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アイスクリームを食べてからは体の熱を吹き飛ばすため、今度は違うジェットコースターへ。あ、ちなみに変なこと言ったお兄ちゃんへのお仕置きも兼ねてます。
「た、楽しい?」
「うん!」
主にへろへろしたお兄ちゃんを見るのがね!
普段は柔らかくても何だかんだで頼りになる大きなお兄ちゃんだけに、へろへろしてるのは何だか保護欲そそられてきゅんとする。やってることは保護と逆だけどね。
次は何乗ろうかな。んっとー、あ、バイキングだ。あれも好きなんだよね。割と子供向けだしあれならお兄ちゃんも大丈夫だよね。
「お兄ちゃん、次はあれ乗ろ!」
「あ、あれか……まあ、あれくらいなら」
乗るのはもちろん端っこ!と言いたいけど、お兄ちゃんの反応微妙だから真ん中あたりにしておいてあげる。そんなにおっきくないし、ジェットコースターほど高くも急でもないからお兄ちゃんでも大丈夫でしょ。
「…お、面白かった、ね?」
ジェットコースターみたいに青みがかった顔色ではないけど、若干引き攣った笑みでお兄ちゃんは降りながら虚勢をはった。
「無理しなくてもいいよ?」
「いや…このくらいなら恐い、というほどでもない。ちょっとびびったけど」
本音でてるよ、とは言わずに私はぎゅっとお兄ちゃんの手を握ったまま笑った。
いい加減恋人繋ぎにも慣れたので、お兄ちゃんの顔をばっちり見れる。テンションはどうしてもあがりっぱなしだけど。
「お兄ちゃんと一緒に楽しめたから、いつもの100倍楽しかったよ」
「あはは…」
「次はぁ…そうだ、まだコーヒーカップ乗ってない!」
「ああ、いいね。僕もしばらく乗ってないし」
コーヒーカップは定番で子供も楽しめるものでありながら、どっちがより回れるか競う熱い乗り物だ。
とはいえ、せっかくのデートにわざわざ別れて乗ることもない。ていうか、二人じゃ審判してくれる人いないし。
というわけでのんびりと、お兄ちゃんとお話しながら回さずにのった。
そういえば、コーヒーカップで回さずに本来の速度で楽しんだの初めてかも。
「あ、悠里ちゃん、あれは乗らないの?」
「ん? …いや…乗らないけど」
コーヒーカップの向かいにあるメリーゴーランドを指差すお兄ちゃん。そんなメルヘンメルヘンしたのはちょっと。一回目に乗ったきりで二回目の人生では全く乗ってないけど、改めて乗りたいものでもない。
「え…乗らないんだ…」
「…乗りたいの?」
「乗ってる悠里ちゃんが見たい」
お兄ちゃんは男の子だから乗ったことなくて興味がある、なら付き合ってあげようかと思ったけど見たいだけですか。
てか、なに、お兄ちゃんは乗らずに私だけ乗せるつもり? 幼いころに乗ったことなくて憧れてるみたいな裏設定があるならともかく、中3にもなってメリーゴーランドに乗りたがる人はそういないでしょ。
「きっと、乗ってる悠里ちゃん可愛いんだろうなー」
「……」
夢見がちな顔をされた。本当に25歳かよって言いたくなる。今までも彼女いたくせにどうしてそう私(女の子)に夢見るかなぁ。
女の子がみんなメルヘン好きなわけでも、素敵な何もかもでできてるわけでもないからね。
「あの、お兄ちゃん」
「なに?」
「…一緒になら、乗ってもいいけど?」
くぅぅ、何で私があんなのに。小学生低学年までしか並んでないのは見たらわかるでしょ。いざ乗るとなると普通に恥ずかしい乗り物だ。
「え…ぼ、僕も? それはちょっと恥ずかしいな…」
嫌がるのかよ! 全く、私をいくつだと思って……もしかして、お兄ちゃんの中ではリアルにあの年頃くらいに思われてる!?
「……。お兄ちゃんん、さっきぃ、手ぇ離さないってぇ、約束したよねぇぇ」
「なにその話し方…」
「乗るの? 乗らないの?」
「の、乗ります」
ったく。自分だけ逃れようとか甘いのよ……………あれ? 別に二人とも乗らなきゃよかったんじゃ…。
「んー。じゃあ、僕も乗るけど。悠里ちゃんはどれに乗りたい? やっぱり馬?」
しかも覚悟決めたのか前向きに検討し始めた!
か、完全に墓穴ほったぁぁ!!
「どうせだし一緒のに乗ろうか。たまにはメリーゴーランドも楽しいかもね」
めっちゃいい笑顔された。
バカップルか!!
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