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二度目の私  作者: 川木
134/172

高文12

アイスクリームを食べたらまた別のジェットコースターに乗った。

ジェットコースターは一回乗ったら50くらいHP減るからホントに勘弁してほしいんだけど、悠里ちゃんが凄くいい笑顔で楽しいというので仕方ない。

我ながらベタ惚れだ。


「お兄ちゃん、次はあれ乗ろ!」

「あ、あれか……まあ、あれくらいなら」


名前はなんだったっけ。大きな揺れる船からは悲鳴が聞こえるけど、逆さまにもならないし、そんなに大した高さじゃなさそうだ。

と、思った。


うん、まあ、まあね。ジェットコースターほど高くないね。でも安全バーとかなくて体感的には殆ど縦になってとか。……まだ、まだマシだけどね。散々ジェットコースターに乗ったからまだ、これはマシだ。


「このくらいなら恐い、というほどでもない。ちょっとびびったけど」


さすがに子供も隣に乗ってたのに恐いとは言えないのでちょっと見栄を張った。


すると悠里ちゃんはくすっと笑ってぎゅっと手を握る力を強くした。


「お兄ちゃんと一緒に楽しめたから、いつもの100倍楽しかったよ」

「あはは…」


気をつかわれたのはわかっているけど、それでもそんな風に言われたら嬉しくならないわけがない。

ジェットコースターなんてもう二度と乗りたくない!と思ったけど、悠里ちゃんと一緒ならちょっとくらい我慢しようかなって思ってしまう。単純な僕。


それからコーヒーカップにのんびり乗って、降りるとどこかへ行こうとする悠里ちゃんを引き止める。

コーヒーカップといえば次は隣のメリーゴーランドだろう。


「乗らないけど」

「え…乗らないんだ…」


悠里ちゃんみたいな女の子はみんな乗るものだと思ってた。特に年齢制限もないし。というか、回ってくる悠里ちゃんに手を振りたかったのに。

外では駄目って決めたけど、手をつなぐだけじゃなく、ちょっとは恋人っぽいことしたい。


だから乗ってほしいというと、何故かキレ気味に僕も乗ることになった。

ちょっと恥ずかしいけど、女の子と一緒だし大丈夫か。さすがに男一人で乗ったら怪しいし絶対嫌だけど。


「悠里ちゃんはどれに乗りたい? やっぱり馬? どうぜだし一緒のに乗ろうか。たまにはメリーゴーランドも楽しいかもね」

悠里ちゃんは何故か嫌そうな顔をした。別々に乗りたいのかな?









いい時間になったのでお昼をとることにする。ちょっとだけ期待していたけどお弁当はないらしい。仕方ないからファミレスに向かう。


「いらっしゃいませ。二名様でよろしかったでしょうか」


悠里ちゃんはカルボナーラだけ頼んだ。一皿で足りるらしい。少食だなぁ。


「食べたらなにする?」

「んー、いきなり乗り物だとあれだし、お土産屋でもまわろっか」

「…そうだね」


いきなりだとあれな乗り物に乗るつもりだったのか。

相槌をうちつつも話を続けると、別に買いたいものがあるわけでもないらしい。女の子は見てるだけで楽しいというけど、理解できないなぁ。


「お待たせしました」


料理がきた。まずサラダだ。サラダは悠里ちゃんにもあげるつもりで頼んでおいた。


「はい、あーん」

「いっ…ちょっとお兄ちゃん、外ではそういうことしないってば」


せっかくなのでやったのに、悠里ちゃんは恐い顔して怒ってきた。そんなに規律正しくしなくても、キスシーンを見られるとかじゃないんだから大丈夫なのに。


「駄目?」


嫌がる悠里ちゃんだけど嫌がられたりうざがられてはいないと信じて押してみる。

悠里ちゃんは眉を寄せたままだけどちょっと赤くなって、ついに口を開けた。


「あーん」

「美味しい?」

「…うん」


恥じらって俯いてる姿がとても可愛い。これが見たかった。


「よし、じゃあ僕も。うん、美味しい」

「…よかったね」


あ、そういえばこれ間接キスだ。

ちら、と食べながら悠里ちゃんの様子を伺うけど何も言ってこないから気づいてないらしい。残念だ。









ご飯を食べてからお土産屋をぶらぶらして、アトラクションを満喫した。時間を見ると5時5分前だ。


「帰ろうか」

「え? もう?」

「うん」


悠里ちゃんは驚いたように言う。確かに早いけど、悠里ちゃんは子供だしね。

そうは考えたけど、悠里ちゃんがあと一時間だけと言うので、やっぱりもうちょっと遊ぶことにする。

僕もまだ名残惜しいし、なにより悠里ちゃんから延長を言い出したのが嬉しい。


「お兄ちゃん、もっかい全部のジェットコースター乗ろうね」

「うん…え゛?」


とか喜んだことをキャンセルしたい。もはやイジメだ。

いくつもの危険なアトラクションを制覇し、悠里ちゃんはにこにこ笑顔だけど僕は死んだ。


「お兄ちゃん、楽しかったね」

「あ、あははは…あー、うん、段々感覚が麻痺してきた」


うん、なんか恐すぎて逆に平気な気がしてきた。ていうか今僕、地面に立ってるよね?

足元がちょっとふわふわしてふらふらする。


僕の態度から察したのか休憩を提案されたので、近くのベンチに座る。腰をおろした瞬間、はぁとため息がでた。


あー、よかった。揺れてないし動かないし落ちない。生きてる。


「ごめんね。そんなに恐かった?」

「…別に、そんなことないよ」


さすがに、悠里ちゃんに向かって恐いとは言えない。楽しんでるのに水をさすのも何だし、何より年上としての見栄もある。


それに…悠里ちゃんからずっと温もりが伝わってきてたから、前に乗ったよりずっとましだった、と思う。


「だって、悠里ちゃんと手を繋いでたからね。せいぜいいつもの半分くらいだよ」


まあ、単に今日一日で乗りまくったから慣れたのかも知れないけど。


そう言って笑いかけると悠里ちゃんは照れたのか俯きながら僕にもたれてきた。


「なに? 悠里ちゃん? 抱きしめてほしいの?」

「ち、違うよ。弱ったお兄ちゃんを慰めてあげてるのっ。いわば親犬の境地だよ」

「なんで犬?」


恥ずかしかったのか悠里ちゃんは訳のわからないことを言いながら立ち上がる。


「落ち着いた? なら時間だしそろそろ締めに乗ろうか」


そして言われた『締め』の言葉に内心びびってると、観覧車だった。超普通だ。あれなら高いけどゆっくりだから別に恐くない。


僕も立ち上がり、悠里ちゃんと一緒に観覧車乗り場に向かうちょっと待ってから順番がきた。


係員が見てるのに隣に座ったら悠里ちゃんは恥ずかしがるだろうから、とりあえず向かいに座って、ドアが閉まったので隣に座っていいか聞いた。


「は? 駄目に決まってるでしょ。危ないし」


あっさり断られた。もしかして終わりごろで疲れてテンション下がってる? 僕はむしろふたりきりだからテンションあがってきてるのに。


「ちょっと傾くくらいなら平気だって」

「ちょっ、ちょっと!?」


ちょっとむっとして無理矢理隣に座ると思ったより揺れたので、勢いで悠里ちゃんの肩を抱いてしまった。いいかんじだ。



「外から見て、隣合ってるのモロバレだしやめてくれない?」

「悠里ちゃん…冷めてる」

「いや、てか…恥ずかしいし。それに、ロリコンって思われるよ」


恥ずかしがり屋な悠里ちゃんはまた頬を染めつつも僕の立場を心配した。

悠里ちゃんはそこまでロリロリしてないし、外では普通にするってのも僕の生徒や同僚に見られないためだから、観覧車の中でたまたま覗いてるなんて滅多にないんだから全く問題ない。

なので説得する。


「ちょっとだけだよ」


よし! 許可がでた!

僕は遠慮なく悠里ちゃんを抱きしめた。あー、気持ちいい。これだけでもう今日の疲れ吹き飛んだ。


「そ、外から見えちゃうんじゃ…」

「いいじゃん。ねぇ、キスしていい?」

「え…」

「ていうか、そのつもりで観覧車に乗ったんだよね?」


相変わらず見える見えると気にしてる悠里ちゃんだけど、やっぱり悠里ちゃんだってそのつもりだったらしく、顔を赤くした。

その可愛さにいい加減我慢も限界なので答えを待たずにキスをした。


「ん」


何回しても悠里ちゃんの唇の柔らかさは感動する。

そっと唇を離すと耳まで真っ赤になって上目遣いをしてくる悠里ちゃんが目に入る。


「可愛いよ、悠里ちゃん。大好き。降りるまで、もっとキスしていい? 嫌ならやめるよ」

「…お兄ちゃんの、ロリコン」


もっともっと可愛い顔が見たくてあえて尋ねると、悠里ちゃんは真っ赤なまま、僕に顔を近づけた。

瞳を閉じるとすぐに感じる唇の感触に、僕は彼女をより強く抱きしめた。









「悠里ちゃん、今日は楽しかったね」

「……」


帰り際、電車も降りてもうすぐ家、というとこまで来たので話し掛けたのだけど、反応はない。


「……まだ怒ってる?」


観覧車で僕が調子に乗ってキスし続けたせいで、いつの間にか下に着いていて思いっきり係員に見られてしまった。

そこから『ばかっ』と一回怒鳴ったっきり悠里ちゃんは真っ赤になって俯いたまま一言も話してくれない。

電車では返事がないから顔を覗き込んだら頭突きされた上、痛かったらしく睨まれた。あんまりだと思う。


「……」


ついに僕の家の前まで着いた。


「悠里ちゃん、あの…あ」


立ち止まった僕を悠里ちゃんは手を引いて、何故か僕の家の門扉を通り、玄関の前まで行った。


「悠里ちゃん?」

「…座って」

「? うん」


玄関前の一段だけの石段に腰掛ける。玄関ドアを開けたらぶつかるので今まで座ったことはないので新鮮だ。


「…反省してる?」

「してます」

「…お兄ちゃんは、ほんと、もう…ばかなんだから」


僕の頭に手をあてながら言われた。やっぱり恥ずかしがり屋な悠里ちゃんには相当なダメージだったらしい。

ちょっとやり過ぎた自覚もあるので素直に反省する。


「はい、ごめんなさい」


悠里ちゃんは僕の前にしゃがみながら片手で僕の頭を撫でる。まだちょっと照れてるらしく顔は赤い。


「ばか」

「ごめ−んっ」


キスされた。立ち上がり様にキスされて、そのまま立ち上がって悠里ちゃんはすっと僕に背中を向けた。


「ばーか」


そして振り返らずに帰って行った。


しばらく呆然としてから、急に気恥ずかしくなった。同時に嬉しくてにやにやとしてしまう。


可愛いぃぃ−ガチャ


「痛っ」

「? あんたそんなとこ座ってなにしてんの?」

「…ただいま」


母が開けたドアが背中にぶつかって、デートの余韻はきれいになくなってしまった。











でも好き。

と悠里は最後に思ってるけど口には出しません。


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