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二度目の私  作者: 川木
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「お誕生日、おめでとう」


起きて顔をあわすとまずお母さんにそう言われた。


「誕生日おめでとう。もう18か、大きくなったなぁ」


感慨深げにお父さんが言った。


「ふわぁ…ん、姉ちゃん、誕生日おめでとう」


眠そうに優生が言った。


「ありがとう」


そのつどお礼を言ったけど、私はちゃんと笑えていただろうか。自信はない。


前回は部活の都合で学校に行った。今回は学校が違うから、部活も今日はない。

胃が重い。足が震えそう。意味もなく喚きちらしたい。


「今日の晩御飯は何かリクエストはある?」


誕生日は毎年お母さんがご馳走をつくってくれるのが定例だ。


「今日は…お寿司がいいな」

「あら、珍しいわね。既製品がいいってこと?」

「うん…」


前回の私はあまり手伝いをしないからお母さんの手料理なんか食べ飽きていて、せっかく誕生日なんだしいいお寿司が食べたいと言ったのだ。

食べることはなかったし、今回も食べないのに、どうして私は未練がましいことをするのだろう。それとも行動をなぞることで事故の確率をあげようというのか。自分ではわからない。


「よし、じゃあ今日はお寿司屋さんに行きましょう。いいお店を予約しておくわね。家事も私がやるから、今日はのんびりしてなさい」

「うん、ありがとう」


私は、なにをしてるんだろうなぁ。









「誕生日おめでとう、愛してるよ」


そんなことを言ってお兄ちゃんは私を抱き上げた。


「なっ、なに!? テンション高くない!?」


一緒に誕生日を過ごすと約束はしたけど、まさかこんな早朝(8時)に迎えに来るとは。

優生が部活あったし当たり前みたいに皆起きてるけど、普通休日の8時は寝てると思う。うちは休日は一人起きたら皆起きるって習慣で起きてるけどさ。会う前に逝こうと思ってたのに。


「だって今日さえ越えれば、もう悠里ちゃんも辛くなくなるでしょ?」

「そう、だね」

「テンションあがるよね。なんで悠里ちゃんは低いの?」

「う、うん。ただ、お兄ちゃんのテンションに引いちゃって」

「……と、とりあえず僕の部屋行こうか」


お兄ちゃんの部屋へワープ、みたいな。抱っこされたまま移動。なんか照れる。仕方ない。ギリギリまで遊ぼっと。









「やった! やったぁ!」


三回全滅した時は嫌になったけど、諦めなくてよかった! ラスボスを倒したぞ!


「よかったね、悠里ちゃん」

「うん! あー、このエンディングちょーいい歌じゃない? サウンドトラックとかでないかなー」


って、思わずテンションあげまくってしまった。


「悠里ちゃん、このゲーム時間かけたもんね」

「うんうん。長かったなー」


始めたのは去年だけど、ちまちまやってたから時間かかったなぁ。


「レベル上げも大変だったよ」

「あー…お疲れ様っ! 愛してるよっ!」

「そりゃどうも」


お兄ちゃんにはレベルあげを頼んでいた。たまにプレイする度にレベルあがってたから、実は私はいいとこどりしただけだったりする。それでもかなり長いんだけどね。


「お兄ちゃん」

「なに?」


苦笑するお兄ちゃんの膝にお尻のせてもたれる。


「お兄ちゃん椅子〜」

「なにそれ」

「説明しよう! お兄ちゃん椅子とはお兄ちゃんをまるで座椅子のようにする私専用の技なのだ!」

「今考えた?」

「うん」


頷くと頭を撫でられた。


「よいしょ、と。んふふ、ぎゅー」

「ど、どうしたの? 急に?」


座り方をかえて正面から抱っこちゃん人形みたいにお兄ちゃんに抱き着く。ちょっとはしたない気もするけどズボンだからセーフ。


「お兄ちゃん好きー」

「……僕も大好きだよ」


さらに頭をなでなでされた。わしゃわしゃって感じに。くすぐったい。髪の毛みだれるけど気にしない。


「お兄ちゃんお兄ちゃん、ちゅーして」

「いいよ」


しばらくそうして、ゲーム画面が最初に戻るまでイチャイチャした。











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