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「……はぁぁ」
「どうかしたの? 何か嫌なことでもあったの?」
夕食時、ため息をつく優生の顔を覗き込む。憂鬱そうな顔だ。どうしたんだろう。心配だ。
それにしても、優生はアンニュイな顔も可愛いなぁ。ちょっとずつ男の子っぽくなってるけど、まだまだ頬っぺたもふっくらしてて可愛い。
「…嫌、っていうか……お姉ちゃん中学生になっちゃったし…」
「可愛いーよー、もうもうもう、ちゅーしちゃう」
食卓に触れたりしないように気をつけながら優生に抱き着いて頬にキスする。優生はむずがるように身をよじる。
「うー。やーめーてー。僕もう子供じゃないもんっ。5年生だし、今日からお風呂も一人で入るからねっ」
「え……そんな。まだ、まだいいじゃない」
「やだ! もう僕大人だから一人ではいれるの! …お姉ちゃんのことは好きだけど、女とお風呂入るのはダッセーからしないの」
「…がーん」
口で効果音いうくらいショックだった。優生に反抗期が訪れてしまった。
さっきまで可愛いこと言ってくれてたのに急すぎる。
普段は手は繋いでくれるけど友達が見えたら手を解いたりしてちょっと複雑な気分になってたりしてたけど、もうここまで優生が成長してたなんて。姉離れしちゃうの?
「きゅ、急すぎるよ。なんで? どうして? 昨日までは家の中ならキスもお風呂もオッケーだったのに?」
「だって…今日同じクラスになったやつが僕のことシスコンとか言うんだもん。この年でお姉ちゃんとお風呂入ったりくっつくのは赤ん坊みたいでダサいとか言うんだもん」
「誰その子っ。お姉ちゃんが今から怒ってくるから名前言いなさいっ」
「もう! そーゆーのはいいの。僕の問題にお姉ちゃんが口出さないで。ちょっとうざい」
「…がーんがーんがーん…」
泣きそう。
「お、お姉ちゃん! 泣かないでよぅ」
ていうか泣いてた。
だって、だって優生が…私の可愛い可愛い優生が私のことうざいって……泣けるよ。泣くしかないよ。
「だって…お母さん! 私…うざい?」
涙を拭いながら尋ねる。
「私が優生君の立場なら嫌いになるくらいうざいわね」
「……」
傍目から見てそんなに酷かったんだ。ちょっとショック過ぎて涙ひいた。
「うう。これからは自重するー。だからお願い優生っ。お姉ちゃんのこと嫌いにならないで」
「きっ、嫌いになんかならないって。もしダサいって言われてもお姉ちゃんを嫌いになることだけはないよ。だって僕、お姉ちゃん大好きだもん。ただベタベタするのはガキくせーからしないだけだって」
「うーっ、優生大好きっ」
抱き着く。
「だ、だから…むう、ちゅーは駄目だからね」
「抱き着くのはあり?」
「家の中だけだからね」
「手をつなぐのは?」
「……誰もいない時だけだよ」
「優生ー」
ぎゅう、と抱きしめる。
柔らかいしいい匂いする気もするよー。
ああ、でももう優生もそんな年になっちゃったなんて……はぁ、寂しいなぁ。
○
優生はお姉さんが大好きで一緒にいたいとは思ってますが、くっつくのは恥ずかしいと思い始めてます。特に同級生の前では。




