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「おい、悠里」
「ん? 武君、どうかした?」
小学生も6年になれば男女差は大きい。
私も生理がきているし、成長の早い武君は早くも声変わりをしている。早過ぎ。
そうなれば男女は微妙に確執が出来てきて昔と同じく仲良くという訳にもいかなくなるけど、私が率先して仲たがいを潰しているので隣のクラスに比べて割と仲がいいくらいだ。
男の子のボスである武君が私と仲がいいというのもあるだろう。
彼は大きくなっても相変わらず口は悪くてぶっきらぼうだけど優しいというままで、付き合いやすい。
今も掃除でバケツの水変え当番になった私を手伝ってくれてる。
「お前さ…その」
「どうかした? あ、この前のテストどうだった?」
5年の時から武君には頼まれて時々勉強を見ている。塾にいれられたくないからとは言え、ジャイアン的体格なのに真面目だ。
「あ、ああ…87点」
「そっか。もうちょっとだね。でもこの調子ならきっと3だよ」
「ああ…悠里のおかげだ。ありがとな」
おや、珍しい。照れ屋な彼が素直にお礼を言うとは。
「どういたしまして」
「ああ…それで…ちょっと、聞きたいことがあんだけどよ。…いいか?」
「何? 改まって。いいよ」
「いや…放課後、時間とって欲しいんだ」
な、何だろう? 真剣な顔して。
「う、うん。わかったよ」
「じゃあ放課後…校舎裏で待ってるからな!」
武君はバケツを持つと走って行ってしまった。
どうせ教室に戻るんだから一緒に行けばいいのに。まぁ、バケツ持たなくていいから楽だけど。
歩きながら武君の質問内容について考える。
なんだろう。あんな改まって…何か相談かな? 前は接点はなかったけど一応覚えてるから、引っ越しとかじゃないのはわかってる。
だから余計わからない。
あんな真剣で…しかもちょっと顔赤かったし…相談?
……あ、もしかして、精通が来たとか? …いや、さすがに仲いいけど女の子には言わないか。されても困るし。優生もいつか私に相談するのかな……その時どうしよう。
いや、優生のことじゃなくて、今は武君だった。
体の中身じゃなきゃなんだろう。思春期の悩みなんて思い出せない。
相談、相談。あ、恋の相談?
「…なるほど」
確かに相手として私は適任だ。全員とそこそこ仲いいし。さりげなく近づけたりするのも得意だ。
なるほどねー。
武君も、大人になったものだ。
でも相手誰だろう。
私が密かに観察した結果一番人気は断トツで祐巳ちゃんだ。可愛いからちょっかいかけられる率も高いし。
武君はイジメはもちろんからかうのもしなくて何気に庇うことが多いから人気あるし、祐巳ちゃんもいい返事しそう。
はー。にしても、私が小学生の時なんて恋とか考えなかったなぁ。今みたいに交遊関係ひろくなかったし、男友達も少なかったし。
ま、何にせよ武君なら安心だ。どんな女の子を言われても頑張ってサポートしてあげよう。
恋のキューピッド作戦始動っ!なんてね。
「ただいま」
「おかえり、悠里ちゃん。掃除終わったよー。あとはゴミ捨てだけ」
「そっか。じゃあ私行くから、道具片付けて先生来るまで待ってるんだよ」
「あ、私手伝う」
「あたしも行くよ」
「いや、そんなに何人も…まぁいいか。じゃあみんなで行こうか」
「はーい」
○
ある程度は考えてた展開&一話が短いのでさくさく更新します。