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「よし、できた。お城ー。上手にできたねー」
「おしろでけたー」
とりあえず無難に、陸地で遊んでみた。
と言うか、意外とハマるかも。こりだすと止まらない。
「お、凄いなぁ。ちゃんとお城に見えるじゃないか」
「本当ねぇ」
幼児の砂遊びなんて所詮山が関の山だもんねぇ。が、今回は違います。
塔にわけて屋根は勿論窓もかいてるから、ちょっとそれっぽい。
「よし、二人はいい子にしてるみたいだし。お父さんは泳いでこようかなー」
「ええ。私はここから見てるわね」
「カッコイイところを見せるように頑張るよ」
「あなた…」
…そこのバカっぷる、隙あらば二人の世界つくるのやめてくれない?
地球が温暖化しますから。
「? ねーね、どーかちた?」
「なんでもなぁい。次、なにつくろっか?」
「えとねー、ゆーき、かにさんみたい」
「蟹か…じゃあ、探そうか」
「うんっ」
かに『さん』て…いちいち可愛いなぁ。
「お母さん、私、優生と蟹さん探しの旅にでるわねー」
「そう、悠里ちゃんなら大丈夫だろうけど、気をつけてね」
「うん」
「ただーまー」
『いってきます』と『ただいま』を間違えて覚えてる優生可愛い! 萌え!
○
「かいー」
浅瀬を歩いていると優生は落ちてる貝に興味をもったらしく、私と繋いでた手を離して先行する。
「優生、あまり私から離れちゃ駄目だよ」
「きらきらー! ねーね、きらきらーなの!」
「そうだね、綺麗だね」
膝近くまで海につけて優生はきゃらきゃら笑う。
それが嬉しくて妙に楽しい。優生といると凄く優しい気持ちになる。
…………もしかして、母性? まぁ、なんでもいいや。
私は優生に近寄って、貝をひとつ拾う。
少し欠けていたけど、ぴんくの貝殻は綺麗だ。
これってサクラガイ、だっけ?
「ねーね! かい!」
「ん、うわっ、デカっ」
優生にぺちぺちお尻をたたかれて視線を下げると、優生は満面の笑顔で大きなハマグリみたいなのを私に突き出す。
「でかー?」
「あ、大きいってこと」
「でかー!」
にこにことハマグリを持った手を振り回す。
きらきらは?と思うけど、男の子には綺麗よりカッコよさなんでしょ。
ハマグリがカッコイイかはおいといて。
「へへ〜、優生、しゅごいでしょ」
「凄い凄い、優生は凄い」
「えへ〜」
可愛いなー。
「ん!」
「ん? なに?」
「あげゆ!」
「え? いいの?」
てゆーか、いらないけど。
「うん! ねーねすきらから、あげゆの!」
!?…ごめんなさい。宝物にします。てゆーか家宝にします。
「ありがとう優生! 大事にするね!」
「うん!」
ああ、でれでれってきっと今の私。
「あ、でかーだ! またねーねにあげゆね!」
「え」
ちょ、そんな大きいだけの貝ばっかいらな…
「危ない!」
少しだけ大きい波がきて、私は思いっきり優生に抱きついた。
「わ…うきゃあ! こおるー!」
私の腕の中で優生はきゃはーと楽しそうに笑う。
「あ…あ…っ、危ないでしょ!」
「う…ふえ、ふえぇえ!」
「あ、ご、ごめんね。怒ってないよ。ごめんねー」
あぅ、勝手に心配しただけなのに怒っちゃったー!
で、でもさ、大人にはたいしたことなくても小さい優生には危険なんだからさ。
「泣かないでー、あー、いーこいーこ。よーしよし」
「ひぐ、う…う、も、おこらない?」
「怒ってないよ。ごめんねー」
「う、く…ん」
ちょっと、ぴりぴりしすぎたかなぁ。
もっと普通にしなきゃ。優生にしたら、普通に遊びにきてるんだし。
○