3 もう一つの出会い
続きました。読んで頂けると嬉しいです!
新宿に降りて、私は眩暈を起こしそうになってしまった。
人の熱気というか、人が多くてむせ返るというか。
若い人もいるけれど、大人の人も多いみたい。スーツ着てたり、ちょっと綺麗な格好して腕組んでるような恋人さんっぽい人たちにもすれ違ったけれど……。どんな仕事してるんだろう? もう仕事終わったとか?
あとは私と同じように、キャリーケースを引いてる人とか。外国の人も多いように思う。
そりゃそうか。田舎の都会に住んでいたとはいえ、全体の数が元々違うか。一人納得しながら、私は地図を片手にどこの改札口に出ていいか看板を探して……いるのだけど、いまいちわからない。だって東と西の出口が一緒とか意味不明なんだもん。
こういう時はどうしたらいいんだろう。駅員さんどこにいるか見えないし。
歩ってる人に聞いてもいいかな? 答えてくれるかな。若い人よりおばさんとか、おじさんとかがいいかな?
ちょうどその時、紫色のスカーフを巻いた上品そうなおばさんが目の前を通り過ぎたので、急いで近づいて肩を叩いた。
「な、なにあなた?」
すごい形相で睨まれた。茶色の色付きメガネの奥が怖い。
「あ、あの、歌舞伎町に出るには……」
「知らないわよっ! こっちは急いでんのよっっ」
まるで汚いもの振り払うかのように、言葉を投げつけられた。
「……ひどいなぁ」
ただ出口を知りたかっただけなのに。
「ねね、道に迷ってるの?」
がっくり肩を落としているところに、私の肩を叩く男の人がいた。
「え?」
びっくりと、もしかしたら教えてもらえる、という期待を込めて振り返った。
「……」
そこには、眉毛と唇にピアスを開け、見るからに顔色悪いですってくらい白くて目の周りを黒く縁取った人がギロッと私を見下げていた。
「あ、い、いえ。困ってません。困ってなんかいません」
怖い。なんかヤバそう。薬やってそうだし。逃げなきゃ。
「え? そうなの?」
ゆっくりと首を傾げられた。前髪も後ろの髪もほぼ同じ長さで肩にかかるくらいの黒髪。その黒髪はストレートでさらさらいいそうなくらい、サラリと揺れ――。って、そこ注目するところじゃないよ、私。
ギュっとキャリーケースの持ち手に力を入れる。何も聞かなかったことにして、その場を逃げようとした時、ピアス男の手が私の押さえていた手に重なった。
「ひっ」
思わず小さな悲鳴が出てしまう。
「んー。……ロフト行きたいの?」
「ふぇ?」
自分でもわかるほど、間抜けな声をあげてしまった。今なんて言ったの? この人。
「ロフト、行きたいんでしょ?」
聞き間違いではないようだ。
「あ、あのライブハウスの……」
「一緒においでよ」
「へ?」
電車から出てきた人たちが階段、エスカレーターから次々と降りてくるざわめきが、一瞬にして消えていった。そう思えたほど私はびっくりしていた。
一体この人はなにを言っているのか、と。