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それからお昼食べて、葉子ちゃんと村を一周ぐるーっと半日さけて散歩して、帰って夕ごはん食べたらのんびりだらだらお話して結局葉子ちゃんの部屋で寝た。
次の日は8時に起きて朝ごはん食べて、葉子ちゃんの夏休みの宿題を見た。
「そういえば宿題の調子はどう?」
「? やってないよ」
「え…なんで?」
「? どうしてお休みなのに、勉強しなきゃいけないの?」
「いや、宿題…もしかして葉子ちゃん、普段から宿題しなかったり?」
「もちろん」
「力強く言われても」
「大丈夫。怒られるだけ」
自信満々に言われた。全く大丈夫じゃない。どうりで、私が教える時にいつも基本的なことを聞かれるわけだ。全く勉強をやる気がない。
さらに聞いて見ると観察日記や工作くらいはやるけどそれ以外の問題集とかは全くやってないらしい。どうも宿題はやらない主義!ではなくて、単に難しくて面倒だからしないだけらしい。
「……宿題はやりなさい」
「どうして?」
「やらなきゃ馬鹿になるから。葉子ちゃんが納得するまで教えるから、頼むから宿題はして」
「…わかった。悠理が教えてくれるなら、する」
「うんうん、葉子ちゃんは素直ないい子だね」
てな感じのやりとりはあったけどまあ概ね問題もなく、葉子ちゃんの勉強を見た。
お昼はお世話になってるお礼もかねて私がつくり、午後はクラゲの絵を描くというので私もお絵かきしてだらだらしてたら3時にスイカをもらった。
スイカに塩をかけたことはなかったけど、かなり美味しい。家に帰ったら優生にも教えようと思う。
それから夕ごはんも手伝った。
あの二人との旅行は豪華で様々なイベント目白押しでそれはそれで楽しいけど、旅行というよりホームステイみたいな感じもするこういう旅行も悪くない。
私が葉子ちゃんの家に来て5日目、玉恵ちゃんが来た。
「いらっしゃい…なんて、私が言うのも変だけどね」
「は…悠、里? え? なんでいんの?」
「聞いてないの?」
「聞いてない」
まあ、私も玉恵ちゃんが毎年この日に来ると聞かされたのは朝の話で、おばあちゃんとおじいちゃんは出かけるから迎えてやってと何故か孫をスルーして私が頼まれた。
ちなみにおばあちゃんとおじいちゃん、最初は名前にさんをつけて呼んだけど不評な上、生き別れた祖父母と再会したくらいの愛情をこめておばあちゃんおじいちゃんと呼ぶように、と言われて面倒になって普通に自分の祖父母と同じように呼ぶことにした。
それからは玉恵ちゃんに振り回される感じで遊び回り、私は惜しまれつつ家に帰った。
○
「悠里」
「ん…あれ、…寝ちゃっ、てた…のか」
「くすくす。どんな夢を見てたの?」
「え…私、なんか言ってた?」
「もう食べられないーって言ってたわよ」
「それは嘘でしょ」
「ええ、嘘よ」
くすりと、大人みたいに彩ちゃんは笑って私の頭を撫でた。優しく髪を梳かす指先がくすぐったくて、照れてちょっと笑った。
小さく欠伸を噛み殺しながら上体を起こす。
家に帰った翌日に、二人が遊びに来たんだけど、話の途中で寝ちゃってた。ベッドの上だったし、ちょっと疲れてたのかな。
「悠里、涎ついてるわよ」
キスされた。涎のあとを口でふくとか、お母さんかよぅ。
「うあ…やめてー。お嫁にいけなくなるぅ」
「そうなっても私が面倒見てあげるわよ」
「甘やかしちゃ駄目ー」
「ふふ、悠里ちゃんは寝ぼけていても真面目さんだね」
「うぬ…ん。ちょっと、顔洗ってくる」
「いってらっしゃい」
部屋を出て洗面所で顔を洗う。
「んん…うん」
よし目が覚めた。
「ただいまー」
優生の声だ。足音が近づいてくる。
「あ、お姉ちゃん」
「おかえり」
「ただいま」
場所を変わると優生が手を洗ってうがいをして顔も洗う。昔教えた通りだ。よしよし。
「? なに?」
「別に? 今彩ちゃんと実代ちゃん来てるけど一緒に遊ぶ」
「いらない。あの二人苦手。僕部屋にいるけど、あの二人連れてきたりしないでよ」
「はいはい」
「はいは一回」
「サー、イエッサー」
「……」
スベった。スルーの上無視して立ち去られた。失意のまま部屋に戻ることにした。
「ただいま」
「おかえり。今から何する?」
「あと2時間くらいは遊べるわよ」
「んー…とねぇ」
私は考えながらまた彩ちゃんの隣に座った。
「あ、悠里ちゃん、気をつけないと」
「へ?」
「パンツ見えたよ」
「マジで? うっわ、今度こそお嫁に行けないわー」
にっこり笑って言われた。ベッドの前のクッションに座ってる実代ちゃんからは位置が低いから見えても仕方ないと思うけどとりあえずそう言っておく。ていうか、一応短パン履いてるしどうでもいいけど。
中学に入ってスカートの制服になってからは私服でも短パン履くようにしてる。
「そうだ。今から悠里ちゃんに、礼儀作法を教えてあげようよ」
「お、いいわね。決定」
「んー、じゃあ、よろしくお願いします」
○