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「最初はぐー」
「じゃんけん」
「ぽん」
声を揃えて私たちはそれぞれに手を出した。
「やった、あたしの勝ちね」
「おめでとう」
「ふふん、苦しゅうないわ」
彩ちゃんは胸をはる。
何をしているかと言えば、今日は何をして遊ぶかと言うことだ。
好みが違うのでじゃんけんで勝った人が決めることになってて、彩ちゃんは5回連続で負けてたから久しぶりに勝てて嬉しそうだ。
まだ小3の二人と私だから、おままごととか鬼ごっことか、普通の子供がする遊び。
二人がお嬢様と言えど、やることは変わらない。まぁ、私に合わせてくれてるのかも知れないけどさ。
「今日は、おままごとよ! あたしがママで、悠里は子供ね」
「あー、うん」
「私はー?」
「実代は、シュウトメよ」
えー? ちょ、普通そこはパパでしょ。
「うん、わかったー」
しかもわかっちゃうの!?
母と子と姑とかバランス悪いし、どんな事情でそんな家族構成になったのか聞きづらいわ!
「あー、二人とも、ちょっといいかな?」
「なによぉ?」
「どうしたの?」
「いや、父親役は?」
「人数足りないんだからしょうがないじゃない」
え、
「姑」って主要人物なの? そこは父親優先じゃないの?
「……あ、そうだ。優生君は?」
「え?」
「優生君、パパにしたらいいんじゃないかなぁ? 今はいないけど、出張中とかにしてさ」
「実代かしこい! それなら悠里も文句ないわよね?」
「まぁ…いいけど」
文句って言うか…疑問だったんだけど…別にいいか。
「じゃあいくわよ。はーいよしよーし、いい子でしゅねー」
「ば、ばぶー」
どちらかと言えば、子供=赤ん坊な設定を止めてほしい。
リアル赤ん坊プレイを卒業したのに、何が悲しくて小学生の赤ん坊にならなきゃならないんだろう…はぅぅ。
「彩乃さん、ちゃんとお掃除してますか? こんなに埃がたまってますよ」
「ごめんなさい、お母様」
「悠里ちゃんは私が見ますから早くお掃除なさい」
「はい、ただいま」
…微妙にリアルというか、昼ドラの影響を多大に受けてるなぁ。
「だーうー」
体動かすやつならまだ私も楽しいのになー。
○
「悠里、学校楽しい?」
「うん、楽しいよ。二人は?」
「勿論! 楽しいわ…けど…悠里がいればもっと楽しいのに…」
彩ちゃんの言葉に苦笑する。
私が小学生になってそろそろ半年たつんだから、いい加減諦めたらいいのに…。
「彩ちゃん、無理言っちゃ駄目だよ。悠里ちゃんの意見で変えられるものじゃないんだから」
「わかってるわよ…でも…」
好かれるのは嬉しいけど、彩ちゃんはいじけると長いんだよね。どう言おうかなぁ。
「彩ちゃん」
「何よ…」
「高校生になったら彩ちゃんと同じとこに行くから、我慢して。ね?」
「そんなの、ずっとずっと先じゃない!」
「そんなことないよ。10年もないでしょ」
「悠里ちゃん…せめて中学からは無理なの?」
「う、う〜ん…じゃあ、お母さんに聞いてみるよ」
というか、今から進路決定ですか。まあ…いいんだけどね。
「やぁだ! いますぐ一緒がいい! あ、そーだ! 悠里、うちの子になってよ。あたしの妹になったらずっと一緒にいられるでしょ? ね? そうしよーよ!」
ええー。いやそんな、名案思いついた!みたいな笑顔で言われても…。
「あ! それいい! 彩ちゃんのお家なら、お向かいだからすぐに会えるもんね」
賛同しちゃったー! 待って待って!
うわー、子供の発想って恐いわー。
とにかく二人を説得してご機嫌直してもらったけど、それだけで殆どその日は終わった。
はうー、可愛いんだけど、手のかかる妹分だよねー。
次、再び時間が飛びます。