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「相談? もちろん聞くわ。なぁに? お姉ちゃんに言ってごらんなさい」
相談があるの、と切り出すと嫌に嬉しそうに彩ちゃんは微笑んだ。
「えっと…機嫌いい?」
「妹に頼られて不機嫌になる姉はいないわよ」
「…そっか、うん。えっと…まあ、相談と言っても…友達の話なんだけどね」
「友達? 友人関係で悩んでる、じゃなくて友達が悩んでるってお話なのかな?」
「うん、そう」
「なーんだ…モチベーション下がるわぁ」
「彩ちゃん、ちゃんと聞いてあげなきゃ。悠里ちゃんなりに真剣なんだから」
「わかってるわよ、と。はい、相談は何ですか?」
何だか言いづらいな。つまんない嘘ついちゃったし。でもこんな相談、私のことだとは言えないし。
「あの…友達が、ある人にキスされたんだけど…その人って、友達に気があると思う? あ、友達はその人が好きなんだけどね。でもその人には好きな人がいるって聞いてるし…」
「他に好きな人がいるならあれよ、その友達遊ばれてんのよ」
「いやっ…あ、遊ぶよう人じゃない…らしいです」
「ふーん? まあ状況によるわね。私はあんたにたまにキスするけど、だからって気があると思われるとさすがに迷惑だわ。…いや、迷惑は言いすぎにしても……困るわね」
「そうだね。もしその人が友達のことを全く意識してなくて、ただ単に愛情表現としてキスする可能性はあるよね。彩ちゃんみたいにそういう家だとなおさら」
「あー…」
まあ、彩ちゃんの家はね。ご両親もキスしまくりだしね。アメリカナイズだしね。でもそういう家はあんまりないんじゃないかな。
「いや、その人ってのは今まではキスはしなかったから挨拶にキスとかそういうタイプじゃないんだよね」
「じゃあ好きなんじゃないの? 情報を小出しにしないで。いらいらするわ」
「あー…ん、ごめん。まとめて言うね。」
あくまで私の友人という前提でだけど一連の流れを全部説明した。
「んー…その友達って、なんか悠里に似てるわね」
「え、そう?」
「流されやすいとことか、変に優しいとこ。類友っやつ?」
「まあ、そうかな」
「自分のことは自分でわからないもんね」
実代ちゃん相変わらずナイスフォロー。
「まぁ、そうね。とりあえずその友達は…多分、押せばいけるわよ。他に好きな人がいても付き合ってるわけじゃないし、キスが特別な意味だって言うのにキスしてくるんだからかなり好意持たれてるわよ。というかその友達に片思いだったんじゃない?」
「そ…そう? そうかな?」
やっぱり、ちょっとは脈あり…なのかな。うー、やばい、にやけそう。
「そうよ。だから友達にもそう言ってあげなさい。悠里が悩むことなんてないわよ。そんなことより、今年の夏はどうする?」
あわわ、おう、おおっと。友達の話なんだから気づかれないようにしなきゃ。話題変換ね。
「そういえばもうそんな季節か…。私はどこでもいいよ、泳げれば」
「悠里ちゃんは本当に泳ぐの好きだよね」
「好きだけど、そうじゃなくても夏は暑いし無性に泳ぎたくならない?」
「別に」
「私はあんまり泳ぎが得意じゃないから…」
二人ともつれない。彩ちゃんなんか私ができない泳ぎもできて得意なのに好きじゃないんだから不思議だ。
「えー。水の中ってだけで気持ちいいと思うけどなぁ」
「しかもあんたの場合放っておいたら5キロくらい泳ぐじゃない」
「といっても…一気にじゃなくて休憩挟んでるし」
「とにかく、泳いでる間は話せないし、あんた中々戻って来ないから今回は海はなしよ」
「えー」
「去年と一昨年も海行ったじゃない。飽きたわ」
「前はそれほどでもなかったけど中学入ってからより好きになったよね」
「部活で泳ぐ機会増えたからかな」
「増えたのになんで余計に泳ぎたくなるのかわからないわ」
うーん、泳ぐの楽しいけどなぁ。ランナーズハイ、みたいな?
まあ、中毒じゃあるまいし一週間くらい泳がないくらい平気だけどね。テスト週間とかも余裕で泳いでないし。
旅行先はいつも通り二人に任せるか。
とりあえず…今日は、お兄ちゃんに会いに行こうかな。まだ、告白する勇気はでないけど。
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明日はちょっと溜まったので4話一気に更新します。




