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最終章 それから

 

「そういえば、エリザベスさん」


「む? どうした」


「勇者王子さま方とマリアさんが、その……魔王を退治したときのことですけれど、わたくし少し疑問があるのですが」


「なんだ、私もすべてを把握しているわけではないぞ、レミリア」


「えっと、魔王……と呼ばれた初代聖勇者。遥か昔、精霊に選ばれし五人の勇者と戦い、結果的に地精霊の勇者アデリーンさまが単身で魔王を封印した、ということでよろしいですのよね?」


「ああ。だがそのことはくれぐれも」


「わかっていますわ、これは王国連合にとって『不都合な真実』。決して他言は致しませんが、わたくしが疑問に感じたのは、どうして前回の戦いでは地精霊の勇者一人がその身をもって魔王を封印したのに、今回は皆さまの力を結集して魔王を……その、昇天させた。その差はいったいどこにあったのでしょう」


「ふむ……その点については私自身疑問に思ったのだが、一つの仮説をたてた」


「お聞かせいただいても?」


「ああ。マリアどのが見聞したという過去の記憶によれば、かつての勇者たちは精霊に選ばれて力を発現する時期に、かなりの差異があったようだ。もっとも早く勇者として目覚めたのがアデリーン、そして魔王との決戦時、いちばん遅咲きであったのは、二代目聖勇者ランドルフであったと」


「そのことが、なにか関係が?」


「目覚める時期が違えば、当然勇者としての力量にも違いが出てくる。かつての戦いでは五人の勇者たちが精霊の力を一つに結集するのは困難だった、アデリーンどのはおそらくそう判断し、自分一人で魔王封印に踏み切ったのではないかと」


「哀しい……話、ですわね……」


「ちょっとあなた方!」


「わあ、なんだフランソワーズ・アインバッハ! さっきまで静かに作業に集中していたと思ったら」


「貴女がたが、お喋りに夢中でお手もとがお留守になっているからですわ。見てごらんなさい、わたくしのこの華麗なイモの皮むき技術を! お~っほっほっほ!」


「お前、皮にめちゃくちゃ身が残ってるじゃないか! こんなのは皮むきとは言わん!! それに、なんだっていきなり我々の朝食準備作業に割り込んできたのだ」


「フ、フランソワーズさまのような上流貴族のご令嬢には、このような下々の労働は似つかわしくないのではと……」


「お~っほっほっほっほ! あなたがたったら、本当に世の流行に疎いのですわね、いやになってしまいますわ。いま! もっともトレンドなのは『料理』! 貴族の子女といえど、家事炊事を身につけ非常時に備えるのが! キレッキレの貴族令嬢! なのですわよ!」


「な、なんだそのけばけばしい雑誌は……流行に乗せられやすすぎるのも考えものだと思うぞ、フランソワーズ……我らは女騎士を目指すものとしてだな、常に実践的な技術を身につけるために、こうしてマリアどのの代わりに毎朝女子寮の朝食の手伝いを」


「うぅ~…………ぐすっ、ぐすん……」


「あらあらどうなさったの、アリーシャさん。玉ねぎが目に染みたんですの?」


「うぅうフランちゃん、そうじゃないの。もう、このキッチンで楽しそうに料理をするマリアお姉さまを見ることがないと思うと、アリス悲しくてかなしくて、うひぇえええ~~~」


「アリーシャ、もう二度とマリアどのと会えなくなるわけでもあるまい、そのようにいつまでも泣いていると、マリアどのに笑われるぞ」


「う、うん、うひぅう」


「けれど、マリアさんは一時的な過労で倒れただけだったんですわよね? なにも勇者アカデミーをやめなくたって……精霊の力は完全になくなったわけではないんでしょう」


「ああ、精霊の力はかなり減衰したようだが、なくなったわけではない。もっとも勇者王子たちは各国で政務に追われ、それどころではないようだ」


「四大王国連合が総がかりでの総力戦、でしたものね……聞くところでは、散発的ながら魔物も出現しているようですし。それに、マリアさんもいちおう仮にも勇者なんですのよ。なにもこんなあっさりとアカデミーを退校しなくても」


「おや? レミリア、お前はマリアどのに敵対心を燃やしていたと私は記憶しているのだが、本当はもっとアカデミーで学友として友情をはぐくみたかったのかな」


「そそそそんなわけあるわけないでしょうっ! 中流とはいえわたくしは貴族、マリアさんはただの田舎村の村長の娘、一般庶民でしょうっ」


「その一般庶民が昏倒したとき、ぼろぼろ泣いて取りすがっていたのはどこの誰だったのだろうなぁ?」


「わあああ、わあ、わああぁあ~~~!」


「ちょっと! だからあなた方、うるさいですわ! ほら、アリーシャさんも早く朝食の準備をしてしまいますわよ」


「うん……あ、フランちゃんの剥いた皮は勿体ないから、洗って油で揚げておくね」


「ふう…………それにしても、こうして王都にいるとジクロア村はいかにも遠く感じる。マリアどの……元気でやっているだろうか」


「……………………」

「……………………」

「……………………」


・・・・・・・・・・。



「おおっ、もう少しだんべマリア!」

「ふんぬぬぬぐぅううう~~~~~~~~~!」


 めりっ、みしみし……大地にびきりとひび割れが走り、しっかり食い込んでいた切り株の根っこが、徐々に姿を現してきます。

 切り株にがちりと指を食い込ませると、私は腰を踏ん張り直し、一気に力を全力全開しました。

「ぬふぅうう、ぐぬぬぬぬ~~~~~~っっっ!」


 はい、マリア・マシュエストでございます。


 のっけから少々乙女らしからぬ声をあげてしまい、誠に申し訳ございません。

 実はですね、ここは私の故郷であるジクロア村が、かねてより新たに開墾しようと思っていた土地なのです。が、そこに思わぬ巨木の切り株が見つかってしまい、どうにもこうにも、これを取り除かないと畑を耕せないということで、私が駆りだされたのでございます。


 あれからはや数カ月───。


 あの日、魔王さんいえ初代聖勇者さまを空に見送って以来、私たち「精霊の加護を受けし勇者」たちの力も、ずいぶん弱くなってしまいました。グランディールも出せないみたいですし、おそらく人型精霊なんてもう二度と召喚できないでしょう。

 けれど、それは世界がそこまでの力を必要とするほどの危機に見舞われていないということの証でもあります。「怪力」というなんだかなぁな能力を身につけた私も、こうして村のために少しでも役に立てると思えば、そう悪い気はしません。


「どっせっせぇええええ~~~~~~いっっっっ!」


 何度も申し訳ありません。

 私が地面からずぼりと引き抜いた切り株は想像以上に巨大なもので、それは天高く舞い上がったかと思うと、ひゅるる~っと弧を描いて地面に激突しました。

「おぉ~っ、さすがは勇者マリアさまだべえ」

「やめてくださいよ、メリデさん。それよか、あのでっかい切り株、どうしましょう」

「あれは天日に晒してから、ちょっとずつ削って薪にするべか」

「そですね。下手に私が手を出して、粉々になっちゃったらアレですし……ハハハ」

 と、そのとき遠くから私を呼ばわる声が聞こえてきました。

「おぉ~い、マリアねえちゃ~~~ん、メリデのおっちゃ~~ん!」

「ガズ! ああ、お昼を持ってきてくれたのね、ありがと」

 木剣を肩にかけた少年は、片手に弁当の包みを下げていました。

 ええ、村いちばんの悪戯小僧、ガズです。けれど最近はいたずらはぴたりとなりをひそめ、村の仕事の手伝いに精を出しているようです。

(これって、やっぱりブルーさんの影響……なのかしらん)

「ディルレおばちゃんからの差し入れだよ、ほれ」

「おお、すまねえなあ。じゃあちょっくら昼飯にすんべえマリア、ガズ」

 しかし少年は私とメリデさんに弁当を渡すと、自分の分は傍らに置いて、木剣を握り直したのです。

「俺は午前の鍛錬をしてから食うよ。二人は先に喰っててくれよ。あ、これ水筒な」


 びゅっ、びゅっ、ぶんっ、ぶんっ。

 そう言って少年は木刀で素振りを始めます。

 あの日、近衛騎士ブルーさんに教わった通り、毎日欠かさず午前と午後に素振りを続けているのだそうです。その他の時間は畑仕事や家畜の世話などに使い、ガズが言うにはそれも「鍛錬のうち」なのだとか。

(あのいたずら小僧が……変るもんだなあ)

 妹思いで面倒見がいいところは相変わらずですが、そろそろガキ大将も十三歳、お山の大将は卒業、といったところでしょうか。ディルレのおかみさんお手製の、干し肉と野菜のサンドイッチを頬張りながら、私はちょっと感心しながらガズの素振りを眺めていました。

「あれ……ガズ、ねえちょっと」

「ん、なんだよマリア姉ちゃん」

 ふと気になった私は少年に近づき、手にした木刀を見せてもらいます。

「これって、ブルーさんにもらったものより長くない?」

「ああ。これは俺が枝から切り出したんだよ。師匠に、身長にあった長さの得物を使えって言われたからな」

 そ、そういえばこいつ、なんか前よりずっと背が伸びてませんかね。

 以前は私の肩ほどもなかったのに、いつの間にこんなすくすく伸びて。やはり男の子ということなのでしょうか、もう半年もすれば私なんか追い抜かれそうです。

 くっ、ガズのくせに生意気な。

「ふうっ。じゃあ俺も飯にすっか。おっちゃん、飯食ったらその大穴、俺が埋めといてやるよ」

 ああ、さっき私がひっこ抜いた切り株の穴ですか。それくらい私でも出来るのですが、ガズはこれも鍛錬になると言って、私には家に戻るように言ってくれました。

(なんだか急に逞しくなりやがって、頼もしいやらこそばゆいやら……)

 ガズの言葉に甘え、私は村に戻ることにしました。


「さってと、午後は夕飯の支度でもしてから、豚舎の掃除でもすっか」


 こうしてジクロア村でいつも通りの日々を過ごしておりますと、王都やアカデミーで過ごした日々が、まるで夢のように感じられます。

 貴族の子弟に疎まれながらの学園生活、エリザベスさんとタッグを組んでニールセンたちと張り合ったこと。そうそう、王城の地下牢に閉じ込められたこともありましたっけ。

 そして精霊の力が弱まったという皆さまを訪ねて、王国を訪ね歩いたこと……普通の村娘なら一生縁のない、貴族のお嬢さまのお友だちもたくさんできました。最初は居心地の悪さばかり感じていたアカデミーですが、私はいつの間にか勇者アカデミーの一女生徒になっていたような気がします。

 アカデミーを辞めたこと、後悔してはいません。

 精霊の加護を受けし勇者としてのお勤め、すなわち魔王を滅ぼ……というか天に見送った以上、もう私はこれ以上アカデミーにいる理由を失ったというか。

 もちろん、引きとめて下さる方はたくさんいらっしゃいました。勇者王子さま方はもちろん、エリザベスさんやアリーシャちゃん、それにあのニールセンまでもがむっつりした顔ながら「ここでもっと多くを学んでからでもいいのではないか」と言ってくれたのは驚きでした。

 ええ、あのままアカデミーに在籍することはできたでしょうし、それはそれで実りのある日々が送れたでしょう。

 けれど、勇者になろうが、魔王を倒そうが、やっぱり私は田舎村の村長の娘なのです。

 そのことを卑下するわけではありませんが、やはり人にはその人に相応しい居場所というものがあるような気がしたのです。

 まあ、里心がついた、というのも正直ありましたが。


 ただ一つの心残りは、やはり勇者王子さま方にはっきりとお答えしないまま村に戻ってきたことでしょうか。

 まあ、みなさま魔王との決戦の後片付けに忙殺され、そんな浮いた話をするような時間もなかったんですけどね。

 いえ……おそらくそれも自分自身に言い訳してるだけかもしれません。

 はっきりと答えを出すのが躊躇われたというか、つい皆さまの忙しさにかこつけて、アカデミー退校を決めてしまったというか。

 私の中では───もう、答えは出ていたんですが。


「けど、やっぱり言えませんよね、冷静に考えれば……私はただの田舎村の村長の娘だし。もう勇者としてのお勤めは済んだんだし。向こうは……一国の王子さまですし、ね」


 あー、やめやめ。この話はやめにしましょう。

 考えてみれば、勇者に選ばれてしまった時から、私は今のような状況を望んでいたではありませんか。いろんな人から「お前が五人目の勇者のはずがない」って言われて、私自身も「やめられるものならやめてしまいたい」と思っていたじゃないですか。

 王都に住めなくても、舞踏会に出られなくても、別に困ることなんかありゃしません。

 妙に胸の奥がざわめいてしまい、私はそれを振り払うかのようにキッチンにこもって夕飯の準備を始めます。

 その時、戸口が開く音が聞こえました。

 はて、父は畑仕事に出ていて、まだ帰ってくる時間でもないのですが。


「どうしたのー、父さん。あ、ま~た井戸水飲みすぎたんでしょう。父さんすぐお腹ゆるくなるんだから。下痢ぴーぴーなんでしょぉ?」

「………………」

「前にさぁ、マッケイさんからもらった薬草で作った下痢止め! あれ戸棚にあるから飲んどいた方がいいよ。前に下痢ったときなんか、もう何時間もおトイレ占領されて、私おしっこ我慢できなくてお隣まで借りに行ったんだからね。もー、危うく漏らすとこで、めっさ恥ずかしかったんだから!」

「……………………」

 手際良く野菜を切っていきながらそんなことを喋っていたのですが、なぜか父の返事がありません。

 ええと、ぶっちゃけ不審者とか泥棒が入ってきたかも、なんて考えは頭をよぎりもしませんでしたよ、ジクロア村ってまあそういうところですから。

 村に危険が迫ったときなんか、魔物が出現したときくらいですからね。

「っかしいな、もしかしてディルレのおかみさん……?」

 さすがに不審に思い、私は包丁を手にしたままキッチンからひょいと顔を出して戸口の方を見ました。


「ひゅぇっ」


 一瞬、呼吸が止まりました。

 ええ止まりましたとも。

 なぜって、そこに突っ立って、いえ佇んでおられたのは美しい金髪もまぶしい美青年だったのですから。

「レ…………レオ、ナルドさま……」

 見る者すべての心を浄化するような美しい青年の美貌に私は見とれ、そしてさ~っと血の気が引いていきました。

 わたし、さっきから大声でなにを言ってやがりましたか……下痢とか下痢とかトイレとかおしっこ漏らすとこだったとか、あぁあああああああああああああああああああああ


 死のう。

 手にした包丁に目を落とし、ふとそんなことを思いました。

 こーゆーのはさしずめ「恥死」とでもゆーのでしょうか。

 みなさま、どうかお元気で、さようなら。


「マリア……元気そうだね。安心したよ」

 ええ、ついさっきまでは元気だったのですが、今はもうダメです。しにます。

「その、残務整理がようやく終わってね。王都もようやく落ち着きを取り戻したよ」

 それはようございました。わたくしも勇者として頑張った甲斐があるというものです。しにます。

 って、あれ?

「レオナルドさま、あの、お一人でいらしたんですか?」

 ふと私はレオンさまたちがこの村に初めてやって来た時のことを思い出していました。

 護衛の兵隊さんだけでなく、王子さまそれぞれに食事係だのなんだのとお付きの方がいらっしゃったはず。今回もお伴の方がおられるなら、もっと村が騒がしくなってもよさそうなものなのですが。

「ああ、ボク一人だよ。なんていうか、とても大事な用事だからね。さきに畑でお父上に挨拶したところだよ。こういうことはきちんとしておかないと」

「はぁ」

 レオンさまがたったお一人でジクロア村に……ええと、魔物が出現したとか、そういう話は聞いてませんし、第一それなら兵隊さんも随行してますよね。

 考えまいと思っても、自然と私の顔は緩みそうになります。

 レオンさまがこんなド田舎にわざわざやってくるというのは、やはりその、わ、私に会いに来て下さったということでいいんでしょうか、うえへへへ。


 私がアホのようにやにさがっておりますと、レオンさまは優雅にマントを翻らせ、私の前にひざまずいて手を取って下さったのです。そして熱い眼差しで見つめるものですから、もう私は幸せすぎて脳みそがゆだりそうです。

(そぉかぁ、私がアカデミーを退校してさっさと里帰りしてしまったから、きちんと別れの挨拶をされに来られたんですね。ああなんと礼儀正しい、まさにプリンスの鑑!)

 勇者業が終わった以上、もう二度と王都に出向くこともあるまい、レオンさまとお会いすることもあるまいと思っていたのですが、このような僥倖に恵まれようとは、私は本当に果報者です。

「レオンさま……わたくしももう一度レオンさまにお会いしたいと思っておりました」

「ああ。キミもそう言ってくれるんだね、ボクは嬉しいよマリア」

「レオンさま……」

「マリア……一緒に来てくれるね?」

 えっ。

 そ、それってまさか……まさか!


「レオンさま! また魔物が現れたんですね!」


 すわ一大事と息巻く私に、金髪の王子さまはなぜだかちょっぴり悲しそうな顔で微笑みます。

 あれっ?

 私、なにかリアクションを間違ってしまったのでしょうか。

 するとレオンさまはなんというか所在無げに視線を巡らせると、「よし」と小さくつぶやいてすっくと立ち上がりました。

 私よりずっと長身の王子さまを見上げる格好。彼はものすごく真剣な表情で私をじっと見つめるのです。

「ボクはこういうことに慣れてないから、その、はっきり言うよマリア」

「は、はいっ」

 思わずつられて直立不動になる私。

「ボクにはキミが必要なんだ、マリア」

 以前、そっくり同じことを彼に言われたことがあります。

 場所も同じ、ここジクロア村で。

 ただし、そのとき彼が必要としていたのは「五人目の勇者」としての私でした。

 けど。


「キミを愛している、マリア。ボクの妃になってほしい」


 キミヲ・アイシテイル

 ボクノ・キサキニ・ナッテホシイ

 ガガガピーピーピー、コトバ・ノ・イミガ・リカイ・デキナイ

 リカイフノウ・リカイフノウ・リカイ、フ、ノ、ウ……(ぷしゅー)


 それは私がいちばん望んでいた言葉。

 あの舞踏会の夜、四人の勇者王子からされた告白に私はずっと迷っていました。

 でも私の中でみなさまへの思いは日に日に募り、そして成長して行き……私はたったお一人だけを強くお慕いしている自分に気付きました。

「マ、マリア? 大丈夫かい」

「え、ええ。ぜんぜん、ぜんぜんまったく大丈夫……じゃありま、せ」

 腰から下の力が抜けて、へなへなとよろける私を逞しい腕が抱きとめて下さいました。

 あの激戦の後、同じように昏倒した私を力強く抱いてくれた、同じ腕が。


「レオナルドさま。私も……わたしもあなたを愛しています。世界中の誰よりも」


 そっと目を閉じた私の唇に、レオナルドさまの唇が重なって……はい、わたし死んだ! いま、幸せすぎて完璧に死にました!


 幸せ死バンザイ!

 


後はエピローグがちょっとだけありますよ

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