事件のはじまり
ぱちっ
何時も通りの目覚め。でも、どこかそわそわして落ち着かない。
ーーーー何かが、起こる予感がするーーーー
ぼくの予感は、何時もよく当たる。いい時も悪い時も同じ感じがする。
だから、楽しんだ者勝ちだ!!
ぐ~! ぐ・ぐぐ~
思わずお腹が鳴った。下から美味しそうなおみそ汁の香がすう。取りあえず布団を「えい、やっ!!」と跳ね除ける。そして、気持ちだけ(・・)勢いよく階段を駆け降りる。《 床が抜けるといけないからね 》
「おはよう」
台所では、今日もおばあちゃんが朝ご飯の用意をしている。とんとんと包丁の音や、ぐつぐつと鍋の音が優しくひびく。
仕事が大好きなお母さんは、ご飯のことをよく忘れてしまう。だから食事は、おばあちゃんがバランスのとれたご飯を毎日作ってくれるので、それを美味しくいただいている。
「おはよう。すぐ食べるかい? 」
「うん。先に、ご飯にする」
席につくと、おばあちゃんがすぐにご飯をよそう。
今日のメニューは、鮭の塩焼きと漬物、あと大根の味噌汁。
「いただきます」
食べながら何気にテレビを見ると、ニュースによく見知った人物が映った。クラスメイトの山田 栄 (やまだ さかえ)こと山ちゃんだ。
山ちゃんは、ものすごく大きな虫籠を抱えていた。なぜけ虫籠は、中が見えないように黒く塗られていた。一体何が入っているのだろうか?
食べるのを中断して、テレビをじっと見つめた。虫籠が、ズームで映されていく。ぼくは、テレビをじっと見つめた。
山ちゃんが、虫籠を地面に置いて、手を入れて中のものを取り出した。
なんだ??
ぼくは、ズームされていく、山ちゃんの手の平の上にあるものを、じっと見つめた。ふうぅ、後で悔やむで後悔。そう、ぼくは見てしまった。
それは、・・・蟻だ!!
驚いたことに、サイズがありえないぐらいに大きかった。普通の蟻のサイズは1センチ~2センチ未満が多い。ところが、虫籠の中から出てきたのは、山ちゃんの手のひらよりも大きかった。さらにそのサイズの蟻があと三匹も虫籠の中にいるというのだ!
あんなに大きいと、蟻とはいえグロテスクだし怖い。きっとぼくなら、見つけたら叫んで逃げていただろう。実際、さっきまであった食欲はなくなった。
「ごちそうさま」
「おや? どうしたのだい。まだ残っているよ。体の具合でも悪いのかい?」
心配して、お婆ちゃんがぼくの額に手をあてた。
「熱は、ないようだね・・・」
「うん。残してごめんなさい」
部屋に戻ると、机の上に置いてあるランドセルを背負い、学校に向かった。どことなく、歩みはゆっくりだ。
「いってきます」