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「うーみーだー!」
「うー、みー、りゃー!」
私が叫ぶと優生が真似して叫ぶけど、どうにもこうにも可愛い。
「悠里、気合い満々だな」
「悠里ちゃん泳ぐの好きだものね」
「ん。まぁね」
昨日はちょっとかなり鬱だったけど…まぁ、よく考えたら前と違って私泳げるし、大丈夫でしょ。
「でも、二人とも海初めてだから楽しみなのは分かるけど、はしゃいで溺れないでね」
「ま、大丈夫だろ。悠里はしっかりしてるし。泳げるし」
「それもそうね」
おっとー!
「油断大敵! 二人とも! そんなこと言って優生が死んだらどうするのよ!」
「ご、ごめんなさい」
私が怒ると二人は素直に謝った。
前だって、私は勿論二人だってかなり優生の死については後悔してたんだから。
ま、5歳の私より親が責任感じるのはある意味当たり前なんだけどね。
「う〜?」
「よしよし、優生はなんの心配もいらないからねー。浮き輪を膨らませてあげようねー」
幼児用の穴に足を通すタイプなので、これなら溺れないはず。
前は普通の浮き輪だから抜けちゃったんだけど、今回は大丈夫でしょ。
「〜〜、? …〜〜〜っ! ぷはっ…はぁはぁ、ふ、ふくらまない!?」
そんなバカな!
「悠里ちゃん、そういうのはパパの仕事だからいいのよ。ね?」
「勿論だとも」
お父さんに浮き輪を渡すと、ものの数秒くらいで膨らんだ。
「おおーっ」
優生が歓声をあげると、お父さんは調子にのってさらに大人用浮き輪とビーチボールをふくらました。
う〜ん。普段から体が小さいのはわかってるけど、改めて差を見せられると落ち込むなぁ。
「さて、じゃあ着替えようか」
「そうね。悠里ちゃんはいつもやってるから、一人でお着替えできるかしら?」
「…え?」
「あら、できない? ママの手伝いいる?」
嬉しそうに私の服に手をかけるお母さんに私は慌てて手をふりはらう。
「ちょっ、ちょっと待って! 着替えって…ここで?」
それなりに人がいる浜辺で、回りと同じくシートを引いてパラソルたててる……ええー?
ちょっ…野外で着替えとかどんな露出プレイですか?
「そうだけど?」
うわ、めっちゃ不思議そう!
「お、お母さんは着替えないの?」
「私は大丈夫。泳がないから短パンとシャツなの」
「お父さんは?」
「んー、何か言ったかー?」
って優生とお父さん、もう海パンだよ!
「お父さん…着替え早くない?」
「家から着てきたぞ?」
子供か!
「どうしたの悠里ちゃん?」
「う〜…き、着替えるよ」
わかってる…わかってるよ? 私が幼稚園児で裸くらいそんな気にするほどでないのはわかってるよ?
お父さんとお母さんがいるだけでほとんど回りから隠れてるのも分かるよ?
けど……恥ずかしいのは恥ずかしいよ!
うう…かつてのオムツ並に恥ずかしい。
「まぁ、一人でお着替えできて偉いわねぇ」
はぁあ…前途多難だ。