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「あ、悠里ちゃん」
「あ、実代お姉ちゃん、彩お姉ちゃんも久しぶりだね」
「悠里ぃー!」
彩ちゃんは私に気付いた途端に元気よく走ってくる。
そんなに距離があるわけじゃないのに元気だなぁ。まぁ好かれて悪い気はしないけど。
「そんなに走らなくても…え? 何、ちょ、待っ、ぎゃあ!」
押し倒された。ちょ、子供だから低いしそう痛くないけど、これ一歩間違えば大変だよ。アスファルトだし。
「悠里ぃ、どうしてこーえんに来てくれないのよぉ!」
二人は去年から私立の幼等部に通っていて、最初はあんまり遊べなくなると言う二人をなだめていて、それでも2日に一度は遊んでいたのだ。
しかし数ヶ月前に優生が生まれてから私の付き合いがぐんと悪くなったのがかなり不満らしい。
「うぐ、い、言ってるでしょ? 弟が生まれて忙しいの」
だからごめんねと言うと彩ちゃんは私の上に乗ったままいやいやと頭をふる。
「ズルイズルイ! そんな弟にばっかかまけちゃ駄目!」
「いや、まぁ…確かに最近付き合い悪いけど…」
「悠里ちゃん、私たちのこと嫌いになっちゃったの?」
彩ちゃんに遅れてやってきた実代ちゃんは、でもちょっぴり涙目だ。
私の方が年下だけど感性は変わってないのであまりの可愛さにやられつつ、罪悪感にさいなまれ私は否定する。
「そんなことないよっ。私、実代ちゃん大好きだもん」
「…ホント?」
「うん。可愛くて優しい子を嫌いになる人なんていないよ」
「…私も、悠里ちゃん好きだよ」
舌足らずで可愛い! あーやっぱり女の子は可愛いなぁ(優生には負けるけど)。
「悠里! あたしのこと忘れちゃめーなのよ!」
「ぎゃふ! 忘れてないない!」
忘れてないからいい加減マウントポジションをといて、襟元つかんで揺さぶるのを止めて!
「彩ちゃんのことも大好きだって! 好き好き愛してる!」
「…あ、あ彩お姉ちゃんでしょ!」
って結局やめないの!? 照れ隠しなのは分かるけどマジで苦しいです!
「彩ちゃん、悠里ちゃんいじめちゃダメだよ」
「い、いじめてない! 悠里はあたしたちの妹なんだからいじめないもん! ほら、たっちして!」
私は勢いよく立ち上げった彩ちゃんに引っ張られて無理矢理立たされる。
うぬ〜、最近相手をしなかったからかパワーアップしてるよ。
「…大丈夫?」
でも可愛いから許しちゃう! 自業自得だしね。
「うん、大丈夫だよ」
「良かった、じゃあ遊ぼうか」
「…あ〜、でもこれから帰るところで……う」
昼の部の水泳が終わり(お兄ちゃんがいるのは夕方からだけだけど、何度か行けば慣れたのでお母さんもバスならと許してくれた)帰る途中なのだ。
途端に涙目になる二人。うぅ…肉体的には年上と分かってても、泣く子には勝てない…!
「えっと、じゃあ弟も紹介したいし家にくる?」
「いいの?」
「いくいく!」
疑問ながらも嬉しそうな実代ちゃんとくる気満々の彩ちゃん。断るわけもなく私は苦笑しながらうなずく。
「うん。いっつも公園で遊んでばっかだしね」
そういえば私二人の家知らないけど…まぁいいか。
「じゃあ行こう! 案内してね」
案内と言うほど距離はないのだが…まぁいい。
「彩ちゃ…彩お姉ちゃん、実代お姉ちゃん、手を繋がない?」
「いいよ」
「悠里ってあまえんぼーよね。あたし右ね」
「じゃあ私が左。じゃ、行こうか悠里ちゃん」
「うん」
私は二人に挟まれてさながら連行されるように公園を出た。