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二度目の私  作者: 川木
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「ばんちょー」

「何ー?」


どうも。悠里ちゃん(10)です。

何故か番長と呼ばれてます。


「牛乳こぼれたー」

「はいはい。雑巾でふいて」

「くせぇー」

「我慢して。あとで石けんで洗えば大丈夫だから」


しかしてその実態はクラスの便利屋、というかパシリ?


「ごめんね、悠里ちゃん」

「気にしなくていいよ。大丈夫だから」


何でこうなったんだろ?

私、こんな世話やきじゃなかったはずなんだけど。やっぱり回りが子供だらけだからかなぁ。


「番長ー」

「何ですか?」

「給食のプリンあまってるけどいる?」

「いりません」

「えー? 番長じゃなきゃもめるじゃない」

「じゃんけんで決めてください。というか…」


プリンをぷらぷらするのを見て私はため息をつく。


「先生、番長はやめてください」


私を番長と呼び出したのはこの、美人で若くて適当な山田妙子やまだたえこ先生だ。

先生は基本的にやる気がない。そのせいでますます私が面倒をみて先生はますますサボる。何という悪循環。


「いーじゃん。カッコイイわよ」

「何で番長なんですか」

「みんなのリーダーだから」

「意味が違うでしょう」


だいたい番長とかそういうのは、4年生なのに6年を泣かしたりする喧嘩っぱやい武君の役目でしょ。大きいし。


「ばんちょー、いらないならオレにプリンくれよー」

「武君…みんながいらないならいいけどさぁ」


プリンよりも、番長の称号をもらってほしい。


「プリン欲しい人いないー? 武君にあげるよー?」

「いるいる!」

「あたしもー!」


さすがプリン。18人も集まった。後は勝手にどうぞ、として私は牛乳をこぼしてしまった子と一緒に雑巾を洗いに行く。


「悠里ちゃんは凄いね」

「何が?」


う、まだちょっと臭い。

私はごしごしと石けんをつけてもみあらい。


「だって、みんな悠里ちゃんの言うことなら聞くもん。男子だって」

「んー、武君とは昔から仲いいしね」

「でも凄いよ。さすが番長だね」

「…それはやめて」


妙子先生のせいで男の子はみんな私を番長って呼ぶようになっちゃったし、さらに女の子までとか勘弁して。


教室に戻るとまたもめていた。


「先生、止めてくださいよ」

「番長頑張って口」

「…はいはいみんな、静かにー。なに喧嘩してるの?」

「武君が後だしするんだよ」

「ちげーよ。してねーってば」


ほんとに、よく毎日もめれるなぁ。


「もう、喧嘩するなら私が食べちゃうよ」

「…まぁ、番長ならいいけど」

「いや、何でよ。冗談だから」

「あたしは武君にあげるなら悠里ちゃんにあげるー」

「あーもう、とにかくじゃんけんするよ。私が見張るから後だしできないでしょ。それでいい?」

「さんせー」

「勝ってたのにごめんだけど、武君もいい?」

「…しょーがねーな。ばんちょー様が言うなら従ってやるよ」

「ありがと。じゃあいくよ。じゃーんけーんぽん!」

「勝ったー!」


眞ちゃんが勝った。

武君が悔しそうで、後だしが濡衣だったら可哀想だし私のプリンをあげた。


みんな可愛いし嫌なわけじゃないけど、私保護者みたいだよね。まぁ、仕方ないけど。







「お姉ちゃーん」


昼休み、校庭に出ると優生(7)が走ってきた。

2年生になっても可愛いなぁ。


「優生。また来たの? お友達と遊ばなくていいの?」

「友達も一緒だもん!」


見ると数人の子供たちがよってくる。


「ゆーりぃ」

「はいはい、なぁに?」


優生はお昼休みにもちょくちょく私に会いにくるから、年下にも知り合いがいる。

にしても可愛い。子供可愛い……別にショタコンとかロリコンってわけでは断じてないからね。


「りんちゃん、たっくん、今日は何して遊ぶ?」

「りんちゃん、おままごとがいー」

「たっくんはね、ゆーりとならなんでもいいよ」


みんな最初は私をお姉ちゃんと呼んでくれてたけど、優生が嫌がったから呼び捨てになった。

ちょっと残念だけど『お姉ちゃんは優生だけのお姉ちゃんなのー!』って言われたのが嬉しかったからよし。


「ゆーり、ぼくは鬼ごっこがいい!」

「ちぃちゃんはかくれんぼすゆ!」

「こらー、喧嘩しないの。よーし、じゃあ今日は、だるまさんが転んだにしよう」

「えー」

「文句言わない。りんちゃんとたっくんもいい?」

「うん。へーき」


りんちゃんとたっくんの双子の兄妹はちょっと体が弱い。けど私には懐いてて、優生にくっついてよく会いにきてくれる。


「ばんちょー、遊ばないのー?」

「早くこいよー」

「私今日は優生と遊ぶねー。かくれんぼ!」


クラスメートに呼ばれて待たせていたのを思い出し、声をあげる。


「あ、じゃあ私もそっちがいい!」

「ぼくもー」


ありゃ。本当、なんでこんなに懐かれてるんだろ。


「何だよお前らー! ばんちょーばっか!」

「ごめんね武君。でも、武君も一緒にかくれんぼしてくれたら嬉しいなぁ」


一人残った武君になだめるように言うとちぇ、と言いながらも私の方にきて


「しょーがねーなぁ」


と混ざってくれる。本当、素直でいい子だよね。








ばんちょー、と平仮名発音なのは意味がわからないまま呼んでるからです。


学年で言うと二つ違いの姉弟で、女の子二人とも二つ違いの設定です。


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