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「はぁ…」
私って本当に駄目なやつだ。
武君が友達でいてくれると言って、とても嬉しかったし、もちろん今考えても嬉しい。
でも、小学生にそこまで気をつかわせてどうするって話よ。一緒になって泣いたってなんの意味もないのに。
あー…一応普段は体の年齢が私の年齢って割り切ってるけど、やっぱり意識として高校生のままだから落ち込む。
駄目すぎる。小学生から見たら高校生ってすごい大人なはずなのに。
ていうかよく考えたら彩ちゃんと実代ちゃんも中学生にしてはわりと大人だよね。私とかわらない気がする。
……いや、私が中学生レベルなのかな。
「お姉ちゃん? どうしたの?」
「あ…や、なんでもない。優生、晩御飯なに食べたい?」
親孝行の一貫で休みの日は極力夕食をつくっている。といっても味付けもお母さん任せだし手際もまだまだだし、お母さん監督下だから親孝行というより趣味みたいなものだけど。
今は優生と近所のスーパーに買い出しに行っているところだ。
「んー…コロッケ!」
「コロッケかぁ…」
コロッケならミンチか…んー、確かちょっと残ってたな。ジャガ芋はまだストックあったけど…多分使いきるから買っておこう。あとは大根と細切れの豚肉も安い。大根は似て、明日は生姜焼きにしよう。お肉はこれくらいいるかな。
「お姉ちゃんお姉ちゃん、こっちのが安いよ」
「優生にはいいもの食べてもらいたいからこっちなの」
「おおっ? わかった!」
まあ、単に量違うだけでグラム単価同じなんだけどね。訂正するの面倒だし。得意げに間違えてる優生可愛いからいいよね。
「お姉ちゃん、お菓子買ってー」
「一個だけだよ」
「うんっ」
と元気に返事した優生だけど二つ手にして返ってきた。一つカゴにいれて一つは後ろ手に持ったままなのは隠してるつもりだろう。
可愛いからいつも騙されてしまう。
「さ、帰ろうか」
「うんっ」
もう本当、優生は可愛いなー!
…あれ? 私、何か考えごとしてたような。……なんだっけ?
○
「あの子新しい彼女できたのよ。ほら見て見て」
おばさんが嬉々として私に携帯電話を向けて写メを見せてくる。
「ほうほう。可愛い子ですねー」
「でしょー」
「ちなみに前の彼女は?」
「フラれたみたい」
「……早いね」
「あの年ですでに4人目よ。さすが我が息子、モテるわね」
「いやー…短期玉砕って駄目な感じのモテ方じゃないかな。見た目で入って中身でフラれるみたいな」
「…そうなのよ。あの子、流行りの草食系で顔は悪くないし性格も悪くないと思うんだけどねー。なんで続かないのかしら」
「お兄ちゃん、いい人なのにねー」
「…君たち、そういう会話、目の前でしないでくれない?」
「ま、親に向かって『君』ですって。ちょっと奥様、どう思います?」
「あらあら、一体どんな教育を受けていらっしゃるざますかねー」
「ですよねー」
「ざますざます」
「…もういいよ」
ダイニングで雑談してた私とおばさんに、途中で入ってきたお兄ちゃんはジト目になって冷蔵庫からお茶を取り出してでていった。
たまにこうしておばさんとお茶したりする時はもっぱらお兄ちゃんの話題なので、お兄ちゃんは関わってこない。
「やーね、なんだか感じ悪いわ」
「まぁ逆の立場なら私だって嫌だけどね」
「そういえばあの子、悠里ちゃんに恋人のことあんまり知られたくないみたいね」
「え? なんで?」
「さぁ? 悠里ちゃんが大きくなった時に備えてキープしたいんじゃない?」
「もうちょっと息子さんを信頼してあげて下さい」
ていうか思ってもいわないでよ。だいたい、お兄ちゃんがそんな腹黒いこと考えるなんて有り得ないしね。
「やーね、信頼してるのよ。あの子なら絶対、ロリから熟女までいけるってね」
「嫌な信頼だ…」
お兄ちゃんとおばさんは本当にタイプが違う。そこが面白いんだけど、要所要所で結構似てたりもするから親子だなぁって思ったりもする。
○
最後の切り方が難しかった。おばさんとはそこそこ仲良しです。
悠里は基本的にアホなので考えごとしても忘れます。そしてそのあと改めて同じことを考えたりします。