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二度目の私  作者: 川木
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部屋を出て、そう言えば優生はあれきり姿が見えないし声も聞かないことに気づく。

お兄ちゃんと付き合ってることにショックを受けてたみたいだし、外に出てしまった可能性もある。

ロリコンとか言ってたし繊細な優生のこと、衝動的に家出をしても不思議ではない! こうしてはいられない!


私は慌てて階段をおりた。


「あら、悠里ちゃん慌ててどうしたの? 高文君のところへ行かないの?」

「と、お母さん優生どこ行ったか知らない!?」

「? 優生なら部屋にいるでしょ?」

「…え? そうなの?」

「ええ。靴もあるし…どうかした?」

「や…なんでもない」


ただの妄想だった。そうだよね。姉に恋人ができて家出する弟とかいないよね。うぬぼれてごめんなさい。


「そう? そうそう、悠里ちゃん」

「なに? お母さん」

「私、高文君が相手ならガンガン応援するから、もし16で結婚したいなら先に言ってね」

「は!? しないよ!」


なに笑顔で言い出してんの!?


「あら、そうなの?」

「当たり前でしょ。なんでそう思ったの?」

「だって私は16になったらすぐ結婚したかったわ。結局高校を出るまでは待ったけど」

「なんでさ」

「? だって、年上が相手だと新たな世界にどんどん先に行っちゃうのよ? 不安にならない?」

「んー…いや、すでにお兄ちゃんは社会人で、これ以上進まないし」

「悠里ちゃんはのんきねぇ。私、とっくに高文君とラブラブだと信じてたのに、最近まで何もなかったなんて…がっかりだわ」

「えー…」


もしかして私二回目の人生で初めてお母さんをがっかりさせてない? こんなことでがっかりされても対応に困るんだけど。


「幼なじみで年上は本当にいい旦那さんになるわよ。幼なじみだからお互いによく知ってるし、年上だから大抵のことは許してくれるもの」

「そんなにプッシュしなくても、もう付き合ってるから」

「だって悠里ちゃんは結婚する気ないみたいだし…それでも年頃の女の子なの? お母さんは本当にがっかりよ。結婚を許してくれなきゃ駆け落ちする!くらい考えてほしいわ」

「考えないよ!」

「私は考えてたわ」

「…お母さん。自分がそうだったとして、駆け落ちとか非常識なことを娘に求めないで」

「むう…付き合いたてなのに冷めてるわ」

「いや…」


冷めてはないし。めちゃくちゃ好きだし。ただ結婚は別だし、駆け落ちとか論外だから。

ドラマチックなことが好きなのは知ってるしちょくちょくお父さんと二人で小芝居するのは勝手だけど、私に求めないで。私の人生とか平凡だから。


「わかったわかった。結婚は高校出てから考えるから」

「それでも遅いけど…最近の子は進んでるから仕方ないわね」

「進んでる? 関係なくない?」

「? 最近は大学まで進んでる子が多いんでしょ? お母さんのころは女の子が大学行くなんて少なかったけど」

「ああ…まあ、うん。そうだね。大学、行きたいなぁ」


勉強するの自体は昔から面倒とは思っても嫌いではない。特に数学は好きだった。大学で学べたら、楽しいだろうなぁ。


「もちろん、悠里ちゃんは成績もいいし、希望するならちゃんとお金は貯めてるからね」

「…ありがとう」


でもそのお金は、優生に使ってあげて。全部優生に使って。私の分まで勉強させてあげてね。

なんて、言えないけど。でもありがとう。


「じゃあ私、優生に用があるから」

「そういえばロリコンだーとか言ったきり部屋にこもってるみたいだけど…なにしてるのかしら」









こんこん、ノックしたけど返事がない。

おかしいなぁ。いるはずなのに。


「優生ー?」


部屋に入ると、お、いたいた。

優生はベットに入って丸まっていた。何やってるんだろ。ちっちゃい時みたいで可愛いけど。そういえば最近は優生の寝姿なんて全然見ないから新鮮だ。


「優生、寝てるの?」


ベットに腰掛けてそっと膨らみに手を当てて顔を覗き込む。目が合う。


「起きてるじゃない。お返事してくれなきゃ、お姉ちゃん悲しいな」

「…うっさいなぁ。勝手に入ってくんなよ」

「ごめん。怒らないで。優生とお話したいなって思ったの」

「……」

「優生、さっきは私に用があってお兄ちゃんの部屋まで来たんじゃないの? ねぇ、何かあったの?」

「何もねぇよっ。もう黙れよ!」

「!」


突然起き上がって私の手を振り払って怒鳴り、今度は頭まで布団を被って寝てしまった。


「ゆーきぃ、ねぇ、お話しようよ?」

「……」


むう……何を拗ねてるんだろう。あ、もしかして私に恋人ができたから? だったら嬉しいかも。


とりあえず端っこからじわじわと布団の中に入る。


「おい、なんだよ、もう。やめろって」

「お話してくれないならやめないー。一緒にお昼寝しよっか」

「……勝手にしろよ」

「うん」


おっと、予想外の反応だけど優生と一緒にお昼寝というのも中々魅力的だ。

私は喜んで肩まで布団に入って優生にくっついた。私に背中を向けて優生は丸まってるから背中からぎゅーってする。


「おい、やめろって!」

「えー? 別にいいじゃない」

「……姉ちゃんは、あいつにもそうやってくっついてんのかよ?」

「あいつ?」

「あのロリコンだよ」

「ロリコンって…そんな言い方しないでよ。確かにちょっと年は離れてるけどさ。こんなにべたーっとくっつくのは最近からかな」

「…付き合ってんだよ、な?」

「うん。…ヤキモチやいちゃった?」

「………そんなんじゃ、ねーけど。でも姉ちゃんは、俺のなのに。何勝手にあんなやつと付き合ってんだよ」

「……」


ヤバイ。めちゃくちゃ可愛い。嬉しいぃぃー。優生ちょー好きだー。


「お、おい、苦しいって」

「あ、ごめんごめん。んふふふ。優生、だーい好き」

「どうせロリコンの方が好きなんだろ」

「優生は別枠で大好きなのー」

「……ふん。別にどうでもいいけど」

「ねぇ優生、さっきは私に用があったんじゃないの?」

「…達也が…姉ちゃんに恋人いるって言うけど、俺聞いてねーし、姉ちゃんに聞こうと思っても夜いねーし、朝部活で昼もいねーから、仕方ねぇから行ったんだよ。悪いかよ」

「悪くないよ。言わなくてごめんね。最近のことだし、何だか照れ臭いから言いづらかったんだ。怒ってる?」


本当は別にわざわざ言うことでもないし、自分から言う気とかなかったけど、そういうことにしとこう。


「…怒っては…ないけど。でもさ…」

「ん?」


ずっとそっぽ向いてた優生が起き上がって私を向いた。腕をといて起き上がる。

俯き気味に唇を尖らせて不機嫌そうな優生の顔を覗き込む。


「…俺が、あんなやつと別れろって言ったら…別れてくれる?」

「…それは、無理だよ。わかるでしょ?」

「…わかんねーよ。よりによってあんな奴。俺、ぜってぇ認めないし。邪魔するからな」

「そんなこと言わないで」

「なら姉ちゃんは、もし俺に彼女できても平気なのかよ」

「え!? 優生彼女いるの!?」

「いないって、もしも」

「あ、もしも、ね…」


今素でリアクションしちゃったから平気とか言えないし…正直に言っとくか。


「まあ…寂しいかな。可愛い優生がそんなに成長したんだって思ったら嬉しいけど、やっぱり寂しい。ショックだし泣くかも。…でも、相手がいい子なら私は何も言わないよ」

「俺には猫被ってるけど本当は嫌なやつだったら?」

「別れさせる」


そんなもの決まってる。姉には弟が幸せになるよう導く義務があるのだ。


「……俺に嫌われても?」

「それは嫌だけど…優生にふさわしくない子とは付き合わせられないよ」


答えると優生は何故かほっとしたように笑った。

ん? 今なんか私変なこと言ったっけ?


「…なら、いいよな」

「ん? なにが?」

「俺も姉ちゃんの恋人、ふさわしくないんだから別れさせたっていいんだよな。今聞いたからな」

「…いやいや、お兄ちゃんはいい人だし?」

「姉ちゃんに猫被ってるだけだから。俺がロリコンの本性暴いて、姉ちゃんの目ぇ覚まさせてやるよ」


優生はにやっと笑った。

……あれ? なんでこうなった? ヤキモチやいてくれるのは可愛いけど……本気で別れさせそうとされるのは困るんだけど。

でも…私もああ言ったし、やめろとは言えないよね。お兄ちゃんがいい人ってわかるまでだろうし仕方ないかな。











次話は高文視点です。

本当は浩樹視点にしようかとも思いましたが、無難に高文視点で。


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