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二度目の私  作者: 川木
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こん、こん


晩御飯もお風呂も終わった8時すぎ、私の部屋(普通は早すぎるだろうけど、私が一人部屋欲しいって言ったら前回と同じ部屋くれた)の窓が叩かれた。


「開けていいよー」


私は窓下に置いてる開閉のための台によじのぼりながら返事をする。


「こんばんは、悠里ちゃん」

「こんばんは。今日は何する?」

「数学かな」

「得意分野だよ」


にっこり笑って言うと、お兄ちゃんは知ってると言いながら窓の向こうから私を抱き上げる。


「はい、閉めて閉めて」

「うん。けど…前から思ってたけど勝手に出てきていいの?」

「大丈夫。ドアに朝まで起こさないでって札さげてるから」

「…そういう問題?」

「それに、夜遊びじゃないし。隣だしね?」

「まぁ…共犯の僕がいうことじゃないか」

「そうそう」


昼はあんまり時間が合わないから、屋根づたいに移動して夜に勉強を教えることが多い。


私の部屋とお兄ちゃんの部屋は向かいあってて、屋根と屋根の50センチくらいの隙間をまたげば楽々行き来できるのだ。

前からそれは知ってたから、お兄ちゃんに私から提案した。


あ、勿論私の体格じゃは窓を越えられないし屋根を越えられないから抱き上げてもらうのはデフォルトだよ。


「はーい、それじゃあ今日も『ワクワク☆悠里様の秘密レッスンぽろりはないよ』を始めまーす」

「……いつものことだけど、そのめちゃめちゃなタイトルは必要なの?」

「うん? モチベーションあがるじゃん」

「…そう」


そして二時間ほど勉強したら、次は私の番。

世の中タダより恐いものはないのだよワトソン君。


「よしっ、依頼クリア! 次は…そろそろ次の町かなぁ」

「あ、次の町で船が手に入るよ」

「マジ? やった。陸沿いだとやたら時間かかるんだよね。ザコ殺してもレベルあがんないし」


ちゃらちゃら〜とマップBGMが手元からなる。

何をやってるかと言えば勿論、ゲーム。うちの親だってねだれば買ってくれるかも知れないけど、普通3歳児はRPGを理解する以前に、平仮名もあやふやだろうに今やってるのは漢字入ってるやつだし。


私は夜にお兄ちゃん家に出張する代わりにゲームをやらせてもらうのだ。


「あ、もう11時。悠里ちゃん、そろそろ」

「う〜っ、私、部屋でやる。送って」

「もう、いいけど…見つからないでよ」

「わかってるよ」


以前、お兄ちゃんから借りた本がお母さんに見つかって何を勘違いしたか本棚にいれられ、私じゃ届かないからお兄ちゃんがコッソリ書斎に入ったのはまだ最近の出来事だ。


「じゃ、レッツゴー」


最近、お兄ちゃんも私を抱くのに慣れたらしく乗り心地がいいです。









目をさますと、昼を過ぎていた。


「お母さん、おはよー」

「おはよう、悠里ちゃん。今日はお寝坊さんね」


ダイニングに行くと優生を抱いたお母さんがいやに嬉しそうに顔を洗ってきなさいと言った。

幼児なのに起こされもせず毎日7時に起きて手伝いをする私にありがとうとは言ってくれるが、やはり子供らしいところがあると嬉しいらしい。


「ご飯はぁ?」

「用意してるわよ」


幼児にしても自由過ぎる起床(昼寝ならともかく)にもお母さんはにこにこと優生を専用の席に座らせ、ご飯を用意する。


一人で子供用の高い椅子にのるために、椅子の横には高さの違う椅子が二つあって階段にしてあり、私はそれを使って私専用の椅子に座る。勿論隣は優生だ。



「おはよ、優生」

「うー、う」

「うーうー」


声をかけると振り返る優生に私は笑顔で意味のない音をかえす。


「だぅ?」

「あどぅー、だぅー、いなーい、いなーい、ばぁ!」

「きゃはっ」


きゃらきゃら笑う優生、超なごむ。まさに百万ドルの笑顔。


「悠里ちゃん、優生が可愛いのはわかるけど、冷めないうちに食べてね? 悠里ちゃん以外みんなお昼食べたんだからね」

「はーい」


私は優等生な返事をしてお箸を手にした。


さて、今日は何しようかなぁ?




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