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一晩真面目に考えてみたが、私の頭では学生のうちから稼げる職業なんて水商売とかしか思いつかなかった。
うむむ…あ、家庭教師は……お兄ちゃんじゃあるまいし、誰が年下に教わるよ。
う〜ん。前回のままだろうし、多分私って18歳で死ぬんだよね。
優生さえ助けられるなら未練とかないしそれでいいけど、お母さんたちに親孝行できないんだよね。
お手伝いレベルならともかく、就職して、介護、とかできないんだよね……………は!
いかんいかん。何暗くなってんの私!
らしくない! テキトーでいいじゃん。それに、優生さえいれば私くらいいなくても大丈夫だよね。
うん、頑張ろう。あと2年かぁ。
「はぁ…早くきて欲しいような、いらないような…」
油断するのは駄目だけど、そろそろ水泳も惰性だし、危機感は0だし忘れそう。
だって私、もう3歳だもんねぇ。
来年度に入園予定だし。
「あー、あーぅ?」
優生がにへらぁと笑って私に手を伸ばしてくる。
そっと握りかえす。
「…えへへ」
それだけで幸せな気分になれるから、赤ちゃんって偉大だ。
ピンポンピンポンピンポ〜ン♪
玄関ベルから連動して居間の電話が軽快な音をたてる。
どうやらお客さんらしいが、お母さんは買い物に行っている。
「はーい」
綾ちゃんと実代ちゃんだろうか。あれから二人は時々訪ねてくる。
一番確率が高いのはセールスだが…。
残念なことに私の身長では電話画面から確認できないので普通にドアを開けた。
「あ、お兄ちゃん。こんにちは」
訪ねてきたのはお兄ちゃんだった。勿論、お隣の高文お兄ちゃんだ。
もう一人いる……あ、見たことある。誰だっけなぁ。
「こんにちは、こっちは友達の浩樹だよ」
「ちっちぇーなぁ。えっと、悠里、だっけ」
しゃがんで私の顔を覗き込んでくる学生服の子に私はにっこり挨拶する。
「うん、よろしくね、浩樹君」
「おう。しかしちびなのによく喋るなぁ」
いや、このくらいなら普通の三歳児でも可能でしょ。
「普通だよ」
「普通のガキは英語や数学なんてわかんねーだろ。なぁ天才っ子よ」
…………おい、高文君よ。何話してんのさ。
○
「まぁいいけど…他の人には、私が天才とか言わないでよ」
「わかってるって。なぁ高文?」
「勿論。僕がちゃんと守らせるから安心して」
いやいやいや、あんたがまずバラしてるから!
…はぁ。高文お兄ちゃんやい、頼むよ本当にさぁ。
お兄ちゃんが私の教育でテストの点がよくなったのを怪しんだ親友―浩樹君にも私にも勉強を教えてもらおうとここにやってきたらしい。
まぁ、浩樹君は大人になっても仲が良かった本当の親友っぽいし、まぁ彼くらいならいいか。
「いいよ。ただし、お兄ちゃんの家で、私が教わってるって設定だからね」
たぶんだけど、天才児と知れたら騒がれてしまうし面倒だ。
「よし、じゃあさっそく行こうぜ」
「え、今ぁ? …優生も連れてくからね。お兄ちゃん、抱いて」
「はいはい」
こうして、私に生徒が増えた。
久しぶりの更新。先のシナリオは思い浮かびますが、幼児編は難しい。