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そんなこんなでお兄ちゃんとの遊園地は無事に終わったけど、お兄ちゃんと優生との関係は改善されなかった。
というか、優生が一方的に張り合ってるだけなんだけど。
「お兄ちゃん、今日は本当にありがとうね」
家の前まで帰ってきて改めてお礼を言う。
「どういたしまして。僕も楽しかったよ」
「ほら、優生もお礼言って」
「ふん。こんなやついなくてもよかったもん」
「優生」
「悠里ちゃん、いいよいいよ。気にしないで」
「もう。ごめんね、お兄ちゃん。本当は予定だってあったんでしょ」
「いいよ。悠里ちゃんの頼みなら、大抵のことは叶えてあげるよ。何せ、お兄ちゃんだからね」
「お前なんかお兄ちゃんじゃないもんね! 年上だからお兄ちゃんだけどお姉ちゃんみたいなお兄ちゃんって意味じゃ全然ないからな!」
優生はよくわからないことを言うとさっさと走って家に入ってしまった。
「…もう。ちょっと甘やかしすぎたかなぁ」
「はは。まあ、まだ子供だから仕方ないさ。悠里ちゃんのことが大好きなんだよ」
「それは嬉しいけど、だからってお兄ちゃんへの態度はさすがにねぇ。」
「いいんだよ、それに…優生君の気持ちもわかるよ」
「ん?」
「僕も悠里ちゃんみたいな姉がいたら、きっとべったりになってるだろうからね」
「お兄ちゃん、甘すぎ。まぁいいわ。そういうところ、大好きだもの。でもあんまりあちこちにいい顔してたら、彼女さんにフラれるわよ。じゃあね、お兄ちゃん。また来週」
「またね」
軽口を一つ言いながら、優生に優しいお兄ちゃんに安心して私はお兄ちゃんと別れた。
「お姉ちゃん、遅い! あのお兄ちゃんとなに話してたの!?」
「お礼よ」
「そんなに何回も言わなくてもいいのに」
「駄目よ。挨拶とお礼と謝罪は、何回言ったっていいんだから」
「むー」
「むーじゃない。優生もちゃんとしなきゃ駄目よ。今日だって楽しかったでしょ? お兄ちゃんがいなきゃ遊園地には私たち子供だけじゃ行けないんだから」
「……わかったよ、もーいーよ」
ふてくされてしまった。
大好きなお姉ちゃんの大好きな人なら優生も好き!っ言ってくれるかも知れないと思っていつもよりお兄ちゃんには好きとか言ったのに、全然効果がなくてまるで逆効果だったらしい。
うーん。優生が一番好きって言ってるんだから対抗する必要ないはずなのに、何で仲良くできないんだろう。
「優生」
「なにさ」
ぷーっと限界まで頬を膨らませる姿はまるでハムスターみたいでとても可愛い。抱きしめたい可愛い。
「優生ー」
なので抱きしめた。
「うきゃー!? びっくりするでしょ!」
「駄目?」
「…お姉ちゃんだから、とくべつにいいよ」
ぎゅっと抱きしめる。
優生もう超可愛い。超超超可愛い。
「わーい、優生大好き」
「優生もお姉ちゃん大好きっ」
ぎゅうぎゅう抱きしめあう。
「……そこの二人、帰ってきたなら早く手を洗ってきなさい」
「はーい」
「はーい」
リビングから顔を出したお母さんに突っ込まれたので抱き合うのを止めて荷物を置いた。
○
このくらいの文量のはずです。
お兄ちゃんは悠里を大事な妹分に思ってます。