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「悠里ちょう愛してる!」
抱き着かれた。
「愛してるでー」
挟まれた。
「あ、愛してますー」
ついにおしくらまんじゅうになった。
今日はテスト返却一日目で、よかったらしく玉恵ちゃんが抱き着いてきてそれに理恵ちゃんがのって、流されて桃子ちゃんまで抱き着いたからものすごいことになった。ハーレムか。
とりあえず離れさせる。
「で? 何点だったの?」
「見よっ」
英語が68点でちょっと残念だけど、国語と古典と理科は80点台だ。
「おお、古典頑張ったねー」
「えへん。なーんてね。全然わけわかんないのを悠里が教えてくれたからねっ。お礼に今度何か奢るよっ」
一応、玉恵ちゃんに教えたのは古典と数学と英語だ。英語は若干残念だけど、本人がやる気だった分古典には力をいれて教えたので報われて嬉しい。
「うちも結構よかったわー。なんかぁ、中学からぐーんて難しくなったから心配やったけど、なんとかいけたわ。悠里ちゃん教え方上手やなぁ」
「私も、ノートも見せてくれて、本当にありがとうございました」
「どういたしまして。私で役に立てたなら光栄だよ」
まあ、ちょーっと大変だったけど。多人数につきっきりで教えたの初めてだし。
でも三人ともなんとかなったみたいでよかった。あとは葉子ちゃんだけど…わかってくれたのか、正直自信がない。
「あとあのお兄さんも、結構教え方うまかったよね」
「まあ、先生だからね」
「えっ、教師なの!?」
「うち、てっきり学生かと思てたわぁ」
「まだ一年目だからね」
「あの…」
「どうしたの? 桃子ちゃん」
「悠里さんは、お兄さんのこと好きなんですか?」
「…本当に、みんなコイバナ好きだね。違います。本当にただのお兄ちゃんだから」
「そうですか…」
残念そうにするな。
てゆーか…女の子たちは可愛くて好きだけど、こういうとこはうっざいなぁ。何でもかんでも恋愛に結びつけて。私も恋人はつくりたいけど、知り合いと無理矢理くっつけるのは違うよね。
「とりあえずぅ、これからもよろしくね、先生」
「と、とりあえず、他の教科も戻ってきてからね」
午後は体育で終わりだから、明日かな。あ、そうそう。葉子ちゃんにも後で聞きに行かなきゃ。
○
「葉子ちゃん、こんにちわ」
「こんにちわ」
「テストどうだった?」
「ん」
葉子ちゃんは無表情のままだけど、どこか誇らしげにピースサインをして見せた。
おおう、よっぽどよかったのか。
「何点何点?」
「見て」
鞄からテスト用紙を出してくれた。数学と英語と国語と社会が返ってきたらしい。受け取る。
手が空くと再びピースサインをしてきた葉子ちゃんに苦笑しながら点数欄を見る。
48点。31点。56点。50点。
「……よかった、の?」
「国語、最高点」
「…小学校の時はだいたい何点くらいだったの?」
「20くらい」
それならまあ、赤点じゃないだけレベルアップしてるのかも知れないけど……それでもあれだけ教えてこれでブイサインとか…ちょっと、凹む。
というか……小学校で20点は、低すぎない?
「また、教えてくれる?」
「もちろん。むしろお願いします」
「? よろしく」
この子は駄目だっ。私が教えなきゃ駄目だっ! 私がついてなきゃ…赤点とってしまう。
もうわかった。葉子ちゃんは自分から勉強しないタイプだ。興味のないことは全くしないんだ。この子は補習とか追試を言われても絶対勉強しない。どころか無視して行かない図が想像できて仕方ない。
知り合ってこうして友達になった以上、私がしっかりサポートしなきゃ!
私は密かに使命感に燃えながら、無表情ながら機嫌のよさそうな葉子ちゃんと部活のためプールに向かった。
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