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「あ、あの…」
「ん? どうしたの? 桃子ちゃん?」
「…あの……ごめんなさい。なんでもないです」
「え、き、気になるじゃん。言ってよ」
「…さ、さっきの授業…わかりました?」
「ん? …ああ、小学校に比べると授業のスピード早いよね。ノートとれなかったなら見せるから遠慮せずに言ってね」
「あ、ありがとうございます。でも…そ、そうじゃなくて……全部、小学校で習ってました?」
「あー…なるほど、理解した」
この学校は基本的に一貫で外部入学少ないからか、小学校卒業時に他の学校より進んでる分がそのまま前提条件でみんな知ってるものとして授業が始まった。
桃子ちゃんは習ってないのに習ってるみたいに授業されて戸惑ってるんだろう。
「私は…予習してたから。大丈夫。わからないところがあったらいくらでも聞いて。教えるから」
「あ…ありがとうございます。じゃあ今、あの…いいですか?」
「もちろん。どこがわからなかったの?」「今の、これ…なんですけど」
でも、入学試験でこの問題あったけど…どうしたんだろう? 他の子は持ち上がりだからわからなくても中学にこれるけど、桃子ちゃんはわからないと入学できないはずなんだけど。……他の点数がよかったのかな。
「あ、悠里、さっきのわかったの?」
「うん? うん。玉恵ちゃんもわからないとこあるなら教えるよ?」
あ…この発言はちょっと生意気かな? 言いすぎた?
「本当? 私昔から算数嫌いなんだよね。分数からわかんないし。ちょっと教えてよ」
「玉恵ちゃん、前にうちも教えたのにまだ理解してへんかったん?」
「理恵の説明は難しくてわかんないの」
「簡単やのになぁ」
ほ、よかった。
二人は私の物言いを気にしなかったらしい。気をつけないと。前の私ならわからないとこはわからないままにしちゃ駄目、教えてあげるから、とか言ってたよね。武君にはそう言っても受け入れられてたけど、普通ならうざいよね。私は同い年なんだから。
「私でよければ、教えるよ。まあ…理解させてあげられるかはわからないけどね」
「あたしの座右の銘は当たって砕けろだから大丈夫よ」
「…それ、大丈夫なんですか?」
○
「葉子ちゃん」
「ん」
葉子ちゃんは口数が少なくて察しなきゃいけないことが多いけど、葉子ちゃん自身が凄く察しがいいことに気づいた。
さっきもゴーグル忘れて「あ」って言った瞬間「待つ」って言われたし。とってくるのを待ってるよって意味だって気づくのに2秒かかったけど。
「どう?」
「ターン、高い」
「そっか。次、やるよ」
「ん」
交代してストップウォッチを受け取る。
今は100メートルのタイムを計ってるところだ。私と葉子ちゃんはある程度できるから色々計って適性を見るらしい。
他に5人新入部員はいるけどフォームの矯正とか、カナヅチ克服に入部した子もいるからひとまず私たちは放っておかれてる。
葉子ちゃんの泳ぎは綺麗だ。なんだかぴかぴかしてる。
私もキチンと習ったけど、葉子ちゃんのは理想のフォームと言ってもいい。でも、速くはない。昨日のタイムから計算すると100m泳いだら私と25mは差がつく。
多分、精密な動きが得意なんだろうと思う。スリーポイントがいれられるとも言ってたし、全般的に細かく正確な動きができるんだと思う。
「はぁ…悠里」
泳ぎ終わった葉子ちゃんに駆け寄ると、葉子ちゃんは息を荒げながら顔をあげてゴーグルを外してプールの中から私を見てタイムを催促してくる。
なんとなくそれが可愛くて、私は苦笑しながらタイムを告げた。
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