35
果たし状なる物が下駄箱に入っていた。前の人生含めて初めてもらってしまった。
何でこんな物を小学生女子が知っているかは置いといて、どうしよう?
「…って、行くしかないか」
まさか集団リンチとかってわけじゃないだろうし。…ないよね?
「ん? 悠里、どーかしたか?」
「いや、何でもないよ」
放課後、河原で、ねぇ。古典的にもほどがあるでしょ。家から反対方向だし。
「今何か持ってなかったか? まさか…ラブレターか?」
「違うよ。今のは買い物メモ。帰りに頼まれてるの」
「そうか。付き合うぜ」
「今日は野球の日でしょ。練習サボっちゃ駄目だよ。軽いものだけだから大丈夫」
「…無理すんなよ」
「ありがとう」
照れる武君に和みつつ、心の中でため息をつく。
めんどくさ。
○
「だからさ、私は武君と付き合う気はないよ」
「じゃあそう言いなさいよっ」
「言ったよ。それでも諦めないって言うから…」
「言うから何よ! もっと避けるとかしなさいよ!」
「半端な態度だと武君だって脈ありって思うっしょ」
「武君が可哀相だよ…」
「まじサイテー。振り回してんじゃないよ」
いや…そんなこと言われてもなぁ。きっぱりと断った上で今まで通りの態度で、武君も納得してることだし。
河原の橋の下では前回と同じく5人が待っていた。
「それに…武君の思いは否定できないよ。例え私でもね」
誰かに言われて恋をするわけじゃない。誰かに言われて好きになったり嫌いになったり、人の思いはそんな簡単なものじゃない。
「っ」
「いっ−」
パンッ、と、また叩かれた。あまりに痛くて涙出た。
「何格好つけたこと言ってんの!? あんたが酷いやつなだけじゃん!!」
パンッと今度は逆を叩かれた。来るのはわかったのに避けるどころか、体はすくんで反射的に目を閉じたのでしっかり叩かれた。痛い。
「槇、声でかいよ。てか、ちょっとやりすぎ」
「うるさいなっ。学校から遠いから大丈夫だよ。ほら悠里! 何とか言いなさいよ!」
「きゃあっ」
友人の制止を受けても興奮した槇ちゃんは収まらないらしく、肩を突かれて私は尻餅をついた。
「い、痛た…。槇ちゃん、やめて。こんなことしても意味ないよ」
「なによ、いい子ぶって!」
槇ちゃんはさらに手をふりあげた。
頭を下げて目を強く閉じた。
「悠里ちゃん!!」
聞き慣れた声が私の名前を呼び、じゃじゃじゃと砂利を蹴飛ばす音がして私はそっと顔をあげた。
「お、お兄ちゃん?」
いつのまにか隣にお兄ちゃんがいた。
「大丈夫?」
「う、うん…」
「君たち、何をやってるんだ!! 寄ってたかって一人を攻撃して楽しいのか!!!」
「っ…」
お兄ちゃんは普段から想像できないくらいに大きな声で怒鳴りつけた。ちょっと私も恐かったから、祐巳ちゃんなんかは泣き出してしまった。
「お、大人の癖に小学生に怒鳴りつけて恥ずかしくないの!?」
「恥ずかしくない。恥ずかしいことをしてるのは君たちだ。何でこんなことをするんだ」
「……」
「黙ってないで何とか言え!!」
「お、お兄ちゃん、いいよ、もう。大丈夫だから」
「悠里ちゃん…でも」
「みんなも、もういいでしょ? 暴力は良くないよ」
「っ…行くよっ」
槇ちゃんは祐巳ちゃんの手をひき、5人は走って行った。
「…知り合いなの?」
「まあ…クラスメート」
「イジメられてるの?」
「そう…なのかな?」
「…何でわからないの」
お兄ちゃんにため息をつかれたけど、困る。言われて見れば、無視もイジメと言えばイジメだよね。
ああ、まいったなぁ。そりゃ助かったけど、こんなとこ見せるつもりはなかったのに。
お兄ちゃんは優しいから、心配かけたくないんだよね。
○
次回は高文視点です。




