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二度目の私  作者: 川木
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「悠里」


明日から夏休みだ、という終業式の日、鞄に荷物をいれていると気がつけば隣に葉子ちゃんがいた。


「葉子ちゃん、音もなく立たないでよ。いつも言うけどびっくりするよ?」

「驚いて見えない」

「反応が鈍いタイプだからね」


心は驚いても体の反応が一瞬遅れるんだけど、その遅れた一瞬で状況を把握して表に出す反応がなくなるから傍目には驚いてないように見えるんだよね。

ちなみに一瞬で理解できないほどだと一瞬遅れてから驚くんだけど、わざとらしいと言われたことがある。


「で、どうかしたの? 今日は部活ないけど…」


まあ、葉子ちゃんが部活のお迎えに来てくれたことはないんだけどね。大抵先に行って更衣室で待っててくれるし。


「…夏休み、遊びに来て」

「ん? ああ、そうだね。もちろん。玉恵ちゃんとも約束してるし」

「玉恵の家じゃなくて、私の家に来てほしい」

「葉子ちゃんの家?」

「夏休みの間、私は毎年おばあちゃんの家に行く」

「……んん?」


もしかしてもしかして、葉子ちゃんの夏休みの実家帰省に着いてこないかと誘われてる? しかも夏休み丸々?


「いや…私、友達と一週間は旅行に行くから、夏休み丸々はちょっと」

「じゃあ、私も一週間にする。一緒…駄目?」

「……ちょっと、待って」


えーっと、夏休みは約5週間。夏休みの宿題はドリル系はもうやったから宿題の心配はいらない。だからまあ、大丈夫か大丈夫じゃないかなら大丈夫だけど。


「そんな突然訪ねたら迷惑だし…子供だけで決めるわけには…」

「家は大きい」

「そういう問題じゃ」

「家はおばあちゃんとおじいちゃんだけで、友達は連れてくるよう言われてる」

「あの…でも一週間も…」

「…友達と一週間旅行行くのに、私は駄目? 私は、友達じゃない?」

「と、友達だよ、もちろん。えっと…じゃあ、とりあえず行くってことで。その家の電話番号聞いてもいい?」

「んっ。うん。…楽しみ」

「…そうだね」


葉子ちゃんがこんな時に限って微笑んだ。それを見せられると、多少無理矢理でもいかざるを得ないよなぁとか思う。









「うーん…ちょっと下がったね」

「……うん」

「まあ、わからないとこあったら言ってよ。教えるから」

「…だって」

「ん?」

「だって最近、お姉ちゃん帰り遅いし。忙しそうだし」

「……」


成績表を見せてもらって軽ーく注意すると逆に責められた。あうあう。

確かに、部活入ったし? 歩いて10分の小学校より距離あるし? 意識して小学校時代より付き合いよくしたから? 皺寄せとして優生と遊んだり勉強教える時間は減ったと思う。


でも私が中学生になってからは優生が部屋に遊びにきてくれなくなったし、だから私も部屋を訪ねるのは遠慮してたんだけど。

優生と一緒なのに慣れた私は一人だとちょっと寂しいので、最近の夜はだいたいお兄ちゃんの部屋に入り浸ったりしてるけど。…優生もちゃんと寂しいと思ってくれてたんだなぁ、と思うときゅんとした。


「優生、遠慮せずに私の部屋に来てくれていいんだよ? 我慢しなくていいんだよ。私はいつでも優生に限りウェルカムだからね!」

「が、我慢とか、してないし。僕はただお姉ちゃんに気をつかってるんだって」

「優生ー」


とりあえず抱き着いた。


「お、お姉ちゃんっ。抱き着くのやめてってばっ」


顔を押さえられて拒否された。


「ぐぬぬ…女の子の顔を押すなんて酷いわっ。お姉ちゃんは優生をそんな子に育てた覚えはありませんよっ」

「お姉ちゃんにしかしないもん! お姉ちゃんひつこい!」

「ひつこい?」

「言ってない! しーつーこーいー!」


訛った優生も可愛いなぁ。

でも抱き着くのは駄目だし私を拒否気味なのに、だからって離れすぎても怒るのか。中々難しい。

これが思春期かっ。生殺しだ。優生は可愛くて可愛くて堪らないレベルの愛くるしさなので一緒にいると抱きしめてキスしたくなるのに。

せめて同性だったらくっつくのは許されたのになー。


「まあ夏休みだし、これからいっぱい一緒に遊ぼうね。プールに行ったり花火したりして、あと宿題も教えるからね」

「…お姉ちゃんが、どーしてもしたいっていうなら、付き合ってやんよ!」


ツンデレ?

なんでもいいけどね。今年の夏は忙しくなりそうだなー。











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