんだとつい我が儘言っちゃうんだよね。お兄ちゃんは年上だからかな。
小中学生のお兄ちゃんは見たけど、前回は終始普通に年上と認識してたから、やっぱり当たり前にお兄ちゃんは年上だ。
「ただいま」
「おかえりー」
用意されたジュースをまた一気飲み。
「はーっ、美味しい」
寝てる間に結構汗かいちゃったし、喉がかわいてたからつい。
「えっと…お代わり持ってくるよ」
「ごめんね、お願い」
さて、喉も潤ったし、ゲームするかなー。
○
「悠里ちゃん、そろそろ晩御飯の時間じゃない?」
「ん…そう? んー…じゃあこのまま真っ直ぐで次の街だしセーブしておいてくれる?」
「いいよ」
「ありがとう。到着して何かイベントがあったら教えてね」
「わかった」
時間は6時半。我が家ではだいたい7時半から晩御飯が始まる。手伝いをするにはそろそろ戻らないと。
コントローラーをお兄ちゃんにパスする。
「んじゃ、あ、アイス、忘れてないでしょうね。また後で来るから」
「わかってるよ」
「ならよし」
窓を跨いでサンダルを履いて、僅かな屋根の隙間を飛び越えて自分の部屋に入る。
「よ、と…あ」
跨ぐ時に謝ってサンダルを片方滑らせてしまった。屋根を伝って庭に落ちた。ありゃりゃ。
「はぁ」
メンド。後で拾わなきゃ。
とりあえず一階におりてダイニングを覗くとお母さんはテレビ見てた。
「お母さん」
「ああ、もうそんな時間? いつもありがとう」
「今日もご教授お願いします。とりあえずメインは朝買った鮭として、あとは適当に煮物でいいよね。あ、ひじきある。あとちくわがそろそろだしいれた方がいい?」
「んー。任せるわ。もう教えることもないし、最近味見しかしていないし、悠里ちゃんは免許皆伝よ」
「そう? んー、なら頑張るよ」
「ねぇ悠里ちゃん」
「なに?」
「三人目ができるかもって言ったら、怒る?」
「!!!? …………お、女の子がいいな」
「そう。なら頑張るわね」
今からかっ。
今、今凄い動揺したの馬鹿みたいじゃない!?
…いや、いいんだけどね。ただ、前はそんなのなかったし、びっくりした。優生が生きてることが、こんなところにも影響するんだ。
…本当、優生が生きててよかった。私が死んでも、さらに新しい命があれば、悲しむ暇もないだろう。
「でも急にどうしたの?」
「急じゃないわよー。去年、優生に部屋を上げてから考えてたの」
「ふーん…そういえば、なんで私はちゃん付けで優生は呼び捨てなの?」
「本当は優生もちゃん付けしたいのよ? でも男の子にちゃんは大きくなると恥ずかしいだろうってお父さんが言うからね」
「はぁん」
なるほど。でも優生君とは呼ばないんだ? まあ優生は可愛いからちゃんの方が断絶似合うけどね。
さて、まずは下ごしらえから、と。
○
次ちょっと飛びます。




