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二度目の私  作者: 川木
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「たっかふみくーん、あーそーぼー」


ピンポーン−


「はーい、ちょっと待ってねー」


ピンポンを押しながら声をかけると、ノリよく返事が返ってきた。

うんうん、ノリがいいのはポイント高いよ。


「と、お待たせ、悠里ちゃん」

「今来たところよ」

「……さて、ところで優生君は?」


きゃはっ

と可愛い子ぶって言うと視線をそらされた。

ありゃ、そんなんじゃせっかくできた彼女にフラレるよー。


「ノリ悪いぞー」


ま、仕方ないか。去年まではまるで女っ気なかったしね。

高文君っていいやつだし分かる人には良さが……あれ、でも確か前は20後半でも結婚まだだったよね。長続きしないとかって…。



まぁ、いいか。

私の心配するとこじゃないよね。


「優生ならあっちだよ」


玄関前で待つ優生にぴらぴら指の動きだけで手をふると、ぶんぶんと満面の笑みで両腕をふって応えてくれる優生。

ああ、可愛いなぁ。


「でも優生君、よく納得したね。僕、嫌われてるみたいなのに」

「嫌なら私がお兄ちゃんと二人で行くって言ったら、優生も行くーってさ」

「そ、そう…。優生くーん」

「…(ぷい)」


お兄ちゃんが声をかけると優生はうってかわってムッとした顔になるとそっぽを向いた。


「優生っ、お兄ちゃんに失礼でしょ」

「あはは、良いよ悠里ちゃん。僕なら大丈夫だから」

「そう…。今日は本当、ありがとうね。急な話なのに」


今日はお兄ちゃんと優生と3人で隣町に新しくできた遊園地に行くことになった。


本当は家族で行く予定だったんだけど、昨日からお父さんが風邪ひいちゃって、優生がダダをこねるからお兄ちゃんに聞いたら急な話なのにオッケーしてくれたんだ。

お兄ちゃんはもう20になる大学生だしよく知ってる、お母さんも安心してお父さんの看病に専念できる。

なのにお兄ちゃんと行くって言ったら優生は今度はヤダって言い出すんだから、もう、どうしてお兄ちゃんに懐かないのさ。


「まぁ、悠里ちゃんの頼みだからね」

「でも予定あったんでしょ?」

「うんまあ…いいのいいの。悠里ちゃんは僕の妹も同然なんだから。どーんと頼ってよ」

「うんっ。ありがと」


やっぱりお兄ちゃんは優しいなぁ。

私にとっては本当のお兄ちゃんみたいなものだし、この機会に優生にお兄ちゃんの良さをわかってもらおうかな。


「お姉ちゃーん、まーだー?」

「はーい。お兄ちゃん、行こ」

「うん」


さーて、お兄ちゃんとの遊園地は始めてだし、今日は楽しもうっと。







「お姉ちゃん、優生ぃ、アレ乗りたい!」

「ちょっと待ってよ、優生。お兄ちゃんがまだでしょ」


私の手を引いてぐいぐい引っ張っていく優生だけど、お兄ちゃんは文系丸出しというかちょっと遅れてる。


小学生に相手に遅れるとか…、とは思うけどもう二時間近くたってるし、体力は毎日走り回ってる子供の方があるんだよね。


「……ぃ」

「ん? 優生、なんか言った?」

「…何でもない」


うーん、なんか優生、お兄ちゃんのこと疎ましく思ってない?

私に懐いてくれるのは本当にかなりめちゃめちゃ嬉しいけど、お兄ちゃんに反抗的なのはちょっとなぁ。


「お待たせー、はぁ、二人とも、足早いね」

「大人のくせにダッセーの!」

「優生。やめなさい。本当、ごめんねお兄ちゃん」

「いいっていいって。優生君についていけない僕が悪いんだから」


お兄ちゃん優しいなぁ。誘っておいて罵倒するとか普通なら怒ってるよ。


「次はあれね!」

「え゛…」


優生はお兄ちゃんを睨んでからびっとアトラクションの一つを指差した。

それはこの遊園地の目玉の一つ、急速落下を繰り返すジェットコースターだ。


「…」

「何、大人のくせにびびってるの? お姉ちゃん! こんなやつほっといて優生と二人でまわろーよー!」

「び、びびってないけど…そ、そうだね。僕は待ってるから二人で行けばいいんじゃないかな?」


おい。

とまぁ、ツッコミはおいといて。


「二人とも、無茶言わないの」

「え?」

「優生の身長で乗れるわけないでしょ」


身長制限があること、忘れてない?

 てか、私でもギリギリ…アウト? 機種によるしね。


「あ…そっか。身長制限…」

「? なにそれ?」

「子供はジェットコースターにはのれないのよ。だから今回は諦めてね」

「えー!? なんでなんで!? 優生子供じゃないよ!」


私の手をぶんぶんふって抗議する優生の頭を空いてる手で撫でながら苦笑する。


「優生、優生はまだ子供でしょ?」

「違うもん! もうすぐ中学年の大人だもん!」


中学年どころか中学生だって子供だって言うのに、小2の優生は自身を大人とダダをこねた。


「優生、いい子だからわがまま言わないの」

「わがままじゃないもん! お姉ちゃんと一緒にのりたいだけだもん!」


きゅん…と優生の可愛い必死な顔にはときめくけど、無理なものは無理。


「あのね、優生」

「なに!」


ふくれた優生にしゃがんで目線をあわせる。


「お姉ちゃんは、優生と一緒にいたいよ」

「…本当?」

「うん。でもね、お姉ちゃんジェットコースター恐い恐いなの。だから乗れないの。優生は、お姉ちゃん置いてジェットコースターに乗っちゃうの?」

「え! お姉ちゃん置いてかないよ! ずっと一緒だよ!」

「じゃあ、ジェットコースターは諦めてくれるかな?」

「…わかった。でもね優生、お姉ちゃんが大好きだから諦めるんだよ。優生の方がこのお兄ちゃんよりお姉ちゃんのこと好きなんだからね」

「わかってる。私も、優生がだーい好きだよ。手、離さないでね」

「うん! お姉ちゃんと一緒にいる!」


私の手をぎゅっと痛いくらい握ってくる優生はジェットコースターを諦めてくれたようだ。

うん、優生は本当に可愛いなぁ。


「じゃあ、そろそろお昼にしようか。お兄ちゃんもいい?」

「勿論」


振り向いて聞くとお兄ちゃんはにっこりと優しく笑っていた。








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