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星を巡る旅と、新しい旅のしおり




機鋼帝国アーガスと魔法国家群、そして精霊たちが棲まう大自然。


かつて相容れなかった世界は、一人の灰色の青年がもたらした『受容の光』によって、緩やかな共存への道を歩み始めていた。


巨大な装甲艦は花々を纏う飛空船として生まれ変わり、使徒たちが遺した穢れは、澄み切った大地のマナへと還っていった。


星の記憶を巡る長き戦いは、誰一人として取り残すことなく、最も温かい形で幕を下ろしたのである。


「温かな食卓と、変わらない乙女たち」


数ヶ月後。


始まりの場所である辺境の村、その外れに建てられた大きな丸太小屋のテラスにて。


「美味しい! このスープ、やっぱりエリスが作ってくれるのが一番好きだな」


アッシュは木製のスプーンを口に運び、幸せそうに灰色の瞳を細めた。


ぽかぽかとした陽だまりの中、彼の周りにはいつものように、騒がしくも愛おしい仲間たちが集まっている。


「ほ、本当ですか!? よかった……昨晩から徹夜で煮込んだ甲斐がありました!」


エリスが顔を真っ赤にして、エプロン姿のまま嬉しそうに身を乗り出す。


「ちょっとエリス! 師匠の胃袋を独占しようだなんて狡いわよ! ほら師匠、私のも食べて! 特製の風魔法でじっくりローストしたお肉よ!」


シルヴィが負けじと、切り分けた肉をフォークに刺してアッシュの口元へと運ぶ。


「あ、ありがとうシルヴィ。あーん……うん、すごく柔らかい!」


「ふふん、当然でしょ!」


「おいおい、肉といえば私の狩ってきた幻獣の肉も忘れるな! ほらアッシュ、戦士の筋肉を作るためにたくさん食べろ!」


「私も……森で採れた一番甘い果実を剥きました。アッシュさん、どうぞ……っ」


「アッシュ! リリィもあーんして!」


カレンが大皿をドンと置き、セフィラが長い耳を赤く染めながら果実を差し出し、リリィがアッシュの背中に飛びついてくる。


「あはは、みんなありがとう。でも、そんなに一気に食べられないよ」


アッシュは困ったように笑いながらも、全く嫌がる素振りを見せず、次々と差し出される料理を美味しそうに頬張っていく。


世界を救い、星の核を宿す絶対的な存在となっても、彼は何一つ変わらなかった。


誰よりも優しく、そして『無自覚なタラシっぷり』も健在である。


「アッシュ殿……口元にソースがついていますよ。じっとしていてください」


エリスがそっと身を乗り出し、アッシュの口元を指先で優しく拭う。そのままその指を自分の口元へ運びそうになり、ハッとしてゆでダコのように赤くなった。


「エ、エリス!? 今、どさくさに紛れて間接的な接触を……っ! 不純よ!」


「ち、違いますシルヴィ! これは騎士としての介護で……っ!」


賑やかな口論が始まるテラス席。


アッシュはその騒ぎを心地よさそうに眺めながら、そっと自分の胸に右手を当てた。


(アリアさん。もう、寂しくないよね)


胸の奥で、六つの欠片が一つになった『星の核』が、ポカポカと温かく脈打つ。


彼の心の中にいる白銀の髪の女性は、もう泣いてはいない。アッシュが見る美しい世界を、共に穏やかに見守ってくれているのがわかった。


終わらない観光旅行


「ねえ、みんな」


アッシュが声をかけると、エリスたちの口論がピタリと止まり、一斉に彼の方を向いた。


「このスープを食べ終わったら、またお出かけしようか。まだ見てない景色が、この世界にはたくさんあるから」


その言葉に、少女たちの顔にパッと花が咲いたような笑顔が広がる。


「ええ! もちろんです、我が主。地の果てまでお供します!」


エリスが胸を張って頷く。


「仕方ないわね。優秀な魔導師である私が、ずっとナビゲートしてあげるわ」


シルヴィが髪を揺らして得意げに笑う。


「ガハハ! 次は西の砂漠か、南の群島か! 強い魔物がいる場所がいいな!」


カレンが大剣を背負い直す。


「私の妖精眼で、世界中の美しい景色をアッシュさんにお見せしますね」


セフィラが翠緑の瞳を細めて優しく微笑む。


「がおー! アッシュと一緒に、いっぱい遊ぶー!」


リリィが元気よく空へ向かって両手を上げる。

アッシュは立ち上がり、澄み切った青空を見上げた。


彼から放たれる大自然のマナが、優しいそよ風となって仲間たちの髪を揺らす。


「うん。行こう、みんな」


悲壮な覚悟も、世界を救う使命も、もう必要ない。


これからはただ、純粋にこの美しい世界を歩くための、自由な旅だ。


大自然の愛し子と、彼を愛する乙女たちの『終わらない観光旅行』は、温かな日差しの中、新たな一歩を踏み出した。


【これからの旅のしおり】

• 南の群島巡り: 透き通る珊瑚礁の海で、みんなで海水浴(また妖精の悪戯があるかもしれない)。

• 星降る渓谷の探索: セフィラの妖精眼だけが見つけられる、幻の星空を観賞するキャンプ。

• 機鋼帝国の慰安旅行: すっかり大人しくなったガルス将軍の案内で、機械と植物が融合した新都市のパレードを見学。

• 美味しいもの探し: エリスの料理のレパートリーを増やすため、世界中の市場を食べ歩き。

お読みいただきありがとうございます。

本話にて一旦更新を区切りたいと思います。

これまでお読みいただきありがとうございました。他の作品も良かったらぜひご一読お願いいたします。

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