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二度目の私  作者: 川木
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波打ち際まで下がって歩いていくと石が固まって地面になってる岩礁みたいなとこまできた。

隙間に蟹や小魚がいたからここで蟹探しを始めた。


海の家とかから離れたことで人気が少なくなった。


「ねーね、かにさん!」

「そーだね、蟹さん、ちょきちょきー」

「ときときー!」


全然言えてねぇ。が、そこが可愛い。


「優生、足、きらないように気をつけてね」

「うん、ときときなの」


……。

まぁ石丸いし、今はいないけど、たぶん人はけっこう来てるんだよね。それで立ち入り禁止の看板とかないなら大丈夫かな。


「あ」


なまこだ。うわ〜、きも。たしかつつくと紫を吐くんだよね。


私は転がってるなまこに近寄ってしゃがみこみ、つついてみた。


ん、なかなか出さないなぁ……えい。


「う…あ、でたでた」


思い切って両手で握るとむにゅうって手触りが気持悪いけど、紫の液体を思いっきりだした。


「うはぁ…ねぇ優生! 見て見て!」

「なぁに…わっ!?」


両手でなまこをつかんだまま立ち上がって優生を振り向くと、同じく立ち上がった優生が水しぶきをあげていた。


「な、えっ!?」

「あ、わ、ばっ…」

「優生!!」


私はなまこを捨てて海に落ちた優生に飛び付いた。


「ごほ、がっ!」

「じっとして!」

「ねー、ごぱっ、ね、ねーね!」


何とか優生を岩礁に押しあげて私も戻る。際で遊ばせすぎた。


優生は鼻水と涙でぐちゃぐちゃになった顔で私に抱きついてる。


「う、ね、ねーねぇ…」

「ああほら、泣かないの」

「う〜! こあかったよー!」

「よしよし、大丈夫大丈夫。優生は、お姉ちゃんがちゃんと守ってあげるからね」

「ねーねー!」


あー、よかったー。も、ほんと心臓に悪いよ〜。

落ちたって言っても、波に流されたわけじゃなく近いから戻れたけど…もし大きめな波とか来たらやばいよね。


「優生、お母さんのともに戻ろうか」

「ん、うん」


ぎゅっと手を握りあって私たちは歩きだした。







「ただいま」

「おかーりー」

「あら、おかえり。蟹はいた?」

「ときときいたよー」

「いたよ。お父さんは?」

「見て見て」


お母さんはふふと笑いながら海を指差す。

ビニールシートの上に座りながら見るとお父さんはまだ泳いでいた。


元気だなぁ…。そういえば、まだ20代だもんねぇ。


「ねーね、ゆーき、のろかわいた」

「ああ、そうね。お母さん、あけて」


クーラーボックスから缶ジュースをだして、お母さんにあけてもらう。

私たちじゃまだ開けられないから仕方ない。


「どうぞ」

「ありがとう」

「あーがとー」


可愛いなー。

さっきはマジ焦ったけど助かったし、いやぁ、本当によかったー。


「? ねーね、にこにこーだね」

「え、えへへ…べーつに」


優生に指摘されるけど、顔がにやけるのは仕方ない。


「優生」

「なぁに?」

「大好きだよ」


ぎゅっと、濡れたすべすべの優生を抱きしめて耳元でいうと優生はくすぐったいのかくすくす笑う。


「あふふぅ、ゆーきも、ねーねすき!」

「あー、なぁに、二人とも。ママも混ぜなさーい」

「わっ」

「きゃあ」


お母さんが私たちをまとめて抱きしめてきた。


「母さんずるいぞ。パパもまーぜてー」


海から上がってきたお父さんがさらに上から抱きしめてきた。


「ちょっとお父さん、濡れちゃうじゃない」

「う、ごめんよ母さん…」


お母さんに言われてお父さんは抱きつくのをやめた。

お父さん弱いなー。


「お父さん、私にならいいよ」

「っ…悠里! 普段はつれなくてもやっぱりパパを愛してたんだね!」


…うざ。


あ、つい本音が…。

仕方ないからお父さんに抱きつきかえす。


「あー! ぱーぱ、ねーねとっちゃめー!」


ちょっ…優生、可愛すぎる。


「駄目だぞ優生、娘はやらん!」


なんて大人気ない父。弟だっつーの。


「あなた…気が早すぎよ」


さすがのお母さんも呆れ気味か…。微妙に論点が違う気もするけど。


「ぱーぱずるいー!」

「ふははは、ほーら、とれるものならとってみなさい!」


お父さんは私を抱き上げて肩にのせた。

当然、優生には届かない。


「ぱーぱぁー!」


…もう。お父さん、子供すぎ。


お母さんと目があい、私はくすりと笑いあった。


「あ、すみませーん!」


ぽーん、とビーチボールが飛んできた。

それを追ってきた中学生くらいの女の子に、お父さんが私をのせたままボールを拾う。


「どうぞ」

「ありがとうございまーす」


可愛らしいお姉さんだったなぁ。それに、どことなく見覚えがあるような…?


「可愛い子だったなぁ」


立ち去る女の子にお父さんが呟く。

うんうん。モデルとかになってそう。


「あなた…まさか中学生に…」

「え、ちょっ、違いますよ!?」


そろそろ新婚とは言えないのに、ほんと二人は仲いいなぁ。


「まぁま、ゆーきおなかすかすかー」

「あら、お腹へった? じゃあお昼にしましょうか。勿論お父さんのおごりね」

「はい…」

「お父さん、私やきとおもろこし食べたい」

「はいはい、なんでも言ってー」


さっきからいい匂いしてたんだよねー。


私はお父さんにのったまま海の家に向かった。








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