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「4人とも、その荷物どうしたの?」
来週からテスト本番という週末、何故か一旦バラけてから改めて私の家にという流れになり4人を玄関で迎えたんだけど、4人とも大荷物だった。
「え? お泊りセットだけど?」
「え?」
「あれ、悠里ちゃん知らんかったん?」
「ん」
「私たち、おばさんに誘われたんですけど…あ」
振り向いた。
「サプラーイズッ」
ご丁寧に『ドッキリ大成功』と書かれたスケッチブックを掲げた母がいた。
「……」
私もサプライズ好きだけどね。別にドッキリでもないよね。それ書いたのは私だからあえて言うけど使い処間違ってるよ。
「まぁまぁ、試験前だし追い込みかけなきゃだし、いいじゃん」
「私はいいけど、みんなそんなに勉強したいの?」
「ややわぁ。方便に決まってるやん」
「目的の8割はもちろん、遊ぶに決まってんじゃん」
「勉強もしますけど…えっと、とりあえず今夜はお世話になります」
「ん、よろしく」
「…いいけどね」
まあ、いいか。
よく考えたら私、学校の行事かあの二人以外とお泊りイベントしたことないや。お兄ちゃんの部屋で寝落ちした時は朝になったら自室に戻ってるからノーカンだしね。
…? あれ、なーんか忘れてる気もするけど。まあ、いいか。
○
「さて、勉強しようか」
「えー? まずは腹ごなしにトランプでもしようよ」
「夜にするからって夕方は遊んでたでしょ」
「むー」
「あの、やっぱり少しは勉強、した方がいいと思います」
「そやなぁ。いつもくらいはした方がええやろ」
「二人まで。…仕方ない、やるか」
夜7時を過ぎてからようやく私たちは勉強することになった。
私の部屋は手狭とはいえ5人で勉強できなくはないけど、私が普段使う丸い机ではスペースが足りないので折り畳みの四角い机を足してやってる。ちなみに小学校入学畤にもらった学習机はただの荷物置きになってる。
机や教科書を用意してそれぞれ集中しだす。私は普段に自分でまとめ直してるまとめノートを見て復習しながら、みんなに質問されればそれに答えていく。
一番質問が多いのは桃子ちゃん、僅差で玉恵ちゃん、たまにあるのが理恵ちゃんで、質問してこないのが葉子ちゃん。
でも葉子ちゃんは別にできるわけでなく、問題解いてるノートを見ると間違ってるのを放置したまま次にいってるだけだったりする。報告してくれないので葉子ちゃんには最後にまとめて教えてる。
コンコン、と窓がノックされた。
「? 今なんか音しなかった?」
「あ…」
忘れてた。今日はお兄ちゃんと遊ぶ約束してたんだった。
今週は根を詰めたから、土日あるから今日は気合いいれて遊ぼうと……で、来ないから迎えにきたと。
しまったなぁ。みんなに教えてるのに私は遊ぼうとしてたとか…まあ、事実だしばれたらばれたで仕方ないか。
「はーい」
返事をしてカーテンを開け、窓を開ける。
「こんばん、は…お邪魔だったかな?」
「そんなことはないけど。ごめん、待ってた?」
「うん…まあ。勉強会、今日は泊まりなんだ」
「うん。ごめんね」
「いや、学生は勉強優先だよ。じゃ、頑張ってね」
「ちょーっと待ったぁ!」
とりあえずお兄ちゃん帰してからみんなに軽く説明しようと思ったんだけど何故か玉恵ちゃんに止められた。
「なに? 誰?」
「隣の高文お兄ちゃん。今日は一緒にゲームする約束だったんだ」
「どうも、はじめまして。秋吉高文です」
「何で窓から来はったん?」
「昔からこうしてたから、つい。邪魔してごめんね」
「ねぇねぇ悠里、もしかして彼氏?」
「だからお兄ちゃんだって」
「えっと、とりあえず僕は戻るね」
「まあまあまあ、いいじゃないですか。遊ぶつもりだったなら時間はあるでしょう? あたしらと話しません?」
「そやそや。ついでに、せっかくやしお兄さんも教えてーな」
「私も…その方がいいと思います」
「ん、気になる」
「葉子ちゃんまで…」
…どうしよう。みんなめちゃくちゃ興味津々だ。
困っているとお兄ちゃんに肩を叩かれた。
「悠里ちゃん、僕でよければ教えるよ」
「…お願い」
もうこうなるしかない、よね。その分私の勉強時間も増えるし、これでいい…よね?
○